女の魅力
太鼓が派手に打ち鳴らされ皆の視線が舞台に向けられる中、アビゲイルはアンジェラの言葉の意味を考えていた。
セオドアを助ける…と、いうことは兄貴に何か災いが降りかかるってことかよ?
「兄貴と俺達は一心同体だ!こりゃあほっとくわけにはいかねぇ」
立ち上がろうとするアビゲイルを女達が押し留めた。
「兄さんどこ行くのさ?ほらあれをごらんよ。あの子中々やるじゃないか」
舞台の上では髪飾りの鈴をシャラシャラ鳴らしならがら軽快に踊るアニータの姿があった。
髪を結い上げ、エキゾチックな民族衣装を纏い頬を赤らめて舞台の上を元気いっぱいに跳ね回る姿にアビゲイルは思わず拍手した。
「まるで水を得た魚だわね。まだ色気はないけどあと数年もしたらきっと男達をひざまずかせるようにはになるだろうよ」
アンジェラの太鼓判を貰ってアニータは顔を綻ばせた。
「じつは、いつも母さんの後ろでコッソリ踊ってたんです」
「ふうん…そうかい。素人にしちゃ上出来だよ。でも勘違いしないでおくれ私はあんたの踊りを誉めたわけじゃないんだから」
アニータの顔がみるみる曇っていった。
「…それはどういうことですか?」
アンジェラは厳しい顔でアニータを見据えた。
「たしかにあんたの踊りは見る者を楽しく陽気な気分にしてくれる。だが品がないんだよあれは舞姫じゃないよ、村の踊り子さ!」
アニータはあまりの言われように歯をくいしばってアンジェラを睨んだ。
「間違っちゃ困る!あんたが相手にするのは只の男じゃない、王様や貴族なんだ。そういう男達の周りにはただ美しい女や踊りが上手い女なんて掃いて捨てるほどいるんだよ」
「じゃあ…じゃあ私にどうしろっていうんです?誰にも負けないくらい優雅に踊れるようになればいいんですか?」
アンジェラはチッチッと口を鳴らした。
「ちっとも分かってないね。仕方ない、じゃあ教えてやるよ。知性さ!」
「…ちせい?」
「そう、知性!誰にも負けない知識だよ。女はね賢くなけりゃダメなんだ!」
アニータはどうもピンとこなくて首を傾げた。
アンジェラはその様子にため息をついた。
「あんたは中々みどころあるよ。一度見ただけの踊りを完璧に踊ってみせた。バカじゃないってことが分かったからね。私が誉めたのはそこなんだ」
「…はぁ…そうですか…で、私は一体どうすればいいんでしょう?」
アンジェラはニヤリと笑ってみせた。
「簡単なことさね。知識を詰め込めばいいのさ!」
そう言われてもどうすればいいのか分からないアニータはすっかり途方にくれてしまった。
「大丈夫さ、きっとナスターシャ様があんたを助けてくださるよ」
「ナスターシャさん…?」
「そうさ、きっとあんたの力になってくださる」
アニータはナスターシャがいるだろう奥の垂れ幕をじっと見つめた。




