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第8話◆3つの方法

狐神のナコは改まり、和也に真面目な話をしようと懇願する。和也もまた、その姿を見て真剣に聞くのであった。

 部屋に向かい歩いている俺の服の袖を掴むナコ。


 そんなずっと上から目線だったナコの様子に違和感を感じ、俺は少し心配そうな目で問いかけてみるとする。


「どうした?急に真剣そうな顔になるなんて⋯⋯なんか大切なことでもあるのか?」


 ナコの過去を知り情を向けている、そんな俺にも思う縁があるため、俺もまた、真面目に話を聞こうとしていた。


「⋯⋯さきに話したことを覚えているかの?妾の妖力はそこを尽きているとな」

 ナコは少し困ったような口調で話していたため、俺も何かを察した。


「⋯⋯協力して欲しいんだな?」

 ナコの言いたいことがだいたいわかったから、俺は先に問う。

 ───それに対してナコはコクリッと頭を頷かせてきた。


「俺に出来ることなんてたかが知れてるだろ、人間の俺はお前らのような優れた力を持っている訳では無いんだ」

 ⋯⋯出来るだけのことはするが、俺は能力を持たないただの人間だ、下手に協力するとナコの話していた『ヤツ』という者に目をつけられるかもしれない。


「この世界は不便じゃのぅ、じゃが妾の妖力が回復すればお主に能力を与えるなど造作もないが?」


 確かにそれはちょっと気になるがこいつの妖力とやらは未知の区域なんだ。

 下手したら俺が力に飲まれるかもしれない。


「もし妾の妖力の回復に協力するならば⋯⋯そうじゃな、褒美のひとつはくれてやってもよいがの」


 褒美⋯⋯か、仮にも神様だもんな、願いを叶えることもできるのかもしれない。


 そうだな、こいつも辛い過去を背負っていた仲間だし、褒美は二の次で協力するか。

 だけど命の危険を感じたらすぐやめておきたい、俺はまだ生きていたいからな。


 俺は決意を固めて、ナコに自分が考えたことを伝えるとする。


「仕方ない、できるだけの事はするが条件はある、それが飲めるなら俺は進んで協力させてもらうよ」


 ナコに条件付きで提案をした、俺にとっても命の危険はある、条件付きなのは当然だろう。


「それはありがたいのぉ、して、その条件とやらはなんじゃ?妾とて鬼畜ではない、条件次第では飲まんこともないぞ?」


 ナコは俺の要求に答えて、条件の内容を説明するよう話す。

 俺はそれに頷き、条件の説明をし始めた。


「条件は3つほどある。まず1つ目は命の危険を感じたら即離脱させてもらう」


「うむ、それは心得ておこう」


「2つ目は褒美に関しては正直どうでもいい、その代わりその妖力とやらを使って人に悪戯をしないということを約束してくれ」


「お主はまだ妾の事をそこらの妖と一緒にしておるのか?妾は悪戯なぞせぬわ、神を見くびるでないぞ?」


 どうやらそこらの妖怪と同じにされたことでナコは少し眉尻を下げ機嫌を悪くしたようだ。

 まぁ悪戯をしないなら安心だ、もっといい条件を考えるべきだったな。


「3つ目の条件は⋯⋯」



「───俺を奴隷扱いしないことだ」



 ⋯⋯こいつの奴隷になると何をされるかわかったもんじゃない、下手に褒美をねだるより命の方が大切だ。


 そんなことを考え、俺は奴隷にしないことが条件ということをナコに話した。

 ナコは少しもの恥ずかしそうな顔でそっぽを向き、俺に返答する。


「⋯⋯あれは戯言じゃ、本当に奴隷にするわけがないじゃろう、しかと考えるのじゃな、この小童が」


「どうだかね、あの時のお前の顔は本当に俺を奴隷にするかのような目をしていたぞ?」


 俺はナコをからかうように笑いながら返事をした。それに対してナコは恥ずかしそうにしながらもどなりつけてこようとする。


「どんな目じゃ!お主よ、決めつけというものは感心せんぞ?!」

 頬をかなり赤らめていた、その様子を見ていた俺は笑いながら返事をしていた。


「すまないな、だけどとりあえずは条件を飲むというところでいいんだな?」


「⋯⋯うむ、妾とて鬼畜ではない、そのような条件ならば容易く受け入れようぞ」


 ナコは機嫌を戻したのか、俺に笑いかけて返事をしていた。彼女なりに協力者は必要なのだろうな。


「そうか、それならよかった────とりあえず話の続きは部屋で話すぞ、ついてこい」

 俺の部屋に戻ろうとする俺の姿を見てナコは走り、すぐに追いついてくる。




  ”謎の場所”


「────!」


「何?妖狐の封印が解けただと?」


「────。」


「そうか、封印が解けてそう長くないならまだ探せるはずだ、とにかく急いで見つけなければならないな」


「───?」


「いや、増援はいい、元々は俺が封印したからな、それにあいつの力はまだ回復しきっていないだろう?」


「────?────。」


「それなら俺だけで十分だ、引き続き妖狐の行方を探れ」


 _____________

  ”和也の部屋”


 ナコと俺はベッドに座り、妖力の回復方法を話している最中だ、まずそれを知らなければ協力することも出来ない。


「よし、じゃあまずお前が知っている妖力の回復方法を教えてくれ」


 手っ取り早く話を進めて、睡眠時間を確保しよう、現在は夜の11時半程であるため、眠くなるのも時間の問題だ。


「うむ、妾が知っている方法は全部で3つじゃ」


「1つはまず、さきも話したお供え物というものじゃのぅ、リビングでお主は妾にイナリズシとやらをくれたな、それのおかげか妖力が少し戻っているぞ?」


 お供え物って食べ物でもいいのか、それなら普通に家で暮らしていればいつかは回復するのでは⋯⋯

 そんな疑問を持つ俺はナコに問う。


「じゃあこの家で暮らせばある程度の回復は見込めるのか?」


「うむ、じゃが所詮1人のお供え物なのじゃから回復する妖力も対して多くないのじゃよ」


「その妖力とやらが全て回復するのにはどれぐらいの時間が必要なんだ?」


 ナコは俺をからかおうとしているのか、その質問に対して笑いながら冗談交じりの返答をした。


「そうじゃのう!ざっと200年もあれば完全復活できるじゃろう!」


「気が遠くなる話だな、別の方法というものはどうだ?」

 俺はその発言を冗談と見ず、鵜呑みにして話を聞いてしまう俺がいた。


「⋯⋯釣れないやつじゃ、200年というのは冗談じゃよ、ざっと2ヶ月ほどじゃろうな」


 あっ、あれ冗談だったのね、変に笑ってるからおかしいな〜とは思ったけど⋯⋯でも案外200年ぐらいかかりそうなんだよな⋯⋯


「して2つ目の話になるのじゃが、それは妾の住まう世界に行くこと」


「それはどれぐらいの時間が必要になる?」

 ナコの二つ目の方法に問いをかける。


「うむ、そちの世界に移転できればざっと3日もあれば回復するじゃろう」


「じゃが行く方法がないのじゃ、妖力を使えば移転することは出来るのじゃが、妖力を回復するために妖力を消費する⋯⋯そんなバカげた話はこれぐらいだけじゃのう⋯⋯」


 冗談を口にして少し笑っていたナコ、その感じは何か含みがある、そう感じた俺は何かを察する。


「⋯⋯わざわざ話したってことは方法がない訳では無いんだな」


「お主は察しがいいのぅ、誠じゃ、その方法と言うのは⋯⋯」

 ナコは少し言うのを躊躇ったが、まぁ大丈夫だろうという顔をして告げた。


「こちの世界に移転する魔法陣がある、それを使えば直ぐに妾の世界にいけるじゃろうて」


「この世界にもあるのか!?」

 俺は驚いたあまり、ベッドから立ち上がって声を上げてしまった。それを見たナコは少しビクッとしていた、申し訳ない。


「⋯⋯そう驚くでない、少し落ち着くのじゃ」

 ナコは驚いた俺を鎮めようと話を止めてくれた、彼女なりの気遣いなのだろう。


「す、すまない、少し取り乱してしまった」

 俺はナコに謝り、再びベットに座って話を聞く体勢を取る。


「案ずるな、もし妾もお主の立場だったら驚くはずじゃしの」

 ナコはフォローをするように発言していた、俺は気を取り直し、魔法陣に関して聞いた。


「すまねぇな⋯⋯ところでその魔法陣って言うやつの場所はわかっているのか?」

 ナコの提案に質問をしたが、ナコは困った顔で答えた。


「大体検討はついておる⋯⋯じゃが、あの場所は無数の妖に守られておってな、妾の力が回復すれば、彼奴らなぞなんてことはない」


「力がないから俺に頼ろうとしてる癖によく言うぜ」


 ニタッと笑い、ナコをからかってみたが⋯⋯ナコは少し落ち着いているのか、先程のように大きな声を上げたりはしなかった。


「うるさいのぅ、そこまで妾をからかうならば容赦はせぬぞ?」

 俺に対して指を向けて何かをしようとしているナコ。


 ⋯⋯そういえば少し妖力が回復したと言っていたな、こいつの自信的にもう俺の事を殺せるぐらいの力はあるのか⋯⋯くそ、油断した。


「くふふっ、その顔は何かを察したようじゃな、じゃがお主を殺したりはせぬ、妾に協力してくれる者は最大限利用するまでじゃ」


 ナコは笑い、俺のからかいを倍にして返すように煽ってきた。俺はそれに対して何も言い返せない悔しさが心のなかにあった。


「もういいよ⋯⋯、それでその場所に妖怪がいるってことはそこに行くのは1つの賭けということになるのか?」

 俺の質問に対して、少し悩んでいる顔でナコは返事をしていた。


「ご名答じゃ、じゃがお主にとっても命の危険がある、これはあくまで最終手段となるじゃろう」


 わざわざ俺の命を考えてくれるのか、まぁそれもそうだろう。もし、俺が死んだら頼る人がいなくなってコイツも実質的に死んでしまうようなものだしな。


「それはかなり悩ましい選択だな、じゃあ最後の方法というものはどうなんだ?」


 唾をゴクリと飲み込んだ。

 こいつが最後に持ってくる方法ということは、何かやばい事なのだろう。


「最後の方法は⋯⋯人間の精気を食らうことじゃ」

 その発言を聞いた瞬間、ナコから距離を取った。ナコはその様子を見て俺に告げる。


「そう身構えるでない、もしお主の精気を食らう気ならば、出会った時からやっておるわ」

 確かに⋯⋯俺は納得して心の中で安堵する、その様子を見てナコはそのまま話を続ける。


「精気を食らう⋯⋯つまり血や命を食らうことじゃな、単なる動物ではなく人でなければならぬ」


「妾はこの方法は好まぬ、そもそも争い事と言うのは愚か者がするものじゃ、血で争うなぞしとうない」


  「────してお主よ、いい加減警戒を解いてはくれぬかの、この距離では話しづらくてかなわん」


 俺はナコの声でハッと意識を取り戻す。


「いや〜すまんすまん、命の危険を感じたので、ついな」

 頭をかいて申し訳なさそうに謝るが、ナコはため息をついた。


「全く⋯⋯先が思いやられるわい」


「話は戻すが⋯⋯やはり時間をかけて妖力を回復するしかないのか?」


「現状はそれしかないのぅ、他に当てがあればいいのじゃが⋯⋯」

「何はともあれ、これからよろしく頼むぞ!お主!」

 ナコは俺に笑いかけて礼儀正しく挨拶をした。彼女らしくもないが。


 俺は少々だるいが、まぁいいかという気持ちで冗談交じりな返事をした。


「食費が2倍になっちまうなぁ⋯⋯」

 その様子を見て、ナコは俺をからかって楽しもうとしていた。


「くふふっ、か弱いおなごと2人きりで住むとは、お主もやるのぅ」


「⋯⋯お前はか弱くないだろ、なんなら気が強いまであるぞ?」

 ナコにも負けないためにもからかいをやり返す。


「なんじゃと!?お主!そこに名折れぃ!」

 ⋯⋯

 長い付き合いになりそうだな⋯⋯。


 __________



「────。」


「どうだ、行方はわかったか?」


「────!」


「⋯⋯それならばこちらも少し動くとしようか」

第8話お読みいただき誠にありがとうございます!

妖力の戻し方もかなり厄介なものとなってますね。

内容に関してはファンタジー編と現代編があり、長い月をかけて章を沢山書いていきたいと思ってます。

次回はナコと和也の微笑ましい会話が繰り広げられます。


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