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31.開戦

深淵の宇宙(そら)に展開するコロニー群を背に守るように、

レッドロラインは、三つの軍事要塞『Shem(セム)』『Ham(ハム)』『Japheth(ヤペテ)』を有する。


有事に際し、

それぞれの要塞に、

国の主要戦艦を配置することになった。


すなわち、『Shem(セム)』には、

将軍ハルマ・エルドレッドが艦長を務める、

戦艦『雷神』、


Ham(ハム)』にはオリビア第一皇女が指揮を執る、

戦艦『Black Princess』、


Japheth(ヤペテ)』には、上級大将ルーク・レイランドが艦長を務める、

戦艦『White Wing』がそれぞれ守護にあたる。


この三つの艦を、一度軍事要塞『Ham』に集結させて、

ブリッジを連結させると、


ハルマ・エルドレッドとルーク・レイランドが、

それぞれ『Black Princess』のオリビア皇女のもとに集った。


艦長席のオリビアの前に、

ハルマが膝を屈めて、臣下の礼をとると、

ルークもそれに従った。


「無事であったか、ハルマ殿」


ハルマのもとに駆けよったオリビアが、

心底ほっとした表情を浮かべて、ハルマの手を取った。


「激戦だったと聞いている。

 怪我はないか?」


オリビアがハルマを気遣うと、

ハルマがニヤリと笑みを浮かべる。


「この通りでございます」


レッドロライン領の小惑星M1に、突如アーザス・リアンの連合が、

武力を用いて実行支配を強行したのは、わずか1週間前だ。


不意を突かれたレッドロライン兵は、

撤退を余儀なくされ、屈辱的にも一時はアーザス・リアンの連合に、

その支配を許してしまったのだが、


その後駆け付けた、ハルマ・エルドレッドの隊による

決死の猛攻により、現在は小惑星M1を取り戻し、膠着状態が続いている。


「ハイネス・エーデンの件を聞いたか?」


オリビアがルークを窺う。


「でっちあげだよ、そんなの。

 ハイネスさんにそんなことできるわけないじゃない?

 差し詰め、小惑星M1の不法占拠を誤魔化すための、

 後付けの大義名分ってとこでしょ?」


ルークが眉を顰める。


「これ、ルーク!」


ため口に戻ったルークを、ハルマが嗜める。


「じゃあ、父上はどう思うのさ?」


ルークの問いに、ハルマが厳しい表情をする。


「事の表面だけを捉えるならば、確かにお前の言う通りだろう。

 だが戦争というものはそんな単純なものではない。

 光があれば影があるように、複雑なものが様々に入り組んで、

 争いの土壌ができるものだ」


ハルマの言葉に、オリビアが考え込む。


「争いの土壌……」


そう呟いた、オリビアに、

ハルマが優しい眼差しを向ける。


「作用でごさいます、オリビア皇女殿下。

 武力を持って武力に抗うのも、

 一つの方法でありましょう。

 何かを守るためには、

 どうしてもそれが必要な局面があることも確かです。

 しかし、それでは争いの連鎖は絶てませぬ」


ハルマの言葉に、オリビアが深く頷いた。


「だけどどうしろっていうのさ?

 向こうが一方的に攻めてきて、

 不法に自国の領土を占拠しているわけだろ?

 しかも、恐らく罪なき人に罪を着せて、

 戦争をふっけてきているわけじゃん?」


ルークが不服そうに唇を尖らせた。


「まずは、相手を話し合いのテーブルに、

 引っ張り出すことだな。

 お前の得意分野だろう?

 行って来い! バカ息子」


ルークを見つめる、

ハルマの眼差しが深い。


◇◇◇


アーザス・リアンの連合に、近隣の小国が次々と加わっていき、

その兵力は、今やレッドロラインに引けを取らない。


陣形は中央突破型の魚鱗をとる。


対するレッドロラインは防御に有利なように、

左右に広く展開する鶴翼の陣形で臨む。


戦艦から次々とシェバリエが射出され、

背中に吹かすバーニアの噴射が、

深淵の宇宙(そら)にその背に生える翼のように青く輝いている。


戦艦『White Wing』の艦長席で、

ルークは思わず目の前の光景に魅入った。


命を懸けて瞬くこの光の群れに、

言い知れぬ激情を抱かずにはおれない。


不思議とそれが怖いとは思わなかった。

しかし、知らず、身体が震えている。


「あっ、艦長、すんませんっ! 遅れちゃいました」


そう言って悪びれずにブリッジに入ってきた男は、

安全第一のヘルメットを被り、

黒のジャンパーを羽織り、

デニムのカーゴパンツを少しずらしてはいている。


「お前っ! エルライドっ! 

 こんな時に軍服も着てないのかっ!」


ルークが、がっくりと肩を落とす。


身長は190㎝くらいであろうか。

目を見張るほどの長身は、モデルのように均整がとれている。

少し長めのさらさらとした栗色の前髪からは、

同じ色の鋭い眼光が覗き、周りのものを威圧する。


「エルライド、どうでもいいけど、お前パンツ見えてるぞ?」


ルークが顔を顰める。


「見せてるんスよ、っていうかそういうファッションなんスけど?」


恥ずかし気もなく、エルライドが物憂げな視線をルークに向けた。


190㎝のエルライドと、その上官であるルークの身長は170㎝である。

身長差20㎝の部下がルークの顔を覗き込むと、

ルークが半眼になる。


「上官を見下げるな。なんか腹立つ」


エルライド・アンダーソン

一見すると軍人に見えないこのガテン系あんちゃんは、

優秀な技術者だ。


もっとも、その容姿はどこぞのスーパーモデルも足元に及ばないほどの

美形であり、軍服を着たときの女性陣の黄色い歓声はえげつない。


憎まれ口とは裏腹に、ルークはエルライドに自身の部隊の選任技術者として、

また、戦艦White Wingの副指揮官として厚い信頼を寄せている。


「ぎりぎりまで、隊長のシェバリエ調整してたんで」


エルライドが、不敵に笑った。










 

 

 



















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