再び
俺達は未だ警戒を解かずに門周辺を固めている人達に迎え入れられた。
状況を説明するとすぐに歓声が上がった。
知らずに倒してしまった俺からすればそのテンションについていけないが、天災級が討たれたなんて知ればそうなるか。
クラウドさんや旦那は余韻もそこそこに早々に事後処理に追われて各所に行ってしまった。
俺も早くスズの手当をしに行きたいとこなんだが……。
クラウドさんや旦那がどっかに行ってしまったせいで周りが解放してくれない。
一応横にはアリシアさんもいるのだがそこは一国の王女、流石にそこまで気安くは接する事が出来ないらしい。
「おい! 向こうにまだ人がいるぞ!」
歓声が上がる中、見張り台からそんな声が聞こえた。
アリシアさん達が前線を支えて他は撤退もしくは門周辺を固めているから今外にいるって事は最初の時点での生き残りぐらいしか⁉︎
と思い周囲を見回すと……1人いた!
紫の髪に黒色の肌。
上半身は引き締まった筋肉が遠目でもわかる。
一見して武道家みたいな印象を受けた。
ちょっと肌の色が黒過ぎる気がするけどそういう人もいるのかな?
その男は急ぐでもなくゆっくりとこちらに向かって歩を進めて来る。
フラフラなわけではなく目立った外傷も見当たらない事からバッドステータスを受けているわけでは無さそうだ。
生き残りという感じには思えなかった。
そして声が聞こえる距離まで来ると男は歩みを止めた。
「我を退けた者がこの程度で終わるわけが無いのは当然として、まさかそこの小娘共に遅れをとるとはな。
人間だと思って少々見誤った、と言ったところか…中々面白い……ただ1人はもう動けんようだが」
なんだ? あいつ何言ってんだ?
「そこの小娘」
そう言いながら一点を指差した。
「囚われていただけの存在かと思っていたがあやつを一撃で屠るとは面白い、その力我に見せてみよ」
アイツ! ちょっとイケメンな面してるからってアリシアさんを指差すなんて何様だよ⁉︎
「アリシアさん、ちょっとアイツ失礼な感じですけど知ってる人ですか?」
「…な、ぜ……それを…っ⁉︎」
あれ? アリシアさんの反応がおかしい?
そして背負ってるスズの手に力が入り出したんですけど?
ここで今まで意識してなかった感触が俺の思考を急速に鈍らせにきた!
でも言葉には出来ない!
世の紳士諸君にはご理解頂けるかと思う!
だからせめて心の中で言おう!
スズさん! 柔らかいモノが背中に押し当てられてます‼︎
有難う御座います! ご馳走様です!
《マスター、バカな事言ってる場合ではありませんよ》
健全な男子の正常な反応でしょうよ⁉︎
《いやホントそんな場合じゃないんで、会話から察するに目の前のアレは人型をしてますが人じゃありません》
え⁉︎ そうなの⁉︎
《アリシアが囚われていた事実は公表されておらず知っているのは当事者だけです。
そして人で無い者が2人……。
主謀者とマスターが戦ったオークキング…。
先程の内容……今回は後者の可能性大です》
っ⁉︎
ちょっとミク⁉︎
アイツがあの時のオークキング⁉︎
見た目どころかサイズも全然違うじゃん⁉︎
《その言い分は分かりますがそれ以外に考えられませんよ》
……マジ?
《本気です》
ちょっと後ろのスズさんにもご意見をお聞きしましょう。
「スズ、アレって…」
「マズイ……かも、姫さん全力で撃った方がいい。
にぃさんありがと降りるよ」
そう言いながら俺の背中からスズが離れた。
ちょっとふらついたがすぐに自分の足で立った。
「………(コクン)」
アリシアさんも尋常じゃない様子のスズを見て静かに頷いた。
当事者しか知らないはずの事を知っている時点で察しがついたのだろう。
「さあ小娘、全力で撃ってみろ」
……しかしこれは考え様によってはチャンスなのでは?
せっかく向こうから提案してくれてるんだ。
この機会を逃す手は無い。
「『喚装』! ビャッコ!」
「ヴァウッ!」
アリシアさんの言葉にビャッコが吠えてアリシアさんに飛びかかり接触する寸前に眩い光が発生した。
光が収まりバチバチという音が断続的に聞こえて来た。
アリシアさんの右手が他よりもさらに激しくバチバチと音を響かせる。
「かかって来い我は逃げも隠れもせん」
「………雷爪槍っ!」
カッ!
その言葉を聞いてアリシアさんが接近し光を放った。
至近距離から放たれた光は間違いなくアイツに命中した。
カッ!
「くっ…」
「ヴァウゥ……」
そして光が収まる前にアリシアさんとビャッコが分離した。
「アリシアさん⁉︎」
「だ、大丈夫です、魔力を使い切っただけなので」
「人間にしては中々、と言ったところか」
「「「「っ⁉︎」」」」
光が収まり五体満足で立っている姿が現れた。
「う、そ、無傷⁉︎」
「そう悲観するものでは無いぞ、少々焦げたからな」
そう言いながら胸の辺りを払う。
確かに少し焦げているように見える……けど!
ほぼ無傷と一緒じゃねぇか!
「とは言え我の相手には物足りん、か」
言いながらキングがアリシアさんに手をかけようとした。
「ヴァウッ!」
バチィッ!
「ガァッ⁉︎」
「ビャッコっ⁉︎」
ビャッコが即座に巨大化して襲いかかったが、一振りで吹き飛ばされてしまった。
「従順だな、だが力が無ければどうしようもないぞ」
再度アリシアさんに手をかけようとした。
させるかっ!
余裕かましてるつもりか知らないが今がチャンスっ!
無防備な胴に4乗の瞬閃を叩き込む!
避ける素振りも無ければ防ぐ仕草も無い!
もらった!
バキィッ!
「なっ⁉︎」
剣が折れた⁉︎ 何かされたのか⁉︎
まともに入ったようにしか見えなかったのに⁉︎
「隠す事でも無いから言っておくが我は何もしておらんぞ。
今の我にそこらのナマクラな武器では役に立たんからな」
やっべっ⁉︎
ゴッ!
直後の衝撃で俺の意識は途切れた。
▽▽▽▽▽
ガァンッ! ボガァ!
少し離れた門の壁が破壊され、その後にも破壊音が届いた。
「にぃさんっ⁉︎」
「悠生様っ⁉︎」
「少し加減を間違えたか?」
マズイマズイ!とんでもなくマズイ!
今のあの一撃でにぃさんが吹っ飛ばされた事もマズイけど、何よりアイツが全力じゃないのがもっとマズイ!
今の動き…手で軽く払った様にしか見えなかった。
それでアレ…。
段違いなんてモノじゃない!
強さの桁が違う!
万全でも全く勝てる気がしない。
その上魔力を使い切った姫さんじゃ足留めにもならない。
「姫さん、にぃさんをお願い」
「スズさん⁉︎」
「早く!」
「っ!」
姫さんが何か言いたそうにしてたけど素直に動いてくれて良かった。
まぁワタシもコイツの前じゃ姫さんと大差無いけど。
姫さんはにぃさんが助けようとして頑張ってた人だからワタシが傷物にするわけにはいかないからねぇ。
それにコイツに勝てる可能性があるとしたらにぃさんしか…………無理か……。
少しは可能性があるかも、と思いはしたがすぐに考え直した。
今のコイツはあの時とは比べ物にならないぐらい強い。
希望的観測ではこの窮地を乗り切る事は不可能だ。
ちょっと守ると思った矢先にコレかぁ。
………でも出来る事があるだけまだマシ………なのかなぁ。
どうやって時間を稼ごうか…。
実力行使なんて夢のまた夢、魔法なんて姫さん以上のなんて無理難題。
となると1番の時間稼ぎはコレを置いて他に方法は無いよねぇ。
今の状態がそれを示唆してるわけだし1番可能性は高い……と思う。
でも………ダメだったらごめんね、にぃさん。
姫さんは逃したからそれで許してね。




