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36.平和を創る者

「ほらっ! 帰るよ、ウォルフ」


そう言って、背後に立つルークが、

ウォルフの首根っこを引っ掴んだ。


「ぐぬっ!」


ウォルフの目が半眼になる。


それを見た子供たちが、わっと笑った。

つられてウォルフも笑う。


「っていうか、ホント君はよく泣くよね。

 泣いて、笑って、怒って、まったく忙しいことだ」


ルークは少し呆れたように笑った。


移動用の連絡船に乗り込むと、


「疲れてるとこ、なんか、

 迎えに来させちまって悪かったな」


ウォルフがふいっと横を向いて、

ぶっきらぼうに言い放った。


「君こそ、あれだけの戦いの後で、

 よくこちらに足を延ばしたね」


ルークがウォルフを窺う。


「なんかちゃんと

 自分の目で見ておきたいと思ったんだ」


ウォルフが頭の上で、手を組んだ。


「戦禍に巻き込まれた民間人を?」


ルークが首を傾げる。


「この戦いの前に、

 お前の親父さんが言ったことがあるだろう?

 『争いの土壌』ってやつ。

 なんかちょっとだけ、分かった気がするわ」


神妙な顔をするウォルフを、

ルークが優しい眼差しで見つめている。


「俺な、レッドロラインの『女神の王冠』の利権、

 全部放棄しようと思うんだ。

 不平等にならないようにだけ、国連の中立機関に見張りを置いて、

 もう、好きなだけお取りくださいって感じにしようかなって」


ウォルフがポリポリと頬を掻いた。


「ちょっ、ウォルフ、

 それ、一人で決めちゃっていいの?

 とんでもない損失になっちゃうよ?」


ウォルフの言葉に、さすがにルークが目を瞬かせる。


「俺が決めなくて、誰が決めるんだ?

 まずは俺が決めて、俺が行動していかないと。

 損失つってもな、有限の資源に縋り付いて、目先の利益のために争うよりは、

 恒久に持続可能な技術を開発するほうが、生産的じゃない?」


ウォルフが不敵に笑う。


「なにが正しいのか、

 なんて結局誰にもわかりゃあしないんだけど、

 それでも正しいと思うことを選んで行動していくことかなって、

 今は思う。

 俺たちには、神から与えられたノアの英知がある。

 それはきっと互いに争って滅ぼすために使うものじゃない。

 平和を創るためにそれはあるのだと思う」


ウォルフは深淵の宇宙に展開する、

コロニー群を見つめた。







 











とりあえず、これにて終了です。

気が向いたらまた、お会いしましょう。

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