女遊びが過ぎて聖女にお灸を据えられた俺は、マッチョなアニキ達のパシリとして禁欲生活を余儀なくされる。見かねた幼馴染みがパーティーに誘ってくれたが、俺を信用するのはまだ早い。
「剣士として優れた実力を持ちながら、色欲に溺れた男、ウルフギャング・ファイヤージンガー!貴方の色欲を封印します!」
名剣士かつ稀代のプレイボーイこと、俺ウャフンー(←略)は聖女の怒りを買い、色欲が頭をもたげると激痛が走るヘアバンドを装着させられ、彼女が以前の性別時代のマブダチだと言うマッチョなアニキ達に、パシリとして売り飛ばされてしまった。
アニキ達の要求は厳しく、200イェーンのパンを100イェーンで買って来るように頼まれたり、重いダンベルを背負わされて欽ちゃん走りを無理強いされたりと、待遇は凄惨を極める。
だが、俺は隙あらば色欲を諦めない。
激痛ヘアバンドはあくまでお洒落の道具だと考える。
つまり、ヘアバンドが必然となる髪型に変えるのだ。
そして道行く美人には下心無く優しくし、時折聖女から喰らうリモート制裁には顔を歪めて、「長くない命を貴女の為に使いたい」と言い残して去る。
女は追うもんじゃない。
女に俺を追わせるんだ。
こうして、表向きはマッチョなアニキ達にシゴかれて禁欲生活をしている様に見えながらも、休憩時間には俺に金と食糧を持って来る女達と遊ぶのである。
「ウギーガー!大丈夫?可哀想、ここまで重い荷物背負わせなくてもいいのに……」
俺の噂を聞いて駆け付けた幼馴染み、エミリーが、出会い頭に俺の顔を覗き込む。
彼女は、まだ俺がプレイボーイになる前に一緒に遊んだ仲。
だから彼女は、本当の俺は真面目な男だと信じているのだ。
名前間違えているけどな。
ウギーガーじゃなくてウャフンーだぜ!
「ウギーガー、あたし、冒険者パーティーを組んだの。強い格闘家は揃っているけど、剣士がいないから、ウチに来て!ウチの魔法の先生に何とかして貰いましょう!」
「……おいおい、いくら俺に悪い印象は無いからと言って、こんなプレイボーイを信用するのはまだ早いんじゃないか?」
俺はモテる男の辛さを噛み締めながら、絶妙な距離感を保ってエミリーの誘いに少しずつ近寄る。やらなきゃ意味ないよ。
「……あら大丈夫よ。聖女様にも許可貰ってるし」
屈託の無い笑顔で俺を見下ろすエミリーの態度に、俺は一瞬凍りついた。
「魔法の先生どえ〜す!(ドS)」
「強い格闘家どえ〜す!(ドS)」
聖女とアニキの美しいハーモニーに、俺はたまらず昇天する。
俺は目覚めてしまったのだ。
もう、何も恐くない。