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69.エドガーの剣

「ところで、どさくさに紛れて、

 エドガー様はこんなところで何をやっているのです?」


ルークが真顔に戻って、目を瞬かせる。


「あっ……いや……だからこれは、

 赤髪をだなあ……みんなで寄ってたかって愛でる会だろ?」


エドガーもそう言って目を瞬かせる。


「いえ、決してそういう趣旨のものではありません。

 愛国心に溢れた少女たちが国を守ろうという崇高な趣旨のもとに、

 自警団をですねぇ、結成するというですねぇ……」


一応の説明をエドガーに試みてはみたが、

ルークも段々面倒になってきた。


「愛国心? ああ、溢れているよ? 

 なんなら以後は私のことは『ミスター愛国心』と

 呼んでくれてもかまわないぞ?」


しれっと言ってのける。


「ふ~ん、初耳ですわ。優男のエドガー様が

 そのように愛国心に溢れていただなんて」


そういってエマが黒い笑みを浮かべる。


「でしたら入団テストを行いますわ。

 剣をお取りくださいな。

 わたくしに勝つことができたら、入団を許可しますわ」


エマがエドガーに剣を渡すが、エドガーはそれを受け取らない。


「嫌なこった! お前一応女だろ?

 俺はこう見えてもフェミニストなんだ。

 そんな物騒なもん振り回して、女を怪我させるのは

 俺のフェミニスト道に反する」


ふいと顔を横に背ける。


「おりょ?」


ルークが意外そうに目を瞬かせる。


「なんだよ?」


エドガーが不機嫌に口を尖らせた。


「だったらエドガー様とユリアスさんが共闘して、

 僕を倒すっていうのはどうです?

 男の僕なら心置きなく倒せるのでしょう?」


ルークが小首を傾げて見せた。


「けっ! 化け物剣士が。

 鬼神ルーク・レイランドの名は国中に、轟いてるんだよ。

 優男の私にどうこうできるものかっ!」


フンとエドガーが顔を背ける。


「やってもみないうちから、諦めてどうするんですか!」


ユウラが眉を吊り上げると、

エドガーが仄かに赤面する。


「あっ……赤髪がそういうなら……

 ちょっとぐらいなら…やってもいいかもな」


エドガーの眉がぴくぴくと痙攣している。


「もうまだるっこしいっ! 

 全員まとめてかかってきなよ!」


ルークがそう言って、目を輝かせる。


「そ……それでは、

 ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします」


エマがガチガチに緊張しながら、剣を抜いた。


それを合図に各々が剣を抜いて、一斉にルークに切りかかる。


◇◇◇


「え? 5人でかかってきて、もう終わりなの?」


ルークが目を瞬かせた。

ルークの強さは、圧倒的だ。


しかしふらふらになりながらも、

ユウラがその場に立ち上がった。


「まだまだ……」


そして剣を握りしめる。


「さすがはエルドレッドさん。そう来なくっちゃ」


ルークが容赦なく切り込む。


「ぐっ!」


ユウラはルークの剣を受けとめて、

悔し気に唇を噛みしめた。


スピード、パワー、剣技、全てにおいてルークが圧倒している。

ユウラは防一戦の消耗戦である。


「エルドレッドさんの課題は脇の甘さと、重心のかけ方だよね」


ルークが涼しい顔をして、容赦なくユウラに切り込んでくる。

不意にユウラがバランスを崩して膝をついた。


「きゃっ!」


ルークの剣を避け損なって、ユウラが小さく悲鳴を上げた瞬間に、

エドガーがユウラの前に躍り出て、ルークの剣を受けた。


「ほほう、これはこれは……」


エドガーの咄嗟の行動に、ルークが意外そうに目を見張った。


「ルークよ、貴様がドSでも、ミリタリーマニアでもそれは一行にかまわんが、

 女を怪我させることは、私のフェミニスト道に反する」


両者一歩も引かず、重なった剣がギチギチと音を立てる。


「なんでしょう、やっぱりここは接待役として僕が負けなくては

 ならない展開なんでしょうか?」


ルークが鳶色の瞳を瞬かせた。


「当たり前だろう。せいぜい、

空気を読んでいい負け方をしやがれってんだっ!」


そういって、エドガーが攻撃に転じる。


「いや~、僕こう見えて空気を読むのが結構苦手でして、

 っていうか、優男を気取っている割にはエドガー様、結構、様になっていますよ?」


エドガーの攻撃を軽く躱しながら、ルークが嬉しそうに微笑む。


「剣術は幼少期から姉ちゃんに、死ぬほどしごかれたからな」


そう言いながらも、エドガーがルークに剣を繰り出す。

受けとめているルークの剣が、甲高い悲鳴を上げている。


「ああ、オリビア様の教育の賜物でしたか。

 道理で剣筋が似ている。っていうか本当にいい筋をしていますよ?

 お遊びじゃなくて真剣に取り組んでみては?」


ルークの言葉にユウラが唇を噛みしめた。


(私は、ウォルフに剣の指導をしてもらったことがない。

 私はウォルフの剣を……知らない)


一方、エマはエドガーの剣筋に目を細める。


(これがオリビア様の剣に近いというの?)


エマは戯れを装ってエドガーに剣を振るう。


「おわっ! ちょっ! 

 お前、俺とお前は今はチームなんじゃなかったのか?」


エドガーが、焦り気味にエマの剣を受け止める。

刃が金属特有の甲高い耳障りな音を立てて、火花を散らす。


「ふんっ! 問答無用!

 油断大敵ですわ」


エマは不敵に笑って見せる。


しかしその一刀で、エマは理解した。


エドガーは決して弱くはない。

エドガー自身が卑下するほどのただの優男というわけではない。


ルークが言うように輝くような一刀を放ってくる。


そして彼自身、そのことに気づいていないのである。


(それに考えすぎかしら? 剣の構え方、

 そしてふとした瞬間の癖が、どうにもウォルフ様のものに重なる)


ウォルフの契約の妹(スール)となり、

エマは幾度か指導中にウォルフと剣を交わした。


それは圧倒的な強さで、剣技に自信のあった自分でも、

まったく歯が立たないレベルだった。


それでも剣筋くらいは、見極められる。


そして悔しいことに、エドガーはエマが怪我をしないように、

無意識に力をセーブしているのだ。


エマは手から、剣を離した。


トレーニングルームの石畳の上で、剣が甲高い音を立てた。


「あなたの剣の技量はよくわかりました。

 悔しいけど、わたくしの負けですわ。

 あなたの入団を許可するわ」


そう言って悔しそうに顔を背けたエマに、

その場にいる誰もが目を見張った。


「え……エマさん???」









 





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