おかあさん、なかなおりできたよ!
子供のころのケンカを思い出します。
【ひだまり童話館】第23回企画『つんつんな話』参加作品です。
1、
おかあさん、さいきん、ドンナがおかしいの。
わたしとぜんぜん話さないの。
わたしが「おはよう」といっても
「あそぼう」といっても、なにもいわないの。
でも、アンやルーとは、ふつうにはなすのよ。
2、
おかあさん、だからね、わたしいったの。
「ドンナ、わたしなにかわるいことした?」って。
それでも、ドンナはぎゅっとくちびるをむすんでだまっていたの。
そうしたら、アンやルーが「ドンナはひどい」っていいだして。
わたしを教室のはしっこによんで
「みんなでドンナをむししよう」っていったの。
「おなじことすればわかるから」って。
わたしも「そうしよう」ってさんせいしたの。
アンが「ドンナ、わたしたち、もうあんたとははなさない」とドンナにいったわ。
ドンナは、血がでるんじゃないかというほどくちびるをぎゅっとむすんでた。
ないているみたいだった。
3、
おかあさん、わたしとアンとルーはね、それからドンナにつんつんしはじめた。
ろうかですれちがったら、わざとドンナがとおったほうのかたをハンカチでふいたりしたし、めがあうと、はなをてんじょうにむけてぷいっとしたわ。
ひどいよね、わたしほんとうにわるいこだわ。
ドンナは、みるみる元気がなくなっていったの。
4、
おかあさん、このあいだね、アンはクラブ、ルーはおかあさんがむかえにくるからって、わたしはひとりで学校からかえることになったの。
ちょうど森にさしかかった時よ。
犬が、はんたいがわからやってきたの。
わたし、犬がこわくてこわくてしかたないでしょう。
おばけよりこわいんだもの、ふるえたわ。
「にげなきゃ」
そうおもったけれど、あしがうごかなかった。
わたしは、ちかよってくる犬に、持っていたバッグをなげて、あとずさりした。
犬は、じっとこっちをみていて、いつとびかかろうか考えていたみたい。
「いやだ」
わたしは、なくすんぜんだったよ。
そうしたら、ドンナのこえがしたの。
「ほら、こっちへおいで」
ドンナは、犬の身体をなでながら、『はやくにげて』ってわたしに目であいずした。
わたしは、をいそいでバッグをひろって、「ありがとう」といって家にとんでかえったわ。
5、
おかあさん、わたしやっぱりドンナがすき。
すきですきでたまらない。
いろいろいっぱいはなしたい。
いっしょにほんをよみたい。
かけっこしたい。
また、おとまりかいがしたい。
どうしたら、なかなおりできる?
わたし、わたし、ドンナともういちど友達になりたいよう。
6、
おかあさん、ドンナのおうちに電話をかけてくれたのね!
ありがとう、おかあさん。
え?ドンナのおかあさんが入院しているの?
だいじょうぶなの?
よかった、あしたには帰ってくるのね。
わたし、あす、ドンナの家にいってくる。
ドンナのお父さんがおいでっていってくれたから、勇気をだしていってみる。
ドンナ、私と話してくれるかしら?
話してくれなかったら、どうしよう?
うん、だいじょうぶ。
おかあさん、ぎゅっとしてくれてありがとう。
7、
おかあさん!
ドンナってドンナってね、わたしとおしゃべりすることがチョコレートよりすきだったのよ!
あのチョコレートばかり買っていたドンナがよ。
ドンナのおかあさんの病気がなおったから、おしえてくれたの。
いちばんすきなものをがまんするので、おかあさんの病気をなおしてくださいって、神様におねがいをしていたんだって。
いちばんすきなものじゃないと、こうかがないとおもったっていってた。
いつも「アイラ!」ってよびたくなるのを、ふとももをつねってがまんしていたんだって。
ドンナがなきながら「むしして、ごめんね、ごめんね」ってあやまるから、
わたしもなきながら「つんつんして、ごめんね、ごめんね」ってあやまった。
ドンナのおかあさんは、ドンナをだきしめて「おかあさんはだいじょうぶだから、もう、そんなばかなことしてはだめよ」となきながらいったわ。
でも、わたし、おかあさんのためになにかしたかったドンナのきもちが、とてもよくわかる。
だから、ドンナにたのんだの。
ドンナのおかあさんが病気になるなんてかんがえたくないけれど、もし、もしもこんどそんなことがあったら、こういってちょうだいって。
「ドンナとアイラが二番目にすきなものを、願いがかなうまでそれぞれがまんしますから、願いをかなえてください。ふたりなので、二番目にすきなことでおゆるしください」
ドンナは、わたしにだきついて、「うんうん」っていったよ。
8、
おかあさん、ドンナとなかなおりできてうれしい!
ドンナのおかあさんも、よくなってよかった。
ドンナは、わたしにとっていちばんのともだち。
もちろん、だいすきな生クリームとハチミツいっぱいのパンケーキだってがまんできるわ。
アンやルーにもはなさなきゃ!
きっとわかってくれる。
あしたからも、いっぱいいっぱいおしゃべりするんだ!
わたし、うれしくってうれしくって、こんやねむれないかもしれないわ。
おわり
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
なお、改稿前はジョリーとしていた名前を、女性名として間違いのないドンナにいたしました。
勉強不足で読んでくださっていた皆様には、混乱を招いたことをお詫びいたします。
申し訳ございませんでした。