表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【新春怪談】−恐怖連鎖−[ファミレスのドリンクバー]

作者: しえすた



学生の私はお小遣い範囲でいけるなら地元のファミレスで友達とご飯を食べる事だ。

学校の事、家の事、お互いの彼氏の話が定番だった。


その場所は私にとって憩いの時間になった。

今日も友達と地元のファミレスで意気投合する事になった。

私が小学生の時、もともとそこはパチンコ店だった。

駐車時の上にファミレスがあり、地元の人は誰でも知っている。

全国チェーンを展開している事でも有名だ。

今日はスマートフォンにアップされた動画を話題に友達と話していた。


「心霊スポットって行った事ある?」


友達はフライドポテトを食べながら話す。


「ないよ、怖いじゃん」


「見た事あるの?」


無い、と答えたらウケると言って笑い始めた。


「幽霊って居るかもよ」


と、彼女は言って1人でフライドポテトを平らげてまた何か頼もうとしている。


意味深だなって感じながらドリンクバーへ足を運ぶ。

このファミレスはドリンクバーだけじゃなくトッピングも無料だ。


アイスクリーム、ジャム、ホイップクリーム、タピオカ、ウエハース、コーンフレークなど。

フローズンのフルーツもある。


私は適当にグラスに入れて彼女の元に戻った。

私が席を外している間、何品か注文していたらしい。


「ねぇ、バイトするなら一緒にしよう」


そう言う彼女に私は同意して、嬉しそうにドリンクバーに走って行った。

高校生生活も終わり、ちょうど欲しい物もあったのでバイトを探していた時だった。



なかなか彼女が帰って来ない。

トイレかもしれない。

…と、思ったがもう10分経っている。



おかしい、と感じた私はドリンクバーまで見に行った。

すると彼女が硬直しながら立っていた。

右手には水の入ったグラスを持ったまま。


「ちょ、何してるの」


私の問いにぶつぶつぶつ、と何か呟いている。



…れる、…れるぞ。


と。



聞き取れるのはそれ位だ。

何を言ってるのか分からず、彼女を席に戻した。


目線は虚ろ、体は前後に動いている。


客観的に怖いと思った。

いつもの彼女じゃない。


突然、彼女の両面が、ぎゅるんっと上に向き白目を向いた。


彼女の異様さに固まってしまう。



「入れるぞ」


と、ドスの効いた男性の声だった。

そのまま右手に掴んだグラスの水を飲もうとする。


そこからはドブの様な嫌な匂いがする。

私は咄嗟にその水を奪い取った。


「ちょっとやめてよ!」


私の声に反応した。


「邪魔すんなよ」


男性の声だった。


そのまま彼女は失神した。

事情の分からない私は彼女の意識が戻るまで側に居たが、元に戻った彼女は何も覚えていなかった。


あとから聞いた話で、彼女とその彼氏は先日有名な心霊スポットに行ったらしい。

無縁仏が広がる井戸のある神社だ。

昔、貧しい男性とその息子が餓死をして看取られる事も無く井戸に捨てられたといわれていた。



同時期にその彼氏も挙動不審な行動があったそうだ。

2人は取り憑かれてしまったんだろう。


踏み入っては行けない場所に入ってしまった代償に……。









【新春怪談】−恐怖連鎖−[手を振る女性]




単身赴任で〇〇県に来たが思った以上に都会で、帰りに居酒屋へ行く事に困らない。

俺の実家は田舎だから、コンビニまでだいぶ距離があった。

今日は駅前の居酒屋で一杯呑んで気分は上機嫌だ。

バスに乗り、そこから15分歩いたら自宅がある。


けれど、歩いていたら急に催してきた。

コンビニも近くにないので、いつもなら素通りする公園のトイレを使う事にした。


時刻は22時。

静まり返った公園はやけに怖い。

普段は子供がはしゃいでいたり、ママ友の話声で満ちているんだろう。


妻と子供は元気だろうか。

ホーム画面に写る家族の壁紙を見ながら思う。


トイレで用を足し、目の前に遊具が立つ砂場を抜けた時だ。

俺がいる距離からぐるりと回って一番端に街頭がある。

その側で女性が立っていた。

全身真っ赤のワンピースを着て、髪が凄く長い。

顔の輪郭を覆ってしまう量だ。


街頭の明かりが女性を照らしている。


すると彼女がゆっくり手を振った。

俺から見ると、目が悪いせいかぼやけて見える。

横顔は確認出来るか顔立ちは分からない。

綺麗な人だと思う。


すると、彼女の前へ吸い寄せられる様に男性が歩いてきた。

恋人だろうか。

2人は俺を背にして暗闇に消えていく。

彼女は男性の左腕を包み込みながら。


公園で待ち合わせか、若い2人を羨ましく思いながら自宅に帰った。


年末に近づくにつれて、残業が増えた。

帰りに居酒屋に寄れない日々は続く。

バスに乗り、いつもの公園を通り過ぎようとした。


すると公園の1番奥でまたあの女性が立っている。


赤いワンピースが目に飛び込んできた。

また待ち合わせだろうか。

そのまま視線を戻そうとした。


今度は前とは違う男性が彼女の元に歩いていく。


(あれ?もう別れたのか)


2人は見つめあい何処かへ行ってしまう。


こんな事が1ヶ月続いた。

出会う男性がバラバラなのだ。

赤いワンピースの女性は水商売でもやっている人だろうか…。





残業も続き、妻とは喧嘩してしまった。

上手くいかない毎日。

精神的にもぐったりする。


仕事が終わっても溜息をついて、バスに乗る。

またあの公園を通る。

俺はその時驚いた。


いつも赤いワンピースが立っている場所に妻がいた。

息を呑んだ。

赴任先に来るなんて聞いてない。

俺はゆっくり近づいた。


気のせいなら通り過ぎたらいい。


少しずつ距離を詰める。

やはり妻だった。



「おかえり」


俺は妻の横に並んで歩いた。


「どうしたんだよ、こんな所で。俺の家は反対側だから、こっちへ…」



妻を方向転換させようとしたが急に腕を掴まれた。


「あっちがいい」


ノイズ混じりで少し聞こえにくい。

俺の腕を引く力が強すぎる。


「待ってくれ!」


こんな強引な事は妻はしない。

おかしい。

目の前に橋が見えてきた。


思い切って振り払ったがそこに妻は居なかった。



ただ、橋の足場に沢山の花が手向けていた。

この橋は自殺の名所らしい。

しかもネットで検索すると赤い服を着た死神が引きずり込むとも書かれていた。


妻の顔でおびき寄せた死神が俺を死の世界に引きずりこもうとしたのだ。




それだけで俺は凍りついた。














【新春怪談】−恐怖連鎖−[〇〇団地]




旦那と子供2人で、この団地に住んで8年になる。

元々この団地自体私が生まれる前から建てられていて年季も徐々に深まっていた。


今旦那は単身赴任で、1ヶ月は帰ってこない。

気楽な反面、やる事もぐっと増える。


朝食を作った後、小学生の長女を集団登校の群れまで見送り、次女を自転車に乗せて幼稚園まで走る。

子供を預けるとすぐパート勤務している工場に向かった。時間にしたら4時間程。


昼過ぎには終わる仕事なので、次女の送り迎えに差し支えがない。


今日はパートが休みなので、スーパーの買い出しに行く事にした。

店内は賑わっていて、特売のあるお肉コーナーへ向かう。すると、Lが声を掛けてきた。

彼女はかつて同じ団地内の隣棟に住んでいた主婦だ。

大学生になる息子が1人暮らしするのを機に、実親が住む一軒家へ移り住んだ。


「聞いたわよ、また引っ越ししたみたいね」


私が住む下の階が今月で2回退去している。

私は5階なので、引っ越し業者が出入りする姿を下から見下ろしていた。

挨拶に来たと思いきや理由は様々で、逃げるように出ていくのだ。


「次は貴方の番かもね」


「やめてよ」


茶化されて軽くあしらった。

ここには8年住んでいて何もないので、安心していた。


いつも通り子供を送り迎えした後、長女の連絡帳のチェックをしたり、宿題を一緒に見て1日が終わる。


寝室に私と子供2人で川の字で寝た。

寝付くのが遅い時は、去年のクリスマスで貰った室内用のプラネタリウムを起動する。


寝静まった深夜3時。


私も眠りにつこうとした時だ。

被さる布団から、トントンと誰か合図の様に触られる感触がある。


なんだろう、と視線だけ目を見張る。

子供かな?

でも違う。

明らかに成人した体躯の朧げな赤い人影がそこにある。


「…aとcがベランダで遊びたいってさ」


旦那の声だ。

子供の名前を呟いている。

こんな時間に遊びたい筈がない。

それに単身赴任してる旦那がここに居る筈もない。


ミシミシミシミシミシ…


すると、旦那の声をした人影が布団の回りを行き交いしている。

私は怖さが湧き上がったが、子供達が寝ている方を見た。


人影は周回しながら、子供達の耳元で何か話している。


私はそれを見て叫んだ。


「近寄らないで!」


覇気を帯びた私の声色に人影はすぅ…と消えていった。


子供達は驚いて起きてしまい泣き叫んだ。


蛍光灯をつけ、あやしながら子供達を宥める。

すると泣きながら子供達が言った。


「パパが…大丈夫だよ、こっちにおいで。怖くないよって言うの」


長女と次女が同じ事を言うのだ。

私には分からないけど、あの人影は子供達にしたら旦那に見えたそうだ。

ベランダの外に連れて行かれそうになったらしい。

ここは5階だ、飛び降りたら助からない。

私の意識に寒気と恐怖が降りてきた。


旦那とは喧嘩して連絡が途絶えていた時期だった。


朝起きて私は旦那に連絡した。

旦那自身、混乱していて話が噛み合わない。


その晩に私が旦那の赴任先に居て、そこの公園に立っていたとゆうのだ。

有り得ない話だ。

私は子供達と一緒に寝ているし、赴任先まで行くのに新幹線を使う程遠い場所だ。



旦那はこう言った。

現れたのは赤い死神だと。



あの晩、私と旦那に恐怖の連鎖が絡まってしまった。

日常に潜む異空間の世界が背中合わせにある事が、私が生きていて1番恐ろしかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ