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武術大会 後編その1

セオドアはまずは試合に集中しなければと自分に言い聞かせた。

ユーリ…この試合に俺が勝てば次は決勝であたるはずだ。

あの約束…か。もうお互い別々の道を歩み始めた。もう無効だよユーリ、お前もわかっているはずだ…。


セオドアは剣を布で拭きながら精神統一をはかろうと只ひたすらに剣の耀きを見つめていた。

その時、背後から異様な臭いが漂ってきてセオドアは思わず鼻をつまんだ。

「なんだ?この魚の腐ったような臭いは!」セオドアは思わず立ち上がって周りを見渡した。

すると風上に、ひどく美しい若い男と異様に背の小さな男がこちらをじっと見ているのに気がついた。

「あんたがセオドアさんかね?」


「そうだが…あんたは誰だ?」

セオドアはあまりの臭さに目がしみて、涙が浮かんできた。

小さな男は奇妙なくらい目と目が離れていてまるでナマズを思い起こされる容貌だった。

そのナマズ男はニヤニヤしながら

「そうか。あんたがね〜。こりゃあイイ男じゃないか!欲しい、ぜひ欲しい。俺のコレクションにぴったりだ」と、嬉しそうにしている。

「俺はあんたの対戦相手のロロだ。こっちは相棒のダニエル。試合前に挨拶に来たんだ。よろしくな。俺はあんたが気に入った!だから傷つけんように戦う事にする」

セオドアはイライラしながら

「何をごちゃごちゃ言ってるんだか知らねぇが、こう臭くちゃたまったもんじゃねぇぜ!」と鼻が紅くなるのも構わず、さらにギュッとつまんだ。

「フヒャヒャヒャ、楽しみ楽しみ!」

ロロはウキウキした様子でダニエルを連れて戻っていった。

「ああ、また変なのに当たっちまったな。せっかく研いた剣に臭いが移りそうだな。よし!今回は短期決戦でいこう」

舞台に上がったセオドアをじっと見つめるグレンの手には銀の短刀が何本も光っていた。どれも銀製で柄には龍の紋様が施してあり、目の部分はアメジストで出来ている大層手のこんだ物だ。

「頑張って勝ってくれたまえよ!でなきゃ僕の出番がなくなるからな」

セオドアは舞台に上がり、観覧席を見た。しかしユーリの姿はない。

代わりに眼帯を着けた男がこちらに冷たい視線を送っているのが見えた。

あれがユーリのフィアンセか?

セオドアとグレンの視線は一瞬火花を散らしたが、直ぐにグレンは立ち上がりどこかに行ってしまった。

あの目…ユーリのヤツ何かしでかす気か?

セオドアは舞台に上がってきたロロとダニエルに視線を移した。

「オイ!審判、なんでそっちは二人なんだ?そんなのありかよ!」セオドアの大声が会場に響き渡り、観衆たちからもブーイングが聞こえてくる。

「これは武器でからくり人間です。ちゃんと武器の審査も受けて合格しとりますよ」

ロロは平然としている。

「嘘だというならどうぞ、こっちに来て確かめて下さいよ」

審査はセオドアに許可を出したので遠慮なく、ダニエルに近づいて行った。

「触ってもいいか?」

「もちろんですよ。よく見てやってください。美しいでしょう?まるで芸術品だ!」

セオドアはダニエルの頬に手を触れた。

「こ、これは人間の皮膚だ!」

ロロはニンマリと笑い

「そうです、外側は人間ですよ。しかし中身は私が造った機械なんです。綺麗に中身だけくりぬくのは中々大変な作業でしたよ」と、平然としている。

まるで人間の剥製じゃないか!コイツ完全に狂ってる!

セオドアは一気に背筋が寒くなった。

「君もういいかね?」審判の声でセオドアはハッと我に返った。

「は、はい!すみませんでした」


審判は右手をあげ、試合開始の銅鑼が鳴った。

セオドアは不気味にたたずむダニエルに斬りかかっていった。

「この化け物め!俺が成仏させてやる」

セオドアは様子を見るため、まずは正面から斬りこんでいった。

キィィン!!

と金属同士がかち合う音がして、セオドアはギョッとした。

ダニエルは金属で出来た腕でセオドアの剣を防いだのだ。

「チッ!びくともしねぇ」

ダニエルは腕を真っ直ぐに伸ばしセオドアを指差した。

ずっと無表情だった顔が初めて笑顔を浮かべたその瞬間、指先から毒針が発射された。

セオドアは素早くかわしたが、次々に毒針は発射されてくる。

クソッよく出来たお人形さんだな!

ロロのヤツ、楽しそうな顔しやがって!

じゃあそろそろ本気出して行きますか!

セオドアは目にもとまらぬスピードで毒針を剣でなぎはらった。 その毒針はロロに向けて真っ直ぐに飛んで行った。

「ギェェェ〜!」

ロロの頭には毒針がビッチリ突き刺さっている。

舞台袖で見ていたレオは腹を抱えて笑っている。

「アハハハまるでサボテンじゃねぇか」

痛くて悶えているロロの滑稽な姿に会場は笑いの渦に包まれた。

ロロのジタバタする姿をみた審判が、試合続行不能とみなしセオドアの勝ちを宣言した。

「なんだ、もう終わり?」

すっかり武装を固めたユーリはつまらなそうに舞台を眺めた。

もっとルシンの戦う姿を見ていたかったのに!

ユーリは舞台のセオドアに向かって叫んだ。

「ルシン、私はあの約束忘れてないわよ!私が勝ったらあなたは私の夫になるの!婚約者なんて関係ないわ。なんせ女王は3人の夫を持てるんですもの」

セオドアはぎょっとして後ろを振り返った。

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