青龍を捕まえろ!Ⅳ
セオドアの指環が青く光り、水しぶきを振り撒きながらウンディーネが姿を現した。
相変わらずの美しさに皆息をのんでいる。
「お呼びか?ダーリン」
ウンディーネは早速セオドアにまとわりついた。
セオドアはコホンと咳払いして「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな。どうやらこの船に青龍がいるらしい。お前知っていたか?」と威厳をただして問いかけた。
「さぁ?私のペットはそこにいる玄武だけじゃが…確か青龍は前回の四神の戦いで朱雀に負け、主を探しに旅に出たときいたがのぅ」
リンは興味深げにうなずいた。
「聖獣の力は主の実力で大きくも小さくもなるんですよね?」
ウンディーネは忌々しくレオを睨んだ。
「その通り!見てみろこの玄武のみすぼらしい姿を…お前、ちっとも成長しとらんな〜」
レオはプウッと頬を膨らませフンッ!と鼻息を荒くした。
「それで?妾に何をして欲しいのだ?」
セオドアは真剣な顔でウンディーネを見つめた。
「これから俺達は青龍を捕まえに行く!それでお前にも力を貸して欲しいんだ。俺達を神殿のある船まで運んで欲しい。それから波を起こしてンデンハイムの船を拡散して欲しいんだ。この鉄壁の要塞を破るぞ!」
ウンディーネはホホホと笑い、「容易いこと!このウンディーネにおまかせあれ…さぁ、命令を下しておくれ小さな精霊使いよ」
「…えっ?僕ですか?」
ウンディーネは厳かに告げた。
「我々は精霊使いの命令にしか従わない。1の主はダーリンだからラグマダーンに恵みを与えている…だが、私に命令を下せるのはお前だけなのだよリン!」
「そ…そうでしたか」
ウンディーネはフワリとリンの前に佇んだ。
「さぁ、命令を!」
「水の精霊ウンディーネよ!我々を青龍の前に運んでくれ!」
リンの額の刻印が白く輝いた。
「御意!」
ウンディーネはリン達を大きなシャボン玉で包みこんだ。
シャボン玉はコロコロと転がりながら海の中を走って行き、青龍のいる船までくるとポンと弾んで甲板に出た。見張りの兵達にリン達の姿は見えていないらしく、のんびりと大きなあくびをしている。
シャボン玉は船内に入り、神殿の扉を通り抜けたところでパチンと弾けた。
「す…凄いわね。なんだか目が回っちゃったわ」
テレサはフラフラと床にしゃがみこんでしまった。
レオは神殿の天井に描かれている不思議な紋様に目を奪われている。
「なんだろうあれ?そういえば神殿の柱にもびっしりこの模様が彫られていたよな?」
リンはこの部屋にきてから妙な胸苦しさを感じていた。
思わず膝をつき、うずくまってしまった。
「リン!どうした?」
セオドアは青い顔のリンを抱え起こした。
「…す、すみません。ちょっと気分が悪くて…でも大丈夫です。この部屋には結界が張ってあるんだと思います。だから青龍も出られないんでしょうね」
セオドアは眉を寄せたて呟いた。
「結界だと…?」
リンは静かに首を縦に振った。
「オイ!それより肝心の青龍の姿が見えないぜ。一体どこに隠れてるんだ?」
必死でさがしまわったレオは、部屋の奥にもう一つ立派な扉があるのを見つけた。
「みんな来てくれ!きっとこの中だ」
耳を押し当てると、中から「ゴオオン!ガアアア!」と青龍の鳴き声らしき音が漏れてくる。
リンは勇気を振り絞りドアを肩で押し開けた。
ギイイィ…
恐怖で思わず目を閉じてしまったが、うっすらとまぶたを開けてみると、蓮の花が浮かぶ美しい池が目前に開けていた。
「ウワァ!なにこれ?船の中に池があるなんて不思議ね」
セオドアは池をのぞきこもうと首をのばしているテレサを押し留めた。
「安易に近づくな!青龍に襲われるぞ!」
テレサはそう言われてジリジリと後ずさりした。
「レオ!様子を見てきてよ」
「ええっ!俺かよ? 」
「あったりまえでしょ?仮にも聖獣使いじゃない!早く捕まえて来てよ」
そう言われて仕方なくレオは、そおっと池の端から水面をのぞきこんだ。
「何か見えた?」
テレサは目を輝かせてレオの返事を待っている。
「う〜ん…別に変わった様子はないなぁ…あれ?なんだ〜これ?」
いつの間にかレオの手の甲に小さなトカゲが張り付いていた。
レオがトカゲの尻尾をつまみあげると、その体からは信じられないようなうなり声が発せられた。
「ゴオオン!ギャオウー!」
トカゲが鳴くたびに部屋がガタガタ揺れるくらいの大音量だ。
「嘘…まさか…これ?」
みんな目を丸くしてその小さなトカゲを凝視した。




