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アニータの夢Ⅰ

呆気にとられているアビゲイルをよそに、その子は沢山の食べ物を服につめこんでサッサと逃げ出してしまった。


「アッ待てこのヤロー!」


少年は、まるで猿のようにスルスルと船のマストに登っていってしまった。



「や〜い、悔しかったらここまで来てみろ〜アッカンベーっだ!」


「アイツ!」



「どうしたアビゲイル、メシはまだか?」



「あれ見て下さいよ!密航ですよ、密航!」


セオドアはアビゲイルの指差す方向を仰ぎ見た。



「まだ子供じゃないか。オ〜イ危ないぞ、降りて来い!」



子供はズボン下ろし、お尻を突きだすとペンペン叩いてキャッキャとはしゃいでいる。



「どうします?」



「どうもこうも仕方なかろう。次に上陸するまで置いてやるしかないな…」



「オーイ!聞いたか?海に投げ出したりしないから安心して降りて来い!」



子供はちょっと躊躇う様子をみせていたが、しばらくすると甲板に降りてきた。



船内で寝ているリンの側についていたテレサも騒ぎに気付いて近付いてきた。



「ちょっと、リンが寝てるのよ。あんまり騒がないで!あら?何よこの子。どうしたの?」



「どうやらさっきの国で乗ってきちゃったみたいなんだ」



テレサはため息をついて「あんた名前は?歳はいくつなの?」と、しゃがんでその小さな手をとった。



「アニータ、9歳…」


「アニータってそりゃ女の名前じゃないか?それじゃ…お前、女!?」



アニータはコクリとうなずいた。



アニータはボサボサの髪にまるでボロ雑巾のような服を着ている。ふだんテレサを見ている彼らにはとてもアニータが女の子とは信じられなかった。



「あれ、みんな何やってるんだ?」



片手に地図を持ったレオが不審げにこちらに歩いてくる。



アニータは突然レオに飛びかかると、その地図をバッと奪いとった。



「なんだお前!それ返せよ!」



アニータはそれを広げると地図をじっと見つめ、ある島を指差した。



「ここ!ここに行きたい、連れて行って!」


みんなの視線は、その指の先に集まった。



「島ね…ここからずいぶん遠いみたいだけど…」



セオドアは渋い表情を浮かべウ〜ンと唸った。



「ここは月の城があるハンブラ島じゃないか…ここに一体何の用だ?」



「月の城ですって?私が売られるはずだったところだわ!」



レオは驚いた顔でアニータを見た。



「ルイザ様に私を買って下さいってお願いするつもりです」



みんなはアニータの言葉に目を丸くした。



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