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傾国の美王女は男運がない  作者: 早瀬ゆい
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2 豚愛好家、研究中毒者、八方美人の浮気男、勇者

 大帝国との戦争もなんとか回避する事が出来、父王と母と喜びに浸る毎日を過ごしていたわ。大好きな人達と共に、大好きな我が王国で過ごす日々。穏やかで温かくて最高だったわ。


 その頃私はもう十九で、王国の女性の結婚適齢期だったの。父王が、男運が無い私が、この先も安心して王国で暮らせるようにと、公爵家から素敵な男性を紹介してくださったわ。


 タカラード・ナガルファス公爵。私と同い年の十九にして、公爵家を継いでいる立派な方。公爵家が所有する葡萄園、その他にも貿易などたくさんの事業を成功させていて、非常に優れた才をお持ちの方。


 お会いしてみたら、はにかんだ笑顔がとても柔らかくて温かい、素敵な男性だったわ。公爵である事を鼻にかけたりせず、誰に対しても丁寧かつ親しみがある素晴らしい方。


「実は、僕は王立学院でずっとユーリリアン王女様の事を見つめていました。こんな美しく優しい方と結婚できる人は、世界一の幸せ者だろう、と。まさか、僕とこうして会ってくださる日が来るなんて、夢にも思いませんでした」


 タカラード様は、会う度に騎士のように颯爽と跪き、私の手に優しく、でも熱いキスをしてくださったわ。私はその度に胸が高鳴り、恥ずかしさと嬉しさを感じていたの。


「今度こそ幸せになりなさい、ユーリリアン」


「はい、陛下。私の事をいつも想って下さり、こんなに素敵な婚約者と巡り合わせて下さり、感謝しかございません」


 あの時の父王と母の美しく穏やかで慈愛に満ちた笑顔が、今も忘れられないわ。あんな顔は、もう二度と見ることは叶わないでしょうから。


 婚約披露パーティーを1週間後に控えたある夜、私はタカラード様を想う余りに、王女としてあるまじき御転婆な行為をしたの。王宮を抜け出して、夜の街を馬車で走り、タカラード様の公爵邸に向かったのよ。


 タカラード様は優しくて良く笑ってくださる明るい方で、私も彼の笑顔が好きだったから、きっと、王宮を抜け出して会いに来たお転婆な王女を見て笑ってくださると思っていたの。私は無知で純粋で、ただの少女だったのね。


 タカラード様の公爵邸のお部屋を見上げると、バルコニーに知らない女性の姿があったわ。かなりふくよかな方で、月明かりに照らされた白い肌は、まるで清潔な白い豚のようでしたの。


 その白い豚に、タカラード様が後ろから歩み寄り、優しく抱き締めている姿をお見かけしてしまったの。相手は豚ですから、残念ながらタカラード様の腕は回り切っていなかったけれど、タカラード様はとても満足そうなお顔をしてらっしゃったわ。


 私はショックのあまりその場で倒れ、同行してくれていた近衛騎士(レギ卿の教え子)に抱き留められたわ。怒り狂った近衛騎士がその場で公爵邸に乗り込み、王宮からも沢山の騎士達が来て、公爵邸を包囲したわ。


 私は白い豚とタカラード様と向かい合いながら、


「これはどういうことなのでしょう?」


 と、自分でもびっくりするくらい落ち着いた声で聞いたわ。白い豚は豚だから何が起きたのか分からない様子で浅ましく笑っていたけれど、タカラード様は馬鹿ではないから、自分の身にこれから起きるかもしれない事に震えていらっしゃったわ。


「彼女は、ミッチェリ・ボッティチェーン男爵令嬢です。ユーリリアン様と出会う前まで、僕は彼女と交際して居ました。今日は用があって会っていたのですが、やましい事は何一つありません。僕はユーリリアン王女様を愛しています。ミッチェリの事は済んだ事、今は良き友人として付き合いがあるだけなのです」


 キリッと真剣な顔で必死に語るタカラード様、なぜか私にはそのお顔がまるで詐欺師に見えてしまったわ。息を吐くように嘘をつく、それが詐欺師ですから、タカラード様も同じようなものでしょう?


 私は公爵家のメイドを呼び出し、証拠品の数々を見せてもらったわ。空のワイン、二つのグラス、乱れたシーツ、脱ぎ捨てられた下着、そして……タカラード様のクローゼットには白い豚の洋服も入っていたそうで、メイドが持ってきて床に投げ捨ててくれたわ。


 そのメイドには、公爵家よりずっとお給料も待遇も良い王宮で働かないかと声をかけてあげたの。仕えたければ、タカラード様の浮気の証拠の品々を集めて来てくださいとお願いしたわ。メイドは喜んで頬を赤く染めながら、すごい速さで証拠集めをしてくれたわ。


「こ、これは……良い友人としての付き合いで……ずっとそういう仲だったから、2人で会うと自然とそういう流れになるわけで……」


 やはり詐欺師ですわね、この男は。あくまでも言い逃れようとするなら、私も容赦しませんわ。


「白豚……ではなく、ミッチェリ・ボッティチェーン男爵令嬢。貴方の方からお聞かせくださいますか? タカラード様と何をしていたのかを」


 白い豚はにっこりと笑って、悪気も無く、話し始めたわ。


「ユーリリアン王女様とは結婚まで関係を持たなくて寂しい、辛い、だから私と会いたいと申されました。会えば必ず求めて下さったので、交際していた頃と同じように過ごさせて頂きました。今日、それから三日前にはタカラード様の所有するホテルの貴賓室で、その前は……ええと、そうだわ。葡萄園の中で……」


 白い豚は多少は人の外見も留めていたけれど、やはり頭も豚レベルのようで、話して良い事と悪い事の区別は残念ながらついていらっしゃらないご様子でしたわ。隣で蒼白になって震えるタカラード様を見ると、私の心も凍りついてゆく一方でしたけれど。


「タカラード様。私は貴方に謝罪しなければなりませんね。私のウエストや足が、細過ぎて申し訳ございません。タカラード様の好む、腕が回り切らない豚のようなウエストや、大根のような足になれず、大変申し訳ございません。私はどう努力してもこちらにいる白い豚のようにらはなれませんので、豚愛好家の貴方様に私は相応しくありませんわね」


 私のこの言葉は、流石の豚でも意味が分かったらしく、鼻息荒くブヒブヒと言いながら私に襲いかかって来ようとしたところを、近衛騎士が押さえつけてくれたわ。


 豚愛好家で、元カノと浮気し続けていた男性ーーーーそれが、私の安息地になるはずだったタカラード様の本性だったのよ。この頃、私は自分が致命的なほど男運が無いのでは、と気づき始めたわ。


 私を愛して下さる父王の計らいで、タカラード様は豚との浮気のツケを払ったわ。公爵という地位を失い、今はボッティチェーン男爵と名乗っているの。商才はある方だから、白い豚と一緒に男爵家を裕福にしているそうだけれど、もう二度と私の視界には入って頂かないよう、圧力はかけ続けるわ。


 傷心を重ねて擦り切れた私の心を、誰が癒せるのかしら……。憂うつな日々を過ごしていたら、母が、私にはきっと男運が無いという呪いがかかっているから、神殿で解呪してもらうべきよ、と言い出したの。


 本当に呪われていると判明するならば、原因が分かって嬉しいけれど……。私は大好きな母のアドバイスを大切にする為、神殿に行ったわ。ちょうど、厳しい修行を終えて、若くして高位の司祭となった方がいらしていると聞いて、その方に呪いかどうかをみてもらおうと思ったのよ。


 そうして訪れた神殿で、私はマーサリアス・ナカドゥリ司祭と出会ったの。

 彼は青い髪に琥珀色の瞳、背は低いけれどスタイルは良く、何よりとても知識があって若いのに素晴らしい司祭だったわ。


「ユーリリアン王女様、お会いできて光栄です。……ふむ、貴方にかけられているかもしれない呪いですが、ぼくの腕ならば、解呪する事も可能かもしれません」


 司祭服のまま、彼は私を見て嬉しそうににこりと笑ったわ。付き添ってくれた母はそれを聞いてすっかりマーサリアス司祭を信じ、彼のいう事を守れば私は幸せになれるって言い始めたわ。


 二度目にマーサリアス司祭に会った時ーーーー彼は私と二人きりで会うように指定してきたわ。私は少し警戒して、タカラード様の一件の時、私を守り行動してくれた近衛騎士ケンテ卿を扉の向こうに待機させていたわ。


「ユーリリアン王女様。ぼくが貴方の呪いを解呪できるかもしれませんと言った言葉の意味を、改めてお伝え致したく。ぼくはこれから大司祭となる身です。この王国で最も位の高い聖職者になります。そして、我が神は慈悲深く心の広い方なので、聖職者の結婚も許し下さっています。つまり、ぼくとユーリリアン王女様が結婚する事で、貴方の呪いは解けるという事なのです」


 私はその時、マーサリアス司祭の言っている事が理解不能でしたけれど、後々、盗み聞きしてくれていたケンテ卿に聞いたら、


「あれは単純に、ユーリリアン様に一目惚れしたから結婚して欲しい。自分は地位も貴方に相応しいはずだ、って言ってたんですよ」


 と教えてくれたの。私が鈍いのか、マーサリアス司祭の言葉選びが難解なのかとても悩むところだけれど、どっちもどっちなのかもしれないわ、今となっては。


 母の推しもあり、私はマーサリアス司祭の申し出を受け、交際を始めたわ。結婚の予定まで組み、神殿も大喜びしていたわね。王女たる私が誰と結婚するのかで、次の王国の権力がどこへゆくのかも決まるだけだから、当然よね。


 私は王国に害成す者は絶対選ばないと硬く心に決めていたわ。大帝国の狂王子との婚約中、心に誓ったの。あの時は他に選択肢がなかったけれど、二度と王国を犠牲にするような恋愛はしないって決めたのよ。


 マーサリアス司祭はどうかしら。王国の繁栄に相応しい人材? とても穏やかで思慮深く、常に何かを考えているマーサリアス司祭。よく考え事に没頭しているから、私が話しかけても返事がない事が多いわ。それに、神の研究に熱心過ぎて、膨大な資料に囲まれて生活してて、彼の居室は大変な荒れようだったわ。


 学者肌な方だったわ。何事も真理を追求していたわね。


「ユーリリアン王女様。貴方はどうしてこんなに美しいのに男運が無いのでしょう。ぼくが研究し解き明かしてみせましょう。勿論、ぼくが貴方を幸せにしますから、解明できずとも心配はありませんよ」


 マーサリアス司祭は自信家で、言葉選びは独特だったけれど、私に深い愛情を注いでくれたし、常に穏やかでとても落ち着く相手だったわ。私はこの人と結婚して幸せになるのね、そう実感した事もある位。


 でもマーサリアス司祭はだんた神の研究にのめり込み、私と会う時間が減って行ったわ。結婚の話も遠のき、彼は自室にこもって研究だけに執心するようになったの。

 最初は寂しさから何度も顔を出したりしたけれど、研究中の彼は私の声も届かなくて……本当に私のことが好きなのかしら、マーサリアス司祭に対してそう感じることばかりが増えて行ったわ。


 ある日、マーサリアス司祭は過労で倒れたの。研究に没頭し過ぎたのね。ボロボロで薄汚れた彼の姿を見て、私の幸せな未来は音を立てて崩れ去ったわ。


「私を呪いから救うと仰いましたが、貴方は呪いに負けてしまったようですね。とても悲しいですが、私より神を研究する事の方がお好きなのでしょう? 貴方と共に居ても私が幸せになる事は、これ以上期待できませんわ。さようなら、マーサリアス司祭」


 こうして私は王国で最も期待されている若き聖職者との結婚に挫折したわ。この出来事から、本当に私は呪われているんじゃないかと思い始めたわ。だって、傾国の美しい王女と呼ばれるのに、どうしてこんなにも愛されない、愛せない関係ばかりが続いてしまうのか原因も分からなかったから……。


 遂に父王も母も、結婚適齢期の私の結婚を、諦めはじめたの。


「ユーリリアン、お前は美しく賢い。このまま女王として王国を治める事も可能だろう。結婚よりも、王国を治めるための帝王学や政治を学びはじめてはどうかね?」


 父王にそう言われ、私は笑顔で「はい、お父様」と返答したけれど、心の中では泣いていたわ。

 だって、生涯独身の女王になんてなってみなさい、世継ぎもおらず、ただ老けてゆく恐ろしさといったら……。


 そんな時、私はある魅力的な既婚男性と出会ったの。彼の名はカーリアル・ダーベルト侯爵。私に帝王学や政治の知識を教えてきてくださった家庭教師よ。


 私より二十歳年上の彼は、二人の妻がいたの。貴族は一夫多妻が認められていたけれど、なかなか目にかかる事がなかったから、私にとっては新鮮だったわ。私は帝王学だけでなく、男女の恋愛についてもカーリアル様からたくさんのことを学ばせてもらったわ。


 例えば、恋は海のように寄せては引く波があるけれど、愛は湖のように穏やかで揺るぎないものだって。恋から愛に発展させれば、二人は穏やかに生涯を過ごせるし、一夫多妻なら恋を何度も経験する事が可能だから、常に相手を大切に思える、って。


 カーリアル様は次から次へと新しい女性と出会い、恋を楽しめるかもしれないけれど、妻達は嫉妬に駆られて苦しんだり、他の妻と自分を比べてしまうのでは? 私のそんな疑問は、カーリアル様の巧みな言葉によって誤魔化されてしまったわ。


「私は妻達が他の男に目移りしないよう、常に気を配っているのですよ。妻達が満足し、幸せでいられるように努力と工夫を欠かした事はありません。ですから妻達はとても仲が良いですし、私の事も愛してくれています。ユーリリアン王女様がもし、もう恋愛はこりごり、と思われるなら、私と試してみてはいかがでしょうか? 妻達も新しい刺激が加わり喜ぶでしょう」


 カーリアル様は王国随一の頭脳をお持ちの方でしたが、とにかく女好きだという事が後々分かりました。父王が何故彼を私の家庭教師に選んだのか、真意は計りかねますが、もしかしたら私にもっと男性という生き物を学んで欲しかったのかもしれませんわ。


 カーリアル様は私を連れて色々な場所を回られて、それは家庭教師としてというより男性としてに近かったように思いますが、スキンシップも増えてゆきましたし、だんだんと三人目の妻にどうかとしつこく仰られるようになってきたの。正直、私はどうでも良いと思っていたわ。男運のない私が、今度は既婚者に迫られても、皆の笑い者になるだけでしょうから。


「ユーリリアン王女様、私は本気で貴方を想っているのです。信じて下さい。今まで男性に散々苦労された可哀想な王女様。私がもし一人も妻を娶っていなければ、直ぐにでも結婚を申し込んだのですが」


 本当にカーリアル様は私に恋してるらしく、贈り物もたくさん頂いたし、奥様方と過ごす時間を削って私と過ごされる事が多かったわ。だけど、王女たら私を三人目の妻に、とは非常識も良いところでしょう。


「カーリアル様から学ばせていただく知識は素晴らしいものばかりです。私はカーリアル様と出会い、人として大きく成長させていただきましたわ。ですから、私を妻にしたいと仰るのなら、貴方が取るべき正しい行動も分かるようになりました。まず、二人の奥様と離婚なさって、独り身になってから、改めて交際をお申し込み下さいませ」


 ちなみに、後日私が主催したお茶会に、カーリアル様の二人の奥様をお招きしてお話を伺ったのだけれど。


「彼は新しい女性と恋をするのが大好きなんです。そして、非常に滑らかな舌をお持ちです。意味はお分かりですか?」


「彼は常に多くの女性に慕われていないと生きていけないのです。妻は私達二人に収めていますが、メイドや町娘、方々に恋人がいるのですよ。私達二人が仲が良いのは、彼の問題を協力して乗り越えてきたからでしょうね」


 どこか諦めたような、でもそれも楽しんでいるような、大人びた二人の女性の話に、私は圧倒されたわ。彼女達はカーリアル様よりずっと大人だったわ。


 その後、カーリアル様から言い寄られても「奥様と一緒なら」と言うとすぐ引き下がる事がわかったので、彼のあしらい方もうまく学べたわ。


 豚愛好家の詐欺師に、研究中毒の聖職者、それに重度の八方美人の女好き。こうして私の男性遍歴はまたしてもろくでもない方々が名を連ね、私はただため息をつき、一人で生きてゆく覚悟を決めるしかないと悟ったの。


 だけれど、ある日、王宮に勇者を名乗る男性がやって来たの。


「おれは勇者サード・ミヤタラス。王国に平和をもたらすために参りました。神がおれに力を授けてくれたので、その力で、弱き者を救い、人々を苦しめる魔物を倒します。おれが勇者だと証明できた時には、ユーリリアン王女様と結婚させていただきたい」


 背が高く、地味な茶髪だけれど、不思議な青い瞳は鋭くて、勇者というよりもっと鋭い何かを抱えていそうな男性だったわ。別に魔王が現れた訳でもないから、何故自称勇者が現れたのかと王国は騒ぎになったけれど、彼の強さはどんどん明らかになってゆくの。


 ある時は傍若無人な山の主フェンリルを従え、ある時は呪われた屍竜を倒し魂を解放した。ある時は魔神崇拝していた暗黒教の祭司達の目論見を潰し、捕まっていたたくさんの乙女を助け出した。


「勇者サードよ。そなたは言葉通り、神に選ばれし勇者として相応しい実績を持っておる。王国はそなたを勇者と認め、我が娘、ユーリリアン王女との結婚を許そう」


 そして私は勇者サード様と幸せになりました。……というわけには行かなかったわ。勇者が誕生したからなのか、北で魔王が復活してしまい、サード様は魔王を倒す旅に出られることになったの。


「美しいユーリリアン王女様。貴方をこの腕で抱きしめる日を夢見ておりました。魔王が復活した今、奴を倒せるのはおれだけなので、魔王を倒してから、今度こそ、貴方をこの胸で抱きたい。それまで待っていていただけますか?」


 私は頷いたわ。男運のなさから散々な目に遭ってきたけれど、この誠実で強い勇者サード様が私と結婚してくださったら、今度こそ幸せになれる。強くて優しくて神に選ばれた勇者サード様。


 サード様が魔王を倒す旅に出られてから、私は必死に剣と魔法を学んだわ。もしサード様が苦しい戦いを強いられるのならば、お側でサード様をお助けしたい一心で、王国最強の騎士と、伝説の魔法使いの弟子を迎えて、ただひたすら鍛錬に励んだわ。


「王女様! 素晴らしい強さを身につけられましたな。これ程までに強くなれるとは、教えた私も鼻が高い! きっと、魔王を倒してお戻りになった勇者様が、驚かれますよ」


 騎士はそう言ってくれたけれど、ある日、私の耳に飛び込んできたのは、サード様が魔王に敗れてしまったという話。なんでも魔王の邪悪な魔法の前に、仲間達が次々と倒れ、サード様も倒されてしまったと……。


 私の貴重な未来の旦那様が! いても立ってもいれられなくなった私は、王宮の宝物庫からめぼしい物を拝借して、単身王国を飛び出したわ。


「お父様、お母様。

 私があの血を吐くような鍛錬に耐え、己を鍛えて来たのは、未来の旦那様、勇者サード様をお助けするためです。そして、サード様と共に戦っても恥ずかしくない位には強くなる事が出来ました。今からでもきっと間に合う筈と信じて、大切な人の元へ向かいます。こんな娘をお許しくださいーーーーユーリリアンより」


 置き手紙にはそう書いて置いてきたわ。私のそばを離れようとしない近衛騎士(レギ卿の教え子)を撒くのは本当に骨が折れたわ。

男運が無い王女様。美人で賢く、愛情深いのに、何故か上手くいきません。遂に結婚も諦めようかと思い始めて、帝王学、政治、それに剣と魔法まで身につけ始めました。

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