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第32話◆武器の調達

ナコの苛立ちの矛先はスアビスに向き、和也はなんとかナコをなだめる。

そしてスアビスから街を案内すると言われ⋯⋯。

 ナコとスアビスのいがみ合いから、はや3時間。

 と言っても、ナコの一方的な苛立ちをぶつけていただけなんだがな。


 ──やがて俺はそれを鎮静させた後に、スアビスからこの都市を案内すると言われた。


 ⋯⋯俺はそれをありがたく受け入れた────だけどナコは苛立ちをまだ残していたのか、渋々と俺に着いてきたようだ。


 ────街並みの様子、夜とはうってかわって、子供が沢山走り回り⋯⋯夜空の神々しい光を反射していた水は、太陽の光を反射するようになり、より一層街並みを照らし別の良さを引き立ててくる。


「本当に広いですね、この街は。」


「敷地が広いのはもちろんのこと、私が住まうこの都市は"七大王国"のひとつなのです────正門から来たあなた達ならばわかると思いますが⋯⋯この都市は地形に恵まれ、攻め入るのが困難と言われています。」


 立派な城壁に囲まれる上に地形にも恵まれている⋯⋯その上、設備が整っているのも周りを見れば分かる。


 正門には警備が施された馬が数百頭⋯⋯そして数え切れない程の砲台の数。


 ────そして⋯⋯熟練の兵士。


 俺らが最初に見たヤツ────ナコや俺を訝り、正門で止めてきた兵士達⋯⋯。


 他の国の兵というものを見たことがないので詳しくはわからないのだが、相当の強者だと思われる。


 あれを含めて考えると、そりゃ攻め込む隙もない国と言われるのも当然だろう。


 ────しかし俺は少し気になる単語を聞いた。


 "七大王国"

 聞けばこの王国もそれのひとつらしい、七大と言うほどの都市となるとこれと同等⋯⋯またはそれ以上の国もあるのだろう。


「────それはそうと、戦い以前に貴方の鎧と武器を購入しなければ始まりませんね。」


 彼女は思い出したかのように言うが、周りの人達は俺の服に見向きもしなかった。

 ⋯⋯答えは予想にしか過ぎないが、至って簡単だ。


 七大王国となれば来国者も多い、そうなれば変人や俺みたいに怪しい服装をした人間も沢山来るのだろう。


 そう考えれば俺らの方に見向きもしないのは当然のことだろう。


「武器⋯⋯そうか、俺は魔導剣士という類だったな。」


 簡単に言えば剣を扱いながらも魔法を使用できる────所謂剣士と魔法使いを合わせたようなものだ。


「⋯⋯この妾が随伴になろうとは⋯⋯考えたこともなかったわい⋯⋯」


 ────俺と手を繋いでいたナコがその会話を聞き、落ち込みながら、何やら独り言をしていた。


 俺の命を見捨てておけばそんなことにはならなかったし、自業自得ではあるのだが⋯⋯。

 元の原因は俺なんだよな⋯⋯そのせいで罪悪感がすごい⋯⋯しかし。


「────そんなに憎い人間様に守られるのは嫌か?」


 皮肉にもコイツは好いてもいない人間⋯⋯俺に、これから長々と守られ旅をすることになる。


「阿呆⋯⋯人間は憎えど────元よりお主が憎いのならば身を削ってまで助けてはおらぬわ。」


 テンションが低いところを見ると、やはり人間の事が憎いことには変わりがないのだろう。


 ⋯⋯しかしコイツも人間に対しての見る目も少しは変わったのか、多少なりとも俺に気を許してくれている。


 ────その気持ちを考えれば⋯⋯あちらの世界でコイツと過ごしてきた時間は無駄ではなかったのかもしれない。


「⋯⋯本当にありがとな。」

「礼には及ばぬ、お主も妾を助けた身────お互い様じゃ」


 確かにお互いを助けたことになる⋯⋯。

 俺が出会った当初、ナコに協力をしなかった場合、妖力以前に飢えて倒れていることになっていたかもしれない。


 ⋯⋯まぁこれで貸し借りがなしになったと思えばいいのかもな。


「色々な事があったのですね────それはそうと、案内をするついでに鍛冶屋に寄りませんか?これから必要になる物が沢山売っておりますし⋯⋯」


 俺たちの会話を聞き、何かに笑いながらも彼女は俺たちに提案をしてくる。


 これから必要になるもの⋯⋯。

 宝玉を探す際に盗賊やらヤバい奴らに絡まれないとは限らない、その時のために何かは買っておきたい⋯⋯だが────


 ──俺は今、一文無しだ!


「⋯⋯いってしまうと、俺がこの世界に来てから数日も経ってない────だからこの世界のお金を持っていないんだ」


「心配ご無用です、存じえてますよ。────もとより私はそれをわかっていて提案をしたのですから。」


 不思議な事に、何もかも見透かされているようだった。

 お金を持っていないのにお店へ行かせる、それは遠回しに買ってやると言いたいのだろう。


「なぜだ?大して長くもない俺らに協力するなんて普通では考えられない。」


 そして彼女はこちらに顔を向け、表情を少し頬を緩めながら、俺に優しさ、そしてあまたの感情が感じとれるような顔で返事をしてくる。


 ────こう見ると⋯⋯本当に綺麗だな。


「もちろん!タダとは言いませんよ。いつかは返して貰います────ただ私は困っている人を見つけると、放っておくことはできない主義なんですよ。」


「────それに異世界の住人が⋯⋯そんな人が、そのまま野垂れ死ぬ所を黙って見ていることなんて不可能です。」


 俺を助けた理由は他ならぬ彼女なりの慈悲、それはわかった。


 こうナコだけではなく、色んな人に恩を作ってしまってる以上、今は素直にそれを受け入れるしかできない。


 ────素直に慈悲を受け入れて強くなり、恩を返す。


 それは今、俺にとって1番の出来ること。


「優しいんだな、本当に助けられてばかりで申し訳ない。」

「ふふっ、気にしなくても大丈夫ですよ⋯⋯私が勝手にやったことなのですから。」


「⋯⋯⋯」


 そんな会話をしていると、何やら隣から嫉妬の光を帯びた視線が俺たちに向けられている感じがするが⋯⋯気のせいだろうか?


 〜


 ────スアビスが助けてくれた理由。


 俺がそれを知れた頃にはもう既に目的地の武器屋へと着いているようで、立派な建物が目に入る。


「着きました。ここが私がよく行く武器屋"テール厶"です。」


 店の外には飾りと思われる剣や鎧が飾られており、一目で武器や鎧を置いている場所だとわかる。


 どうやらこの街屈指の武器屋のようで、奥を見ると鎧を着た強そうな剣士────そして魔法使い、冒険家と思われる人物もいる。


 そしてスアビスは中へと足を運び始め、一直線に店主の元へと赴く。


「お久しぶりです、"シデラス様"」


 店主は体つきが良く、歳は外見だけで判断するとなると50代と言ったところだろうか。


 所々に白髪もあり、奥の金床もかなり傷ついていた

 ────長年この店を営んできた⋯⋯そんなのも容易に想像ができる。


「おぉ、スアビスか!久しぶりだな!」


 スアビスの姿に気が付いた途端、硬かった表情を一気に崩していた。

 外見とは裏腹に、意外な表情をするものだとは⋯⋯。


 そしてスアビスが連れてきた人物────そう、俺とナコの姿を見て、スアビスに問いかける。


「この方達はお前の連れか?」

「──紹介します。この紋章を身につけた男性の方が和也、小さな子供の名はナコと言います。」


 スアビスが俺らのことを紹介してくれたことで、自己紹介をせずに済む。

 俺はそう安堵していたのだが⋯⋯


「こど────!」


 どうやら子供と言われたことに腹を立てらしい、予想通りにもスアビスに文句を垂れようとしていたが俺はそれを制止し、耳元につぶやく。


「バカ、下手にお前が神だとバレたらどうするんだよ」

「⋯⋯⋯」


 そう言うと彼女は黙り込み、怒りを何とか抑え込んでくれた。

 前までならば直ぐに怒っていたのに────状況判断が早いのだろう。


 この街の人を見る限り、人外は特に珍しいものでは無いみたいだ。

 ────狐の耳や尻尾は街の人に数千と見られたはずだが、別に反応はされていなかった。


「ハッハッハ!全く。おもしれぇ客を連れて来たもんだな!」


 俺の紋章──そしてナコの耳や尻尾を見て、シデラスという男は高笑いをしていた。

 容姿の印象は硬いおじさんと思っていたが⋯⋯それはあくまで外見だけのようだったようだ。


 ──そしてスアビスは再び口を開き、俺らの声に聞こえる声でシデラスの耳元で囁こうとしていた。

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