表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/62

一夜の夢 その5

レオはセオドアが後をつけているとも知らず、一目散に走って行った。


ホールの隅で、待ちくたびれたのか椅子にもたれ掛かってあくびをしているテレサが見える。

「お〜いテレサ!」

テレサは椅子から飛び降りた。

「遅かったじゃないレオ!ローザンヌさんは?一緒じゃないの?」

「ああ、もう帰ったよ」

レオの言葉で膨らんでいた期待がみるみるうちに萎んでくるのをリンの表情から見てとれたレオは、慌てて言葉を繋いだ。

「リン、俺がちゃんと調べてみるよ。ローザンヌさんが奴隷としてシュバイツァー家に来る前の事を調べれば何かわかるはずだ。分かったらすぐに知らせるよ。だからそうがっかりするなよ」

リンは力無く微笑んで

「うん。焦らない事にするよ。希望が持てただけでも僕は本当に嬉しいんだ。ありがとうレオ、ローザンヌさんの事頼んだよ!」


「おお、任せておけって!もし何か分かったら玄武に手紙を届けさせるから心配するな」


「良かったわね。リン!レオはローザンヌさんのそばで暮らしているんだもの安心して任せておけばいいわ」


リンの表情がやっと明るくなったのを見て、レオは話題を変えた。

「さっきセオドア兄ちゃんと会ったぜ。俺についてこようとするからダメだって断った」テレサはそれを聞いて口を尖らせた。

「なんでよ!セオドアはこういう所苦手なんだから一緒に居てあげてもいいんじゃない?」



レオは解ってないなぁとばかりにチッチッと口を鳴らした。

「ダメだよ。これからリンデンハイムの内部に忍びこむっていうのに主役が一緒じゃ動きにくいだろ?」

なるほどね。とリンとテレサはうなずいた。

「どこから忍びこもうか?」

テレサ達は頭を寄せあって相談を始めた。

「外側から見た感じじゃあ、船と船はぴったり繋がれててすぐに隣の船に行けるようになってたぜ」


「でも一度甲板に上がってからでないと移動はできないわね」


「それぞれの船には見張りが立っているでしょ?あんまり無茶すると危険ですよ」

リンはなんとなく嫌な予感がしていた。


海の覇者として君臨するリンデンハイムは元をたどれば凶悪な海賊なのだ。

もし本気で怒らせれば子供だからと赦してくれるとは限らない。

「う〜ん。どうするかな。リン、何かいい知恵はないか?」「そうですね。じゃあ意表をついて一番遠い船に忍びこみましょう。そうすれば見張りも手薄なはずです。なんせ見渡せないほどの船団ですからね。まさか客が紛れているとは分からないと思いますよ」

テレサとレオは顔を見合わせた。

「ええっ!?そんな遠くまで一体どうやったら行けるんだよ」

リンはニッコリ笑ってレオの頭を指差した。

「玄武〜!?」

レオは思わず絶叫した。

「そうですよ。玄武の背中に乗せてもらいましょう」


「さすがはリンね!上手い作戦だわ。レオ、早速行きましょうよ。大人達もだいぶお酒がまわってきたみたいで注意力も散漫になってきているわ、今がチャンスよ!」

「リン、お前って普段大人しいくせにホント大胆なところあるよな〜。まったく驚かされるぜ」


リンはそんなレオにはお構い無く、法衣のような上衣を脱ぎ始めた。

「テレサ、悪いけどこの服動き難いんだ。ここに置いていくよ」

テレサはリンから服を受けとると、椅子の上に畳んだ。

「よし!準備OKだな。じゃあ、とりあえず甲板に出よう。目立たない場所で玄武を発進だ!」

甲板にあがると、途端に潮の香りが鼻をくすぐった。

海を渡る風は涼しくて上衣を脱いだリンの肌は、あっという間に湿気で濡れている。

さっきまでの人いきれで、いささか息苦しく感じていたリンは爽快な気分で甲板の手すりに掴まった。

「リン、テレサ!あそこに倉庫みたいなのがあるだろう?あの影で玄武に乗ろうぜ」


3人は倉庫の裏に身を潜め、レオは頭からそっと玄武を外した。

「玄武、オイ玄武ったら!起きろよ!」

玄武はグッスリ寝ていたのを起こされて、少し不機嫌そうな顔でレオをじとっと睨んでいる。

「怒るなよ〜。悪かったな起こしちまって!ちょっとお願いがあるんだ。俺達をあの一番遠い船まで連れて行ってくれないか?」

玄武は大きなあくびを一つすると、スルスルと頭を甲羅の中に引っ込めてしまった。

「玄武〜っ頼むよ〜!屋敷に戻ったらお前の大好きなチクワを5本…いや10本やるからさ!な?頼むよ〜」

玄武は仕方なさそうにゆっくり甲羅から顔を出した。

「ありがとう玄武!」テレサは玄武にチュッとキスをした。

玄武はデレ〜ッと嬉しそうにしている。

「玄武さん、すみません。お世話になります」

リンが丁寧に礼を言うと、玄武はみるみるうちに大きくなり3人を背に乗せると、ザブンと海に飛び込んだ。

水上を滑るように進んでいく玄武を眺めながら、セオドアは唸っていた。

「ウ〜ン中々やるな、あいつら。さて、俺はどうしたもんだか」

下のダンスホールからはまた賑やかに曲が流れ始めた。

セオドアは何か思い付いたのか、急いでダンスホールに降りて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ