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出来る事を


アリシアさんと一緒にスズの元に急いでいるのだが、俺がまともに歩けない為遅々として進まない。


「アリシア王女!」


もどかしく思っていると聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

この声はカイン?


「はぁ、はぁ! こ、これをその人にっ」

正面に回って差し出して来たのは水色の液体が入った二つの瓶だった。


「これは中級回復薬(ポーション)⁉︎」

「俺に出来る事はこれぐらいしかありませんから」

「とんでも無いです! ありがとうございます! 悠生様こちらを」

瓶を一つ受けって一気に飲み干す。


「うぇ〜まぢぃ〜」

普通の回復薬よりにげぇ!


……でも痛みが引いていくのを感じる。

さっきまでボロボロだったのに……異世界アイテムってすげぇよなぁ。

これでスズの所に行ける。


「ありがとう助かったよ」

「別に……力が無くて嘆いてる暇があるなら出来る事を全力でやろうと思っただけだ」

「……そっか、んじゃ一つお願い事を頼んでも?」

「……出来る事なら…」

「なら問題無いな。

アリシアさんこれならもう大丈夫です、2人で街の方をお願いします」

「…そうですね、悠生様が動けるのであれば今の私ではお役に立てる事はありません。

悠生様、中級回復薬と言っても魔力は回復しません……どうかご武運を」

「はい。

んじゃアリシアさんを頼んだ」


それだけを言い俺はスズの元へ走り出した。


その後姿を見送り動かない王女をみてカインが声をかける。

「アリシア王女?」

「あ、すみません! 街に戻りましょう!」

「あ、はい………あの…一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「アイツ…、いや、あの人は何者でしょうか?」


先程からの王女態度…一冒険者にするものとは思えない。

王女が敬称で様付けを使っているのに対してさん付けなどという言い方…。


「そう…ですね…、私が諦めていた時に諦めないでと言ってくれた人…でしょうか」

「え⁉︎」

一国の王女にそんな事を言う人が⁉︎

それよりも王女がそんな事態に⁉︎

何を聞けば分からない状態に言葉が詰まっているとアリシア王女が声を出して笑った。


「ふふ、夢の中で、ですけどね」

「え? え⁉︎ 夢、ですか?」

「ええ夢ですよ、急いで戻りましょう」

「あ、はい…」


まさか王女が冗談を言うと思わなかったので面食らってしまった。

もう一度聞いてもまともに返ってこない気がしたのでそれ以上追求する事はなく王女を追いかけた。



▽▽▽▽▽



スズとキングの姿が見える。

2人は距離をあけたまま対峙していた。


良かった無事だった!

スズが立っている事に安堵を覚える。


パンッ!

突如乾いた音が響いた。

そしてスズの体ががくの字に折れた。


え?


パパパンッ!

今度は連続で乾いた音がしスズが吹き飛ばされた。


っ⁉︎

目の前の出来事が理解出来なかった。


「スズっ!!」

声を上げながらスズの元へ急ぐ!

アイツが何をしたのかなんて今はどうでもいい!


辿り着きもう一度スズの名前を呼ぶ!

「スズっ⁉︎」

「ごほっ、こほっ」

スズが咳き込む度に口から血が溢れてくる。


「…に…ぃ……ん、…こほっ……や……ぱり…ごほっ!」

「無理に喋るな!」

「こほっ……に……げ……ごほっ!」

「スズもういいから喋るな!」

何かを言ってくるスズを懸命に説得する。


医療知識なんて全く無いが今のスズの状態は絶対にマズイ!

見た目はボロボロで口からの吐血は止まる様子が無い。

それにさっきからスズの目がこっちを見ていない!

一刻も早く治療が必要なのは明らかだ!


そうだ! 回復薬!

俺はカインから渡されたもう1本を取り出す。


「スズ! 回復薬だ!」

俺は慎重に回復薬をスズの口元に少量注いだ。


「ごほっ! ごほっ! …こほっ」

しかし口の中の血と一緒に吐き出してしまう。


「っ⁉︎ スズ少しでいいから飲んでくれ!」

もう一度少量を注ぐがまたさっきの繰り返し。

そしてスズの目が静かに閉じて行く。


「スズっ⁉︎ 嘘だろっ⁉︎」

今度は咳き込む事もなく口から血と一緒に溢れ落ちるだけになってしまった。


「っ⁉︎ たの…む…からっ!」

そこからは何度注いでもそれは変わらず、回復薬の残りも僅かになる。


分かんねぇよっ! どうすりゃいいんだよっ!

このままじゃスズが!

誰か教えてくれよっ! 俺に出来る事なら何でもするからっ!


《マスター、スズの口の中の血を全て吸い取って下さい》

ミクっ⁉︎


《手遅れになる前に早くして下さい、何でもするのでしょう?》

わ、分かった!


「スズ、すまん!」

一言謝ってミクに言われた通りスズの口から血を吸い取って吐き出した。


次はっ⁉︎

《回復薬を一滴でいいです、スズの口に流し込んで下さい。

少しでも多いと多分飲み込めません…ただそれで飲み込めるかは分かりませんし、そんな量でどうにかなるかも分かりません》


そ、そんなっ⁉︎

《自力で満足に飲む事が出来ないとなると治療専門の人に任せるしかありません。

しかし目の前をどうにかしないとそれも難しいですが》


「そろそろいいか?」


ブチッ。

俺の中で何かがキレる音が聞こえた気がした。


ふざけた事言いやがって、どの口下げて言ってんだ。

スズをこんな目に合わせた元凶がっ!

《っ⁉︎ マスt…………》

殺すっ!


その言葉を思った瞬間、ミクの声が途切れ代わりに体の中から黒い何かが広がって行くのを感じた。


「む?」


絶対に許さねぇ‼︎

「ガアッ!」

「…獣か」

ゴォッ!

襲いかかった俺をキングが難なく殴り飛ばす。


「グウゥッ!」

「…ふむ? その黒いモノ……魔力を纏っているのか。

前回とは違うな? それに前よりも……」

パパパンッ! ゴッ!

「ガッ⁉︎」


乾いた音と衝撃が全身を襲って一瞬硬直した後、さらに強い衝撃が頭部を襲った。


「そんな獣のような動きでは今の我には勝てんぞ?」

不可解な衝撃の後に蹴り飛ばされた。


「グゥ!」

「言葉も通じぬか………小娘に相手をさせたのは失敗したかもしれんな……興醒めだな」


ウルサイ! ダマレ!

今スグ消テエ無クナレッ!


「ガアッ!」

「ふむ……多少出力は上がったか?

しかしそれでは我には届かんぞ」


俺は策も術もなくキングに襲いかかった。


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