33.鬼神2
アーザス国一番艦『カイザー』の
フレイア・アーザスのもとに、
同盟国であるリアン国の将から入電が届く。
「貴殿が招いたこの危機に、
貴国はどう対処なさるおつもりか?」
そんな短い文章の後で、リアン国の一番艦『イカロス』の主砲が、
『カイザー』に突き付けられる。
フレイアがきつく唇を噛んだ。
フレイアの脳裏に、レッドロラインの
事務次官の面影が過った。
『ではあなたに、ひとつ聞くわ。
欲しいものがあるとき、あなたならどうする?』
それは哀れな事務次官に向けた問いであって、
その実は自身の深いところに対する問いなのかもしれないと
フレイアは思った。
『わたくしは、それを下さいと、
誰かに頭を下げるのはまっぴらごめんだわ』
フレイアは自身の答えに、瞼を閉じる。
『だったらどうする?
盗むの? それは卑怯ね。
だからわたくしは力尽くでそれを奪うの。
とても公正な方法だと思うわ』
自身の答えに、今も異論はない。
『だけどそこには、自分の命を懸けるのよ。
だから卑怯ではないわ』
フレイアが目を見開き、
連合の全軍に向けて、通信回路を開いた。
「全速前進旗艦最大出力!
目指すはレッドロライン一番艦『Black Princess』のみ。
全軍は生中に生あらず、死中に生ありと心得、我に続け!」
フレイアは一歩も引かない。
今、アーザス・リアンの連合の全戦力を懸けて、
オリビアの乗る戦艦『Black Princess』に牙を剥く。
◇◇◇
戦艦『Black Princess』への猛攻が始まるや否や、
ルーク・レイランドが『White Wing』の艦長席を立った。
「艦長?」
横に座る副艦長のエルライドが、訝し気にルークを窺う。
「エルライド、『White Wing』を頼む」
ルークはそう言い置いて、ブリッジを出て、
シェバリエの格納庫に向かう。
「対艦刀と要塞攻略用の爆撃グッズ、全部背負わせて」
艦長のいきなりの申し出に、技術者たちが困惑する。
「ちょっ……ちょっと、レイランド艦長?
ひょっとして一機で向かわれるおつもりですか?」
凍り付く技術者の背後に、エルライドが立つ。
「もう、全部用意してます。
やりたいようにやっちゃってください」
そう言ってエルライドがひらひらとルークに手を振る。
エルライドの言葉に、ルークがニヤリと笑う。
「ちょっ、ちょっと、アンダーソン副艦長までっ!」
技術者以下、兵卒たちが青い顔をするが、
エルライドは意に介さない。
「まあ、本来なら部下として、
無茶をするなと、上官を諫めなきゃならない
立場なんだろうけど、この人絶対聞きゃあしないしね」
そう言って、軽く肩をそびやかす。
「艦長の援護は、
この『White Wing』が責任をもって行います」
そう言ってエルライドが敬礼すると、
「Good!」
ルークが満足そうに頷いた。
「ではせめて、我々シェバリエ部隊をお連れください」
そういっていつの間にか、
その背後にシェバリエのパイロットたちが控えているが、
「今は時ではない」
エルライドが首を横に振った。
「しかしっ!」
なおも食い下がる兵卒を、エルライドが見据える。
「わからないのか? 本気をだされたあの方の前では、
足手まといにしかならない」
エルライドの言葉に、兵卒たちが悔し気に下を向いた。
◇◇◇
パイロットスーツに着替えたルークは、
自身の隊長機、シェバリエ『エクレシア』に乗り込む。
従来のシェバリエに比べて、パワーを重視したこの機体は、
ルーク専用のカスタム仕様である。
白を基調としているのは、従来型と同じだが、
そのシルエットは従来のものよりも、少し大きい。
また関節部分は、淡いメタリックブルーで統一されており、
左胸にハトをモチーフにしたエンブレムを戴く。
「セナ、行ってくるよ。
どうかウォルフを守って」
そう言ってルークは、
自身の首にかけているロザリオに口づけた。
「ルーク・レイランド、隊長機出るぞ!」
オペレーターの誘導の後で、ルークが『エクレシア』を駆って宇宙へと、
飛び立った。
◇◇◇
「ダメです! これだけの集中砲火では、装甲がもちませんっ!」
悲痛なオペレーターの声に、オリビアは目を瞬かせる。
(ですよね~!)
心の中で、幻の涙を流しながら相槌を打つ。
刹那、戦艦が轟音を立てて大きく揺れる。
「Aブロックに被弾ありっ! 推力30%低下っ!
消化班は直ちに消火に向かえっ!」
それでもオリビアは微動だにしない。
(さあ、どうする? ルーク・レイランド。
俺はここにいるぜ?
逃げも隠れも……するつもりはない)
そんなことを思って不敵な笑みを浮かべる。
「鬼が……いる」
刹那、オペレーターの一人がぽそりと呟いた。
「は?」
隣の兵卒が訝し気に、
オペレーターの覗き込んでいたモニターに目をやる。
そこに映るのは一機のシェバリエだ。
「動きが……変だ。
あまりにも早くて、
ときどき目で負えなくなる……」
オペレーターが驚愕の表情を浮かべる。
遠目にチカチカと彗星のように輝いたかと思うと、
次々と敵のシェバリエや戦艦が、派手な火柱を立てて沈んでいく。
「七つ……八つ……九つ……」
オペレーターが、青い顔をして何かを数えている。
「って、お前、何を数えているんだ?」
兵卒が恐る恐るオペレーターに尋ねると、
「あのシェバリエが、
俺の見てる間に沈めた戦艦の数さ」
オペレーターの言葉に、兵卒が目を見開く。
「馬鹿なっ! 戦艦だぞ?
戦艦をそんな短時間で……」
言い終わらぬうちに、
そのシェバリエがどんどん近づいてくる。
オリビアがいつの間にかオペレーターと兵卒の背後に立った。
「ああ、それな。
関節部分がメタリックブルーのシェバリエじゃないか?
左の胸にハトのエンブレムを戴く」
オリビアの言葉に、オペレーターと兵卒が振り返る。
「そいつは確かにお前らが言う通り、鬼だ。
戦場を駆ける鬼『鬼神、ルーク・レイランド』っていうんだ」
この話の読者さんっていうのがね、
予想としてヘビーな男性ユーザーさんと、
比較的ライトな乙女と、
きらっきらのティーンエイジャーが1:1:1くらいの割合なんじゃないかなと思うのです。
で、話の割合も乙女小説1:ゴリゴリの戦記1:アカデミーでの学園ラブコメ1くらいで書けたらなと、
思っています。
そういうのが同居した話なんで、決して好きじゃないパートもあるかと思うんですけど、
だいたい順番で回ってきますので、気長に読んでやってください。
今戦記パートなんですけど、女性のライトユーザーさんが剥がれる剥がれる。
ホントごめんなさい。
なぜわかるかというと、
恋愛パートで数が増えた
スマホ率が、今ものすごく低いんです。
ほぼほぼ、パソコンアクセスの状態。
きっと、作者兼任しておられるへビーユーザーさんが、
読んでくださっているのだなあと、恐れおののいております。




