燃焼したみたいです
スズのやつボロボロじゃないか。
俺の方をさっさと片付けてスズとアリシアさんの元に辿り着いて思った感想がそれだった。
すぐに加勢しようと思ったがスズ本人に黙殺された。
…意地になってるわけじゃないよな?
一応アリシアさんから段取りは聞いた。
スズが隙を作ってアリシアさんが決めるらしいが、ちょっと無茶し過ぎじゃないのか?
見てる方が痛々しい。
危なくなったら何と言われようと助けに入るつもりだけどな。
▽▽▽▽▽
流石にぃさんだねぇ。
もうあっちを片付けたみたいで何より。
同じキングと言ってもやっぱりアレとは違うみたいだねぇ。
どうやってコイツを姫さんの近くに連れて行こうかと思ったけど、にぃさんがこっち側にいるなら問題無い。
姫さんの身の安全は確保されたから気にせず誘導する事ができる。
後はワタシが最後にコイツの動きを止められればいい。
周りを気にせず目の前の相手だけに集中する。
六の太刀、『虚構』。
斬撃と重ねて放つという本来とは違う使い方。
剣気の斬撃を重ねたからといって威力は変わらない。
今は与えた傷口に向けて斬撃を合わせてるからダメージが通ってるだけ。
だから今やっている事は何の効果も無い、でもそれでいい。
躱して虚構での反撃を繰り返し少しずつ姫さんの方へ後退していく。
コイツの注意は完全に引きつけた。
今は執拗にワタシを追いかけ回している。
身を削った甲斐があったねぇ。
幾度か繰り返した後、そして姫さんとの距離が十分に詰まった……。
これで最後。
姫さんの方に一瞬振り向き視線が合った。
うん、大丈夫伝わった。
後のタイミングはにぃさんが教えてくれる。
キングの間近で動きを止めて構えをとる。
守の型、『玉響』。
散々躱し続けられたワタシが急に動きを止め、絶好の機会を得たキングの拳がワタシを貫く。
しかしそれは残像、すぐに消える。
貫いた感触が無く姿が消えた事にキングが訝しむ。
これで仕上げ。
六の太刀、『修羅の虚構』っ!
剣気修羅の斬撃を姫さんに抉られた箇所に放つ。
ワタシの姿を見失ってる状態からの虚構より明確な斬撃の気配。
散々傷口を攻められたキングが左肩を庇おうと反射で身を起こした。
当然そうなるよねぇ。
まぁそうなるようにしたんだけど…。
キングの足が伸びきって傷口が開いた。
本命はこっち!
ズバッ!
「なっ⁉︎ にぃっ⁉︎」
斬られた方の足からバランスを崩し膝をつく。
そして溜めの終わった姫さんがキングに接近する。
これで詰み。
「雷爪槍っ!」
カッ!
光の筋がキングの身体のど真ん中に吸い込まれる。
光が収まるとキングの胴体に風穴があいていた。
「ぐぅ⁉︎ ば、…カな⁉︎」
ドオォン!
音を立ててキングが倒れた。
2人がかりでこれかぁ……まだアレには及ばないなぁ。
でも……今日はもう無理ぃ〜。
パタ。
そう思いながら力尽きた。
▽▽▽▽▽
アリシアさんが放った一撃を見た感想。
容赦ねぇ〜。
元の世界で言う超電磁砲みたいなやつだよな?
まぁあっちでもお目にかかった事は無いから完全なイメージと聖書からの知識だけど。
《そんな言い方してもイメージ変わりませんよ?》
じゃあ聖典?
《字面変えればいいってモノじゃ無いでしょう》
そんなやりとりしてたらスズがうつ伏せに倒れた。
「スズさんっ!」
「スズっ!」
アリシアさんに一歩遅れてスズの元に向かう。
途中前を走るアリシアさんからビャッコが分離した。
「スズさん大丈夫ですかっ⁉︎」
アリシアさんの声にスズが閉じていた目を開けた。
「だ、大丈夫…なのか?」
「あ〜うん、でももう動くの無理ぃ〜」
見た目はボロボロだけど口調はいつもの通りなのでちょっと安心した。
「早く戻って手当を!」
「にぃさぁん、後よろしくぅ〜」
「分かったよ」
俺はスズを背に背負って歩き出し少し離れたところにいたクラウドさんと旦那の2人と合流した。
「アリシア王女お怪我はありませんか⁉︎」
「私は大丈夫です……その代わりにスズさんがだいぶ無茶をしてしまいました」
旦那が俺に背負われてるスズを見る。
「スズの嬢ちゃん恩に着る」
「特別報酬出るぅ?」
「もちろんだ、それは俺がなんとかしてやる。
キングを討ち取るなんてことやっちまったんだからな」
…………ん? 今なんて言った?
「あの……、キングを討ち取ったってどう言う事ですか?」
「「「え?」」」
アリシアさん、クラウドさん、旦那の3人が耳を疑うような声でハモった。
「そう言えばにぃさん最後まで聞かずに出ちゃったもんねぇ」
後ろからスズがそんな事を言ってるけど…どう言う事?
「無知ってのは怖え〜なぁ。
知らずに倒しちまったのかよ」
「あ、あの…悠生様、先程の2体がその…オークキングだったんですよ」
「えっ⁉︎」
今度は俺が耳を疑う番だった。
さっきのがキング⁉︎
え? だってオークキングってこの前のアイツでしょ⁉︎
見た目全然違うじゃん⁉︎
それにアイツと比べたら手応え無さ過ぎじゃね⁉︎
「にぃさんの言いたい事は分かるけど今回は今のがそうみたいだよ」
………じゃあ完全に勘違いしてアイツにキングどこだって問いただしてんじゃん!
そりゃ何も答えないはずだよ!
相手からしたら意味分かんないんだから!
《無駄な質問をしましたね》
本当だよ!
俺は後のスズにだけ聞こえるようにつぶやいた。
「なんかすまん。
知ってたら温存せずにそっちも片付けたんだけど、てっきりアイツがいるもんだと思ってたよ」
「ん〜? 断ったのはワタシだからにぃさんは気にしないでいいよぉ。
ワタシも見るまではアイツだと思ってたから1体は引き受けるつもりで来たしねぇ」
「………」
そうは言ってもボロボロのスズを見ると悪いことをしたと思ってしまう。
「まぁまぁ、にぃさんが動けない時はワタシが守ってあげるからどこまで出来るか知っとく必要はあるでしょ。
無理そうな時は逃げる事考えなきゃいけないしねぇ」
確かにそれは一理ある。
俺のスキルってそれがあるから考えて使わないといけないんだよなぁ〜……でも。
「そうは言うけど女の子に守られるのって男としてそれもどうかと思うわけですよ」
「ん〜、そんなもん?」
「少なくとも世の男達はそうだと俺は勝手に思ってる」
「ふ〜ん、まぁパーティ組んでるんだしその辺は気にしなくていいんじゃ無いかなぁ」
……あれ? スズってもしかしてこの先も俺とパーティ組んで行くって事か?
成り行きで一緒に行動してたけど、そう言えばスズって元々ギルドのお預け、もとい銀行機能が使いたくて冒険者になったんだよな。
それにはランクアップが必要で早くしたいから一緒に依頼をこなしてた……。
正直目的は既に達成してるし、スズの強さならパーティを組む必要も無い。
引き続き組んでくれるなら俺としては嬉しい限りだがそれを聞き返すのはなんだか野暮な気がしてそれは飲み込んだ。
その後はさっきのスズの戦いの話をしながら街に向かって行った。




