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偽物の母

「起きろ!着いたぞ」レオはケインの声でやっと目を覚ました。

「うおお!すげぇ…」馬車から降りると、メイド達がずらりと並びクラレンス達を出迎えていた。

「お帰りなさいませ。お父上がお待ちですよ」

クラレンスはシュバイツァー家の執事ハロルドに渋い顔を向けると

「わかったわかった!まずは少し休ませてくれ、長い間馬車に揺られて少々疲れた」

ハロルドはうなずき

「バスルームの準備が出来ております。おはいりになられますか?」とたずねた。

クラレンスはレオを指差して

「僕よりアイツを風呂に入れたほうがいいな。ずいぶん汚れている。ハロルド、コロシアムの戦士を丁重にもてなしてやってくれ。頼むぞ!後で父上にも引き合わせねばならん。それなりの支度をさせろ。いいな?」

ハロルドはキョトンとした顔でケインに視線を送った。

ケインは微かにうなずきハロルドの問いに答えた。

「さようですか。わかりました。わたくしはシュバイツァー家の執事、ハロルドでございます。失礼ですがお名前は?」

レオはハロルドの丁寧な態度に素直に応えた。

「俺はレオ!よろしくな、オッチャン」


「ホホッ!元気のよいぼっちゃんですね。さぁ、お疲れでしょう。お部屋でゆっくりおやすみください」

「俺、腹減ったよ。なんかくいもんあるかい?」

ハロルドは楽しげに

「はい、なんでもございますよ。何をご所望ですか?」

レオは飛び上がって喜び

「じゃあ…じゃあさ!ケーキとかある?」

「ございますとも。すぐにお持ちしましょう」


レオは満面の笑みでハロルドと階段をあがっていった。

「クラレンス様、カーチス様は外出しておられますが晩餐までにはおもどりになられます」

「フン相変わらずふらふらしてるようだな。部屋に戻るぞ!ローザンヌを呼んでおけ」

ケインは仕方なさそうに返事をした。

「…はい。ですがクラレンス様…ローザンヌは奴隷なのですよ。特別あつかいはあの者にとってもかえって禍になるということをお忘れないよう」

クラレンスはケインの言葉など聞いていない様子でスタスタと自分の居室に向かっていった。

ドラを開けると、バルコニーに腰掛けた美しい女が目に飛び込んできた。

クラレンスは急いで駆け寄り、その膝もとにしがみついた。

「母様、今戻ったよ!」


ローザンヌはクラレンスの頭を撫でてやり、優しく声をかけた。

「まぁ、どこに行っていたの?心配しましたよ」



「ごめんなさい。でも、もう心配ないよ。ちゃんと勤めは果たしてきたんだ。立派な戦士を見つけたよ!絶対優勝して母様に新しいお城をプレゼントするからね」

ローザンヌは愛しげにクラレンスを見詰め

「私は何もいりませんよ。それより、いつも私のそばにいてちょうだい。あなたの姿が見えないと母様は心配でたまらないわ」

クラレンスは小さくうなずいた。

「わかったよ。ごめんね母様」


「いい子ね。リン大好きよ」

クラレンスはその言葉を哀しい気持ちで聞いた。

その時、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「クラレンス様、ケインです」

クラレンスは慌ててローザンヌの膝から離れた。

「なんだ?入れ!」

「マッドコロシムのエントリー用紙です。…クラレンス様、本気であの少年を出すつもりですか?」

「もちろんだ!なんだ不満なのか?」

ケインは複雑な表情を浮かべた。

「正直申しまして私はあの子が本当に聖獸使いなのか疑問に思っています…そこでご相談なのですが、試しに誰かと試合させてみてはいかがでしょう?」

クラレンスはその提案に興味を示した。

「うん…いい考えだ。だが相手はどうする?」


「このケインにお任せください。私が探して参ります」

クラレンスはうなずいた。

「わかった。ではそうしてくれ」


その頃リン達はロイの競りに釘付けになっていた。

「ロイったら絶対引き下がらないつもりね!もう1000バレン超えたわよ。相手は貴族じゃない、勝てっこないわよ」

リンはロイが競り落とそうとしている男の姿は見えないが、そのオーラは感じとることが出来た。

なんで奴隷でいるんだろう?

そんな必要ないだろうに…かなりの剣の使い手のはず…この霊気は相当なものだ。

一体何人殺めてきたのやら…

リンはそら恐ろしくなり鳥肌がたってきた。

「テレサ…あいつは危険だよ。僕にはわかるんだ…とてもロイの手に負えるヤツじゃないよ」

テレサはリンの背中をバシンと叩き

「バカね!それぐらいのヤツでなきゃあマッドコロシムで勝てないわよ。ロイはバラカン公爵に売り付けるつもりでいるわ。だったらあれぐらいでなくちゃね!でもどうかしら?むこうも相当な金持ちらしいわよ。どっちが勝つか見物よね?」

リンはテレサの言葉に納得したのか黙りこんでしまった。

実はリンはレオのことを考えていたのだった。

レオ…また逢えるだろうか?

リンを競り落としたのはどうやら地方の貴族らしい。

また逢いたいな。レオ…どうかそれまで無事でいろよ!

リンは心の中でそう祈った。

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