表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/62

人で無しの国Ⅳ

屋敷の広間には果物や料理が並べられ、主人自慢のシェリー酒が振る舞われた。



「さぁさぁ精霊使い様、どうか召し上がって下さい。これは我々の歓迎の気持ちです!皆の衆も今日は精霊使い様がこの村にいらしためでたい日だ、さぁ共に祝おう!」



リンの杯にもテレサの杯にもシェリー酒がなみなみと注がれ皆立ち上がって杯を高々と掲げた。



「カンパーイ!」



リンは呑む真似だけにしたのだがテレサは全部呑み干してしまった。



「テレサまさか君呑んだりしてないよね?」


「や…やぁねぇリンったら、呑むふりだけよふりだけ!」



「ほんとかなぁ…」



リンは目が見えないもどかしさを感じながらもテレサの隣で固くなっていた。



「おや?どうしました精霊使い様、料理が口に合いませんか?」



村長はリンの隣に席を移した。



「い…いえそんな事は…」



「では、どうぞ召し上がって下さい。村の女達もあなた方を喜ばせようと腕をふるったようです。これは山で採れたブドウの果汁です甘くて美味ですよ」



そうまで言われて流石のリンも断りきれなかった。



「では少しだけ…」



甘い汁がリンの喉を心地よく流れ落ちた。



「う…旨い!」



村長は笑って杯に果汁を注いだ。



「そうでしょう?こんなに甘いブドウはヤナ谷にしかありませんからな」



「ヤナ谷?」



「ええ…深い森の中にある谷です。なかなか人が近付かないため、あの辺のブドウが旨いことはこの村の者しか知らないんですよ」



「そうなんですか…でも、どうして人が近付かないんです?もしかして熊とか出るんですか?」



「えっ、ええまぁ…兎に角今日はゆっくり休んで行って下さい。部屋の用意もさせていますから」



「いいえ、そんな僕達は船に帰ります。連れもおりますから」



村長は慌ててリンを引き留めた。



「とんでもありません!もう外は暗くなりました。そろそろホロン達が出てくる時間ですよ。夜は奴らの世界です。間違っても夜外に出てはいけませんよ、いいですね!」



「ハ、ハァ…ところでホロンって何ですか?さっき村の人が僕を見てホロンだって叫んだんです」



村長は頭を垂れて謝った。



「それは申し訳ありませんでした。ホロンとは流行り病の名です。高熱が出て、手や脚が腐ってもげてしまうのです。人に伝染する可能性があるためある場所に隔離されています。ですが人が歩き回らない夜は彼らの自由が認められています。実は…私の娘もあそこにいるのですよ。もう何年も姿を見ていませんが…哀れでなりません」



村長は涙ぐみながらそう話してくれた。



「そうでしたか…すみません余計な事を聞いてしまって」



「いいえ…実はその事で一つ頼みがあるんです」



テレサは二人の間に割り込んできた。



「ホ〜ラやっぱりね。何か魂胆がありそうだと思ったんだ。ただでこんなにご馳走してくれないわよね。でもね、言っておきますけどリンは神様じゃあないのよ。流行り病を治したり死んだ人を甦らせたりなんて出来ないんだからね!」



「テ、テレサ…君酔ってるね?仕方ないなぁもぅ。すみません今日は酒の席ですし明日ゆっくりとお伺いします。お先に部屋で休ませて貰ってもいいですか?」



「ええもちろんですとも。ユーリ来なさい!」



村長に呼ばれて来たのはリンと同じ年頃の少年だった。

村長は息子のユーリを二人に紹介し、部屋に案内するよう命じた。


「こっちです。ついて来て下さい!」



ユーリは憧れの精霊使いを目の前にして興奮したのか矢継ぎ早に質問を浴びせてきた。



「さっきの精霊はなんて言うんですか?凄かったなぁ。あっというまにヤシの木を吹き飛ばして!格好いいなぁ。どうしたら精霊使いになれるんですか?」


ヨロヨロの千鳥足でテレサはユーリにのしかかり、ケケケと笑った。



「あのねぇ…精霊使いっていうのは生まれながらに精霊使いなの!解る?つまんない事聞いてないでこっちの質問に答えなさい。あんたの親父さんの目的はな〜に?」



「そ…それは…」



困っている様子のユーリにリンは助け船を出した。



「テレサ、それは明日村長が話すって言ってたじゃないか」



「え〜?…グ…グゥ…スピッ…」



ユーリは苦笑いを浮かべ、テレサを背中におぶった。



「寝ちゃってますよ。さぁ着きました。この部屋です」



さすがに村長の家だけあって二人には広すぎるくらいのスペースがあった。



ユーリはテレサをベッドに寝かせ、布団をかけてやった。



「すごく可愛い人ですね。リン様の恋人ですか?」



「エエッ?ち…違うよ。一緒に旅してる仲間なんだ…」



「そうでしたか…すみません俺一言多いっていつも叱られてるんですよ。またやっちゃったな…エヘヘ。それじゃあお休みなさい」



「はい、おやすみなさい。今日は本当にありがとうございました」


ユーリはニッコリ笑うと部屋から出ていった。



「フゥ…恋人だって?なんだってそんな勘違い…僕みたいなお化け誰も好きになってなんてくれないよ…」



リンは隣で寝ているテレサの手をそっと握りしめた。



リンのテレサへの想いが悪い方向に…次回こう御期待!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ