人でなしの国 Ⅰ
セオドアは船のイカリを降ろし、陸地に降りるための橋桁を渡した。
「ヒャッホー!見ろよ、この活気。俺にはやっぱり田舎より都会が合ってるぜ。
「レオ、初めての場所では何事も慎重にね!その国によって人の考え方も違うものだよ。いたずらになんにでも首を突っ込むのはやめてね。とりあえず自分からは剣を抜かないって約束してよ。セオドアさんもですよ!」
セオドアは首をすくめて苦笑いした。
「分かったよ。約束する!なぁレオ?」
「ええ?そんなの約束出来ないよ。甘いなリンは!やられる前にやらなきゃ幾つ命があっても足りないぜ」
渋い顔のリンを慰めるようにテレサが肩をポンポン叩いた。
「ああいうヤツは自分で体験しないと納得しないわよ。言うだけムダムダ!」
レオはすでに船から降りてみんなを手招きしている。
「早く来いよ〜!」
全員船から降りて改めて乗ってきた船を眺めた。
「立派な船ね〜!でもリンデンハイムのマークがあちこちにあってこれじゃあまるで私達グレンの配下だわ」
「ハハハ気にするなよ。船を離れちゃえばわかんないだろ?早く行こうぜ!」
「それもそうね…行きましょう」
海岸線を少し入るとまるでお祭りみたいにびっしりと露店商が軒を連ねていた。
「いらっしゃい!そこの坊や、このリチャの実はナラカンの特産品だ。一口食べてみな、舌がとろけるくらいに甘くて旨いよ!」
坊やと呼ばれてプリプリ怒りながらもレオは差し出されたリチャの実を口に放り込んだ。
「旨い!こんなに旨い果物初めてだぜ」
レオは指先に付いた赤い果汁を舐めながら叫んだ。
店の親父は得意げな表情で胸を叩いて自慢した。
「そうだろう?このリチャの実はうちの果樹園で採れたものだ。ほら、そっちの坊やもお食べ」
親父はリンにもリチャの実を渡そうと数粒つかんで差し出した。
「すみません、この子目が見えなくて…リンほら!」
レオが代わりに受け取り、リンに渡してやろうとした途端、店の親父の顔色が変わった。
「ま…まさか…あんた…そんな…た、大変だ!!」
ガタガタ震えながら恐怖で顔をひきつらせているのに気付いたセオドアは、本能でこれはヤバイ!と判断した。
「テレサ、どうやらまずいことになりそうだ。全力で走り抜けるぞ!リンの手を離すな。もし、はぐれたら船に行け。いいな?」
テレサは小さくうなずいてリンの手を握りしめた。
その瞬間、店の親父が大声で叫んだ。
「大変だ!ホロンが…ホロンがいたぞ!誰か、誰か捕まえてくれー!」
テレサは騒然とする広場を猛然と突っ走った。
異変に気付いた警備兵がワラワラと集まってきている。
セオドアとレオは兵たちの注意をひきつけるため店の品物をひっくり返しながら逃げていった。




