ボロボロになってました
…………いっ!てぇ〜………軽く意識飛んでたか?
《数分程度ではありますが》
俺ちゃんと防いだよな⁉︎ それで意識飛ぶってどんだけだよ⁉︎ 前と全然違うじゃねえか⁉︎
しかもなんか周りがなんかざわざわ騒がしい?
「お、おい! アンタ大丈夫かっ⁉︎」
誰だ? 見ても心当たりは無い人物だが?
それよりさっきまで周りにはアリシアさんとスズしかいなかったはず?
「いってぇっ⁉︎」
起きあがろうとしたが身体が動かなかった。
ていうかメチャクチャ全身が痛ぇ⁉︎
「ちょっ⁉︎ アンタ動くのはやめとけ! 今すぐ助けを呼んできてやるから!」
それだけ言って見知らぬ男はどこかに去って行った。
その直後女神の声が聞こえて来た。
「悠生様大丈夫ですかっ⁉︎」
「アリシア…さん?」
ぐったりしたビャッコを抱いたアリシアさんが視界に入った。
「ぐっ⁉︎」
動こうとすると痛みがさらに増した。
「無理に動かないで下さいっ! ここまで吹き飛ばされたんですよっ!」
視線を周りに移すとここは街中だった。
そして正面、おそらく飛ばされて来た方向の建物が倒壊している。
一発でここまで吹っ飛ばされたのか⁉︎
いやそれよりあの壊れた建物って俺が壊したのか⁉︎
後で請求とかされたらやべぇんだけどっ⁉︎
《それより体の心配して下さい》
体はメッチャ痛いっス。
吹き飛ばされたって聞いて納得、通りで身体が動かないわけだ。
生きてるのが不思議なレベルだな。
アイツマジでバケモンだな。
…………あれ? アリシアさんはここにいるけど…。
「アリシアさん……スズは?」
「………スズさんはさっきの者と対峙しています」
「っ⁉︎」
スズのやつ立ってるのもやっとのくせになんて無茶を!
アイツはダメだ!
4乗で受けてコレなんだ!
理由は不明だが間違いなくあの時より強い!
「ぐっ⁉︎」
「悠生様っ⁉︎ 動いては行けません!」
アリシアさんが止めてくるが残念ながらそれは聞き入れられない。
だけどちょっと意地だけじゃ身体が動きそうに無い。
ミク、『リモート』。
《本当にしょうがないですね…、私としては撤退を強く推奨しますが》
それは却下で。
《でしょうね……了解です》
「つぅっ⁉︎」
痛みは伴うがおかげで動く事は出来た。
ホント助かるスキルだ。
《無茶をする為のスキルじゃないですからね?》
でもスキルは使ってこそだよ。
「ゆ、悠生様、動いて大丈夫…なのですか⁉︎」
大丈夫かどうかで言えば大丈夫じゃないような気がする。
なんせ自力では動けなかったからな。
とは言っても痩せ我慢は男の子の見栄。
アリシアさんに心配かけちゃいかん。
「ええ……なんとか、動けるみたいです」
「………………ウソ…ですね?」
「っ⁉︎ な、なんの事ですか⁉︎
この通り立ち上がってますよ⁉︎」
なんでウソだと思ったんだ⁉︎
感か⁉︎ それだと鋭すぎるだろ⁉︎
漫画やアニメで冷や汗が流れるシーンがあるが実際にあんなに急に噴き出る事なんてありえない。
しかし今まさに汗が滴り落ちている感じがする。
「悠生様……その怪我で大丈夫と言っても説得力はありません!」
そう言いながらビャッコを降ろしポケットから白いハンカチを取り出し俺の顔をそっと拭いた。
「お気づきになっていないようですがこの出血量……」
少し触れた程度しか触っていないはずのハンカチは真っ赤に染まっていた。
そして俺の足元にも点々と赤い血が今も滴っていた。
え⁉︎ もしかしてさっきの冷や汗じゃなくて血⁉︎
この量……おっしゃる通り全く説得力ありませんね。
「それに先程まで動けないようでしたのに随分とすんなりお立ちになりましたね?……確か悠生様には使うと筋肉痛になるようなスキルがありましたね。
それで無理矢理動いてはいませんか?」
「っ⁉︎」
アリシアさんちょっと鋭すぎやしません?
《マスターの隠し方が下手すぎるだけでしょう》
……否定もできんけど。
「………私が止めても悠生様はスズさんの下へ行くんですよね……」
「……すみません」
「いえ、私もスズさんを助けたいです!
ですが私ではあの者に到底かないません。
悠生様……貴方に頼るしか無い私を許して下さい。
ですがスズさんの元まで私が肩を貸します。
悠生様は少しでも温存して下さい」
えっ⁉︎ アリシアさんアイツのとこまで行くつもりなの⁉︎
危ないどころじゃないんですけど⁉︎
そんな動揺お構いなしにアリシアさんが俺の腕を取って首に回す。
「ちょっ! あ、アリシアさん! 服が汚れますって!」
「悠生様! そんな事はいいですから早く温存して下さい!」
えぇ〜⁉︎ 物凄い断りづらい感じなんですけど⁉︎
アリシアさんが行く事は決定事項ですか⁉︎
《問答してる場合では無いと思いますが》
そうなんだけど……、あ〜もう!
「アリシアさん近くまででいいですからね?」
「善処します」
いやそこ確約してほしいんですけど?
「はぁ……、じゃあすみませんがお願いします」
「はい! ビャッコここで大人しくしててね」
「ヴァ…」
なんか旦那の苦労が少し分かったような気がする……、ミク解除で。
《了解です》
解除すると同時に体が支えられなくなりアリシアさんに体重がのしかかる。
「っ!」
「あ、アリシアさん! だ、大丈夫ですか⁉︎
やっぱり辞めといた方が……」
「いえ! 大丈夫です! 行けます!」
フラフラしてるし大丈夫じゃなさそうなんですが?
それに支えてもらっておいてなんですが、ふらつく度に身体が痛いんです!
しかし必死に頑張ってるアリシアさんの手前とてもそんな事は口に出せない!
しばらくは痩せ我慢が必要なようだ。
「……だ!」
「?」
お世辞にも早いとは言えない速度でスズの所へ移動していた所に誰かが声を出して走って来るのが聞こえた。
「あ! おい! アンタその怪我でどこに行くんだ!」
微妙に聞き覚えのある声はついさっきこの場にいた見知らぬ男だった。
そう言えば助けを呼んでくるとか言ってたな。
「そこのキミもこんな重症の人を動かしちゃいけないよ!」
俺は全身が痛くて振り向けない。
アリシアさんは俺を支えるので精一杯で振り向く余裕が無い。
「さあ、こっちの人は俺達が見るからキミは家族のと……こ? ゔぉっ⁉︎」
男が途中でバグった。
回り込んで正面から俺達を見て…正確にはアリシアさんを見て、だろうけど。
「え? あ、す、すみません、ですが…」
「あ、あ、あ、アリシア王女っ⁉︎
大変失礼しましたっ!!」
バグった男は即座に地に頭を擦り付けた。
「えっ⁉︎ あの⁉︎」
いきなり地に頭を擦り付けた男に困惑するアリシアさん。
「怪我人ってアンタ、だったのか」
「?」
アリシアさんと男のやりとりを他所にそんな声が聞こえた。
こっちもどっかで聞いた事あるような声な気も…?
「失礼します! アリシア王女、そちらの男はお知り合いでしょうか?」
「貴方は…」
「はっ! 申し遅れました!
最近入隊したカインと申します!」
カインと名乗った青年が正面に回ってくれたので顔が見えた。
あれ? この人って…。
「そうなのですね…申し訳ありません。
私達が不甲斐ないばかりにこんな事態になってしまって」
「何をおっしゃるんですか!
前線指揮だけでなく自らも先頭で立ち向かった王女に文句を言う奴なんていませんよ!
むしろ俺達の方こそ力不足で申し訳ありませんっ!」
あ、この人避難するように言いに来た人だ。
「力不足なのは私も同じです。
だから今はお互い出来る事をしましょう」
「アリシア王女、オークキングは倒されたと聞きましたが?」
「確かにキングは倒されました……しかしまだ脅威は去っていません。
私達は今からその元凶の元へ向かいます」
「なら俺も!」
「いえ、貴方は街の方々の避難の手伝いをお願いします」
「っ!」
カインと名乗った青年が唇を噛み締めるのが分かった。
「さあ、悠生様行きましょう」
「ええ…」
通り過ぎようとした所でカインが叫んだ。
「アリシア王女! 俺は国の為なら命は惜しくありません!
ですからどうか俺の同行許可を!」
なおも食い下がるカインにアリシアさんが少し黙考する。
「……そのお気持ちは非常に嬉しいです。
ですが私は誰1人簡単に命を捨ててほしくはありません。
無謀な特攻ではなく貴方も含めて1人でも多くの方を助ける選択をして下さい。
私が守りたいのは国ではありません、ここにいる人達です。
だからお願いします、私の大事な人達を守って下さい。
もちろん私達も捨て身で挑むわけではありません。
必ず帰って来るつもりです」
「っ⁉︎ てすがっ! そいつを連れて行ってもどうにかなるとは思えません! それこそ命を捨てに行くようなものじゃないですか!」
まぁ、この状態じゃあそう思われてもしょうがないよなぁ。
「心配なのは解らんでもないけどなんとかするさ」
「…アンタ、オークキングがいるって知った時真っ先に走って行ったよな。
死ぬのが怖くないのかよ? 今も1人で立てないような状態で」
「何言ってんだよ? 死ぬのは嫌に決まってんだろ?」
「は?」
俺のあっさりした答えにカイン青年が硬直する。
「いやいや! そんな状態で何が出来るって言うんだよ⁉︎」
「まぁ不便だけど、魔力があればなんとかするから大丈夫だ」
「なんとかするって…アンタ正気かよ⁉︎」
「失礼だな、至って正気だし正常だよ。
まぁ結果がどうなるかは俺も知らんけどな」
「知らないって…そんな適当な…」
「何言ってんだよ、どうにか出来るならとっくにやってるだろ」
「………」
俺は至極当たり前の事を言った。
「それに俺は俺に出来る事を全力でやりに行くだけだ。
その結果なんて今から分かるかよ。
今回は俺の仲間の命がかかってるからな、出来る事をやらずにいたらずっと後悔する。
同じ後悔するならやって後悔する方がずっといい」
「仲間……あの時の子か?」
「そうだよ、まぁ自己満だけどな。
アリシアさんに言われたようにアンタも出来る事を全力でやればいい」
「……」
カイン青年は思い詰めたように顔を伏せた。
「アリシアさん、行きましょう」
「あ、はい」
歩き始めた俺達を今度は止めなかった。
「……出来る事を……やるだけ……」
歩き出した俺の背中からそんな呟きが微かに聞こえた。




