三狩目〜碧の女・幕引〜
いやはや、余りこのサイトの機能を理解していないようで。わたくし先程初めて閲覧数確認の存在を知りました・・・。
淡い期待と共に早速それを押してみれば、あらびっくり。
思いの他多くの方のお目に止まっているようで。
正直モチベーション上がってます。
書いて字の如し、お目に止まるだけで無くしっかりとこの作品を覚えておいて頂けるようにこれからも慢心する事無く尽力していく所存です。
こんな事いうキャラでも無いので妄言はこれまでとして、今回から投稿の方法を試験的に変えてみようかと思います。
一区切りついたらドーン!ってな感じにしようかと。
無論自分の書きやすさを考慮した上ですが・・・。
とりあえずこの方法で三狩目を書き終えてみようかと。しかる後このやり方を継続するか判断します。
え?そうですね、読者様には全く関係ありませんでしたね。
台風なんてなんのその、皆様が健やかでありますように。
ロゼリオなる男と、晴れて本名が明らかになったファスターとの間に並々ならぬ因縁があってから徒然に。金髪巨乳の女とその連れ、ファスターはいつの間にやらティルの方が彼の手をグイグイと引っ張りつつ街の宿屋へ寄り、時間は掛けずとも入念に準備をしたのち自らに活を入れたら早速彼の樹海を目指し歩みを進めていた。
どちらがどうという訳でも無しに。まだまだ夜が明けるまで時間を有するであろう星許。剥けたままの砂利に闊歩しつつ、二人はお互い口を適度に開き談笑している。
「前から思ってたんだけどさ。あっ、勿論ファスターの事じゃなくてそれの事ね」
彼女が指を差すは、お互いの恋愛感、まぁ実際彼女が一方的に好みのタイプをベラベラと喋り、それに対してファスターは相槌を打っていただけなのだが。
おっと失礼。脇にそれたようで。
出し抜けの台詞の渦中となっているのはファスターの背負う大剣の事である。
疑問符を明らかに示す彼にティルは言うのだ。
「得物が大剣って狩人は沢山見てきたけどさ、そういう人って皆筋肉隆々って言うの?なんかこう……」
気でも狂ったか?とは思わない状況判断に秀逸なファスター。
ティルは何か伝えようと、腕をこうでも無い、あぁでも無いと、所謂筋肉を魅せる事を生業としている人達のポーズを真似ている。
筋肉隆々。彼女からは既にその言葉が出ているのだが、他に筋肉的要素を伝えたいのだろうか。
ファスター自身、どうやら彼女が意味の無い動作を必死に行っているのは理解したようだった。その歩みを止め、目線を背中に担ぐものへ向ける。
「まぁね。見ての通り俺華奢だし」
「でしょでしょ?それでもその武器を好んで使う理由なんてあるの?」
いつの間にやら奇奇怪怪の行動を中止してそんな事を口にした。
ここに来るまでの二人の会話から、ファスターは研修中、半強制的に使用を強いられる片手剣を研修終了と同時に置いてきた。置いてきたについてだが、これは何処にとか場所的な意味ではない、揶揄である。
そしてその際、自由にいくつか種類のある武器の中から一通り触った後に大剣を選らんだ。彼が言うには大剣の柄を掴んだ時に運命を感じたそうだ。
その発言にティルは心底気の毒そうな表情で「気持ち悪い」と言っていたがファスターはなんのそのだったようだ。
そんな事があった二年前から今日まで彼はそれを貫き通していた。
「よいしょ……っと」の掛け声と同時にファスターは背中から大剣を振り抜いた。
文字通りである。その大剣は、これを使う狩人の基本的な戦闘姿勢である柄を両手でしっかり掴み、足を前後に広げ、且つ腰の重心を深く下ろして胸の前で刀身を構える姿勢から大きく逸脱した。
地面へ振り抜かれた。むしろ振り落とされたのだ。そして重心が一点に切っ先へ注がれて地面に突き刺さった刀身を、血管の浮き出始めた両腕で柄を握り締めゆっくりと引き抜いた。そうして、やっとこさ基本的戦闘姿勢に持っていく事に成功した。
実にファスターが剣を振り抜いてからここまで来るのに掛かった所要時間、締めて三分。飛竜との戦闘中だったら、その飛竜に人間愛が存在しない限り確実に天国へ召される事請け合いだろう。
「呆れた……。あんたそれ絶対ミスチョイスってやつよ。そもそも持つ事すらままならないみたいじゃないの」
苦笑気味なティルの目の前では、現在進行形でファスターが先程の姿勢を維持していた。それはもう必死で。腕もプルプルと、正直痙攣しているのでは無いかと心配である。
まぁ当然そうなる事は仕方ないだろう。ファスターは我慢の限界とあっさりそれを地に付け、刀身を逆向きにし両手を柄に置いて自らの体重を預け大剣へ寄りかかっている。
ファスターは非常に引き締まった体をしている。あまり良くない意味で。もうティルの言葉から思うに、筋肉隆々ならぬ筋肉済崩であろう。
「まぁさ」とファスター。なんと無しに夜空を見上げながら淡々と告げる。
「俺が扱う所を見て貰う機会。そん時に改めてその言葉が聞けたら少し考えるよ」
意味深な言葉を告げるや剣を引き抜き、定位置に戻す。最早言うまでも無いが、そこに至る
過程にしてもたっぷりと時間を有している。
そして端的に樹海目指し駆け出したのだ。
◆ ◆ ◆ ◆
――君が悪い。
どうだろうか。駆け出したとお伝えした直後にこのような伝達ミスをしてしまう私だ。
いやいや、勘違いして貰っては困る。決してその様な訳では無いのだ。
夜の樹海を単純明快に表せば《気味が悪い》のだろうが、早計である。
別に私がファスター等の状況を発したのではない。では何か。
少しばかりあらましを述べるとすればだ。そうだな、ティルに向けてファスターが放った言葉である。うん。彼等がどの様な事態に陥っているかは、次にファスターが呆調で口にするであろう言葉に耳を傾けてみれば判るのだ。
「哀れ迷子のティル、樹海にて墜つる」
表情筋を精一杯に卑屈へと運ぶファスター。
「馬鹿言わないで!」とティル。そーもーそーもー。と、指からチッチッと音が鳴るんじゃなかろうかという感じで、人差し指を振ってファスターを睨んでいる。
「結果論ね。ファスターが決めた事でしょ?私がとやかく言われる筋合いなんて何処にも無いんじゃない、――かしら?」
かしら。の言葉と共にファスターの後頭部が二度三度と叩かれた。
事実そうである。道中に幾度と分かれ道に遭遇した二人だが、何だかんだで狩人指南書に基本で忠実なティルは、風の方向や喧騒に包まれる微かな動物達の声を便りに目的地たる方向を定めようとしていた。
しかし真面目に不真面目、自称ギルド最高峰の楽観的な男はその都度適当な理由を付けては、あっちこっちと強引にティルを説き伏せていた。
「なーにがっ、こういう時の洞察力に掛けては俺の右に出る者は大長老とギルドナイトくらいだ。よ。ばっかじゃないの」
そんな決め台詞と共に、現行で自分の過ちを悔やみ始めた男の吐いた適当な理由を紹介すると。
『胸が高鳴ってる。多分こっちだ』
――告げた自分を思って胸に手を当てるべきだろう。
『これは受け売りだけどな。こういう時は右で間違い無いんだ。そう言ってたんだから』
――この時ティルに聞こえない程度の声で、母親が……。の足していた事等今となっては闇の中だ。
正直な所、もっともらしい事が理由なら頷けるんだが。これは酷いのでは無いだろうか。
そもそもファスターの母親は狩人では無く、今もその道で働いている家政婦だ。何がどうなったら樹海で迷った時に右へ行く。という教訓を得られるのか不思議な所。
なんだか思うに、賛同したティルもティルである。
これはどっちがどうとかでは無く、もうどうしようも無い各々のせいだろう。