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武術大会後編その2

セオドアが後ろを振り向くと、白い甲冑を身に付けたユーリがニヤリとこっちを見ていた。

セオドアはため息をついてその熱い視線から逃げると舞台から降りてきた。

ユーリの方に全く目もくれず、スタスタと控えの間に向かって歩いている。


「ちょっと!無視するつもり?私が怖いのね、卑怯者!」

セオドアはユーリに背を向けたまま答えた。

「ああ怖いね。そんな事を平気で口にする女は怖くてたまらんよ」

去っていくセオドアの背を見詰めながらユーリは小さくつぶやいた。

「平気じゃないわ…平気なわけないじゃないの!ルシンのバカ」

その様子を影から見ていたグレンは思わず

「可哀想にユーリ…」と眉を寄せた。

「次はルシンとユーリの対決か…さて、どうしたものか」


グレンは暫く考えていたが、答えを見つけたのか意を決した様子で審判団のところに歩いていった。

その頃ロイ達はセオドアが優勝した場合、手にはいる賞金をどう使うかウキウキしながら相談していた。

「ここまでくればセオドアの優勝は決まったも同然だ!なぁリン」興奮しているロイをたしなめるようにリンは

「まだ分かりませんよ。なんせ決勝ですから相手も相当な腕でしょう?」と言ったがロイは全く耳を貸さず、今度はテレサに聞いている。

「テレサ、どうだ?旨い物でも食いに行くか」

「そうねぇ…そのお金を元手にまた奴隷を買えばいいじゃない?もちろん私達みたいに見込みのありそうな子でなくちゃダメよ。そうすればロイはもっとお金を増やせるし、私達も旅が楽しくなって一石二鳥だわ。そう思わない?」

ロイはすっかり感心して

「テレサはしっかり者だなぁ。よし!そうするか、なぁリン?」と、隣のリンの肩を抱いてご機嫌だ。

ロイさんたらもうセオドアさんが勝つと決めてかかってるんだから…

僕はなんだか嫌な予感がするな。

リンの心配をよそに、舞台上では決勝戦の準備が整えられていた。

いよいよ決勝戦とあって会場は異様な盛り上がりを見せている。夕闇迫る空には花火が何発も打ち上がりその度に観客から歓声が上がった。

舞台上に上がったセオドアはクリスティーナと名を変えて出場しているユーリの登場を待った。

ところがユーリはなかなか姿をあらわさない。

どうしたユーリ?

なぜ来ない…


その時、一人の男が舞台にひらりと上がってきた。

セオドアはその男の不敵な笑みに見覚えがあった。

「ユーリはどうした?フィアンセ殿」

「フフ…なぜ僕が彼女のフィアンセだと?」グレンの言葉にセオドアはニコリと笑った。

「そりゃあ気付くさ。さっき上からスゲェ怖い顔で俺を睨んでたからな。だがそれはお門違いってもんだぜ。俺はユーリの結婚を喜んでる。可愛い妹同然なんだ。ユーリをよろしく頼む!あいつは中々頑固だが、誰よりも優しい女なんだ」

グレンはやれやれといった顔で

「ああ、その通りとても頑固でね。どうしても君を諦めきれないようだ。しかし、僕らは結婚するよ。これは国と国との結婚なんだ。お互い恋愛は自由だが伴侶は一人だけだ。彼女の国は一妻多夫が認められてるようだが、僕の国では残念ながらそんな制度はないのでね。彼女には悪いが君を夫の一人に認めるわけにはいかない」

グレンは舞台の袖に目を向けた。

「そういう訳だ。すまないなユーリ。だから僕が君の代わりに彼と戦う事にするよ。これは最高の余興だろ?見ろ!観客達も大喜びだ」

ユーリは後ろ手に縛られながらも声を張り上げた。

「グレン!酷いじゃない…私、私この日をどれだけ待ったか」

ユーリは目に涙を溜めてガックリとその場にうずくまった。

セオドアはそんなユーリを見たのは初めてでさすがに胸が傷んだ。

「…仕方ねぇな。じゃあさ、もしも俺が勝ったらユーリの恋人くらいには認めて貰えねぇかな?」

その言葉にユーリの顔はみるみるうちに生気を取り戻した。 グレンは苦笑いを浮かべて

「いいだろう認めるよ。その代わりに僕が勝ったらもうユーリには関わらないでもらいたい」

と宣言した。

「いいぜ、約束だ!」ユーリは二人の間で取り交わされる約束を複雑な面持ちで聞いていた。

とうとう試合開始を告げる銅鑼が周りの歓声を打ち消すがごとく鳴り響く。


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