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人でなしの国Ⅲ

リンは大きく一呼吸して空に向かって叫んだ。



「出でよ!砂の精霊ラシード!」



農夫は空を仰ぎ見て呟いた。



「…なんにも見えんじゃないか」



テレサは彼方向こうに渦巻く砂煙を指差した。



「あっちよ!」



「こ…こりゃあ大変だ!竜巻だ、竜巻が来るぞー!!」



農夫は慌てて辺りの家のドアを叩き、避難するよう声をかけた。



「ちょ、ちょっとオジサン!落ちついてよ。あんたが呼べって言ったんでしょ〜」



テレサは呆れた顔で農夫のシャツを引っ張った。



「こ、これが慌てないでいられるかってんだ!ああどうしたらいいんだ俺達の村がぁ…村が無くなっちまうよ」


とうとう泣き出してしまった農夫の顔をグイと上向かせ、竜巻の中から現れた翼を持つ獅子ラシードを見せてやった。



「リンはラシードの主人ですもの心配ないわよ」



この騒ぎで外に出てきた村人達はラシードを見て悲鳴を上げるや這いつくばって拝みだす有り様だ。



「我が主リンよ!何用か?」



「ラシード、ヤシの並木の実を全部落として欲しいんだ」



「…承知した!」



ラシードは白い翼を数回羽ばたかせた。

すると、竜巻が現れてあっというまにヤシの木をなぎ倒して吸い上げてしまった。

すると今度は固いヤシの実がまるで雨みたいにドサドサと空から降ってきた。

村人達はギャーギャー叫び声をあげながらぶつかったら大変とばかりに軒下に避難している。



ラシードは作業が済むと、サッサと竜巻と共に帰っていった。



「…リン、ちょっとやりすぎちゃったかも?」



あとかたも無くなったヤシの並木を見てテレサはゴクッと唾を飲み込んだ。



「えっ!?失敗したの?」



「ううん!そうじゃなくって…」



村人達はワラワラと出てきてリンとテレサを取り囲んだ。



「ええと…ごめんなさいね。ちょっと加減が難しかったみたいね…ハハハ…」



するとさっきの農夫がバッとリンの手をとった。



「この方は我々の救世主だ!神様ありがとうございます…ありがとうございます」



農民たちは皆目に涙を浮かべリンにとりすがってきた。



「ちょっとちょっと、どういうことよこれは!?」



テレサは必死でリンの前に立ち塞がった。



「みんな、精霊使い様が驚いておられる。こんなところではなんじゃ、どうぞワシの家においでくだされ。この土地の旨いものでも召し上がりながらワシらの話でも聞いていただきましょう」



白い髭を撫でながら、村長らしき人物は有無を言わせぬ勢いで二人を自分の屋敷へと案内した。



「テレサ…僕、嫌な予感がするよ。ここで絶対食べたり飲んだりしないでね。そんなことしたら断り難くなるから。絶対だよ!」



「もう、リンったら心配症ね。みんなあんたが精霊使いと知って歓迎してるだけよ」



リンはそれでもギュッとテレサの袖を握って抗議した。



「わ〜かったわよ〜!食べないし飲まない。それでいいんでしょ?」



リンはやっとその手を離すと、渋々屋敷の中に入って行った。




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