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星の船Ⅲ

その日の夕食は久しぶりにリンも起きてきてみんなと一緒に食事をとった。


テレサは落ちつかない様子でセオドアの椅子をチラチラと見ながらパンを細かくちぎっている。


「お姉ちゃん、なにやってるの?それじゃあまるでお魚のエサだわ。いらないなら私にちょうだい!」


「うん…なんだか食欲無くて。どうぞ…」


アニータはテレサのちぎったパンをあっという間にたいらげた。


アビゲイルは呆れ顔でアニータのパンで膨れた頬をつついた。


「ア〜ア〜女らしさのかけらもないね!それじゃあルイザの前に出る前に試験で落っこちるぞ」


「えっ!?し、試験?そんなのあるの?」


「あったりまえだろ〜!月の城はその道じゃあ一流中の一流だぜ。それこそ月の城に入りたい女は星の数ほどいるんだ。ルイザだってそんなの全員面接できっこない…きっとルイザに会えるのは最終審査に残った女だけだぜ」


「そ…そんなぁ…」


一気にテンションの下がったアニータにレオが追い討ちをかけた。


「そういえば俺も月の城の噂聞いたことあるよ。しかも相当ヤバイ噂!歌に舞い、話術や教養とにかく一国の王様や大臣をメロメロにさせるくらいの魅力がなくちゃ最終試験には残れない。なぜなら!実のところ月の城はスパイ養成所だっていうんだ…」


「オイオイ、そりゃあ本当かよ?だとしたらルイザってヤツは相当なくわせもんだぜ!」

リンは眉をひそませた。


「それは本当なの?レオ」


「アハ、実のところ自信はないな。シュバイツァー家で厄介になってた時に侍女達が話してるのを聞いたんだ。今まですっかりそんなこと忘れてたし…」


その時、突然テレサが椅子から立ち上がった。


驚いたリンは思わずスプーンを取り落とし、カシャーンという金属音が皆の耳をつんざいた。


「真相を確かめましょう!もし、それが本当ならとてもアニータを預けるなんて出来ないわ!」


レオはリンのスプーンを拾ってやりながらテレサの興奮した目を見てヤレヤレやっとテレサらしくなった、とホッとため息をついた。

「じゃあお姉ちゃん、私達華舟に行けるのね!」


「ええそうよ、これからみんなで行ってみましょう」


「キャア!嬉しい!」

アニータはピョンピョン飛び上がって喜んでいる。


リンは穏やかに微笑んで、「じゃあ僕は留守番しているよ。後でどうだったか聞かせてね。アッそれから…くれぐれも失礼のないようにね!」とみんなを送り出した。


華舟はリン達の船に横付けされており、ひとまたぎであちら側に行くことができた。


水面に、華舟に吊るされた提灯の光が揺めき幻想的な雰囲気を醸し出している。

仄かな香の薫りが潮風に乗ってテレサの鼻をくすぐった。

ふいにセオドアの顔が浮かんで眉間にシワを寄せた。


「ナスターシャって誰なのよ…ああ、もう!イライラする」


そんなテレサの気持ちも知らず、アニータは目をキラキラさせて入口の豪華な蓮の刺繍の幕をそっとめくり、中を覗き込んだ。




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