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20.こうして乙女は剣をとる!

「セナが亡くなって、もう二年になるんだな」


ウォルフは感慨深げに、セナの墓石を見つめた。


「実はわたくし、姉が亡くなったなんて、

 まだ信じられませんの」


エマが寂し気に微笑んだ。


「気持ちは分からないでもない。

 二年前の戦争で窮地に立たされた自身の部隊を、

 身を挺して守ったという報告は受けているが、

 誰もその亡骸を見たわけではないのだから」


ウォルフもその眼差しに痛みを過らせる。


「セナは……本当に強かったな」


在りし日のセナを思い出して、

ウォルフはエマに寄り添う。


「エマはもともと政治を熱心に勉強していると、

 セナから聞いていたのだが、

 どうしてアカデミーに入学したんだ?」


ウォルフの問いに、エマは暫し沈黙した。


「姉が亡くなってから、色々なことを考えました。

 どうすればこの国を、愛する人たちを守ることができるのかと」


エマのアクアブルーの瞳が、

悲しみと慈しみに揺れている。


「レッドロラインは地球に国土を持たない国民でしょう?

 この宇宙(そら)という閉鎖空間に生きる私たちにとって、 

 コロニーが攻撃を受ければ、どのみち生き残る術はない。

 そう思ったんです。

 いくらノアの一族の英知に縋って、

 難攻不落と謳われるセキュリティーを築いたとしても、

 たった一発でもミサイルの攻撃を受ければこの国は亡ぶのです」


エマは調整された青い空を見上げた。


「脆弱な箱舟だと、お前もそう思うのか?」


ウォルフが微かに目を細めて、エマを窺った。


「正直、わかりません」


エマは肩を窄めた。


「ただ、姉はその楯となって、命を落とした。

 だから逆にわたくしは剣となって

 生きてやろうと思ったのです」


エマは挑発するように、ウォルフを見上げた。


「ならばせめて、生き残るために剣をとって、

 生き残るための戦いをしたいと

 そう思ったまでのことです。

 この剣をとるということは、私たちにとって

 『生きてやる』という最大限の意思表示なんです。

 それだけのことです」


迷いのない澄んだ眼差しをウォルフに向ける。


「そうか、ならばこれを受け取れ、エマ。

 俺がお前にロザリオを授け、契約の妹(スール)として

 軍事指導を受け持つ」


そう言ってロザリオを差し出したウォルフに、

エマが目を見開いた。


「ウォルフ様っ! あなたは一体何をお考えなのです?

 あなたにはユウラさんがっ!」


エマが声を荒げた。


「俺はユウラにロザリオを授けるつもりはない」


ウォルフの言葉に、エマが口を噤んだ。


「ユウラは間もなく俺の妻になる身だ。

 ゆえに、アカデミーに滞在するのも、

 そう長い期間ではない。

 だからロザリオは授けないと決めている」


エマが盛大なため息を吐いた。


「時代錯誤も甚だしいですわ、ウォルフ様。

 それにあれだけの実力を持ったユウラさんを、

 軍務から遠ざけるなど、この国の損失をお考えになって?」


エマが柳眉を吊り上げた。


「ともかく、わたくし、

 ウォルフ様からロザリオは受け取りませんことよ?

 他人の恋路を邪魔して馬に蹴られるのは、まっぴらごめんですからっ!」


エマそう言って、腰に手を当てる。


「じゃあお前、軍事指導どうすんの?」


ウォルフの言葉に、エマが言葉を詰まらせる。


「あの様子じゃ、ルークはきっと受けねぇぞ?

 あのアカデミーにお前を指導できる奴がいるのか?

 増してお前はセナの剣を知りてぇんだろ?」


痛いところを突かれて、エマが口を閉ざす。


「わ……わたくしはロザリオをお受けいたしませんと申し上げたのです。

 ぐ……軍事指導の件は……また別……です」


エマの目が泳ぐ。


「ユウラさんはわたくしにとっても、大切な友人です。

 彼女を傷つけるようなことは、できるだけしたくはありません。

 だから、これで十分」


そういってエマは自身の首にかけられたロザリオを取り出す。


「姉の形見を、あなたもお持ちでしょう?」


日の光を受けて、ルビーとダイヤがキラキラと輝いている。


「ああ、これな」


エマの言葉に、ウォルフも首からロザリオを外して見せる。

まったく同じものだ。


「お前の姉ちゃんとは、

 同門で幼い頃から死ぬほど剣を交わしてきた仲だ。

 ルークを除いては、恐らく俺が一番近い。

 お前のことは俺が引き受ける。エマ」


そう言ったウォルフに、エマが姿勢を正した。


「よろしくご指導ご鞭撻のほどを」


エマはウォルフに敬礼した。


エマと別れて、自身の母の墓石の前に立つウォルフの背後に、

いつの間にか気配を消したルークが立っている。


「最近の子は……ホント、しっかりしてるよね」


「うぉっ! びっくりしたっ!!!」


ウォルフが、心底びっくりして変なポーズを取っている。


「これは……シャルロット王妃の……」


ルークが言葉を切った。


シャルロット王妃の墓石は、

数年前に第二王妃カルシアの命により、

王家の廟からこちらの霊園に移された。


もっとも墓を暴くことは、レッドロライン王が許さず、

移されたのは墓石のみなのだが。


墓石の前には白いカーネーションが手向けられている。


「まあ、俺の母ちゃんだからな」


ウォルフが肩を竦める。


「俺が十月十日と一日だけ、

 一緒に過ごした女性(ひと)だ」


ウォルフの横顔にそこはかとない孤独が漂う。







 




 







な~んかもう、まったく別の小説になってしまったんだが……。

どうすりゃいいんだ? これ……。


なろうに寄せて、寄せて……。

結構必死です。



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