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死者の街 前編

女の子の気持ちは良く分からないや。

リンはテレサがどうして泣くのか不思議だった。

緊張が解けてホッとしたのかな?

「テレサもう大丈夫だよ。さぁ宿に帰ってゆっくり休もう」

テレサは泣き腫らした目を擦りながらコックリとうなずいた。

「セオドアさんはどうします?」

リンの問いかけにセオドアは即答で

「俺も一緒に帰るよ」と答えた。

「今晩くらいライラさんと過ごされたらどうですか?久しぶりの再会なんでしょう?」

ライラは笑顔でリンの手をとった。

ライラさん…なんていい香りなんだろう。

リンは思わず顔が赤らんでしまった。

「リン様、兄を頼みます。勇敢ですが向こう見ずなところがあってちょっと心配です。兄が暴走しそうになったらリン様が叱ってくださいね。兄はああ見えてとてもあなたを尊敬しています。ふつつかな兄ですがこれからもよろしくお願いいたします」

リンは高鳴る胸を抑え

「はい…僕でお役に立つのなら」と答えた。ライラは自分の首からペンダントを外し、リンの首にかけた。

「これは?」


「魔除けの御守りですわ。旅が無事に進みますように…それから、また逢えますように」

「えっ?」


「な、なんでもありませんわ。リン様、わたくしの事忘れないでいてくださいませね」

「もちろんですよ!僕も…またライラさんと逢える事を祈ってます」


「リン様…」


そんな二人の様子を見てテレサが割って入ってきた。

「リン!何してるの?早く帰りましょう」

リンは、テレサがまた癇癪を起こさないうちに早々とこの場を引き揚げることにした。

帰り道は誰も一言も喋らなかった。

3人はそれぞれの想いを抱えながら爽やかな夜風に吹かれ家路についた。


「おい!起きろよ」

ロイは死んだように爆睡している3人をゆすってみたが全く反応しない。

「まったく、俺がいないのをいいことに遊び呆けていたな。ほら起きろ!出発の準備だ」

まずはリンが目を覚まし、二人の布団を片手で剥いだ。

「どうやら朝みたいですよ。美味しいご飯が待ってます。早く起きないと僕がみんな食べちゃいますからね!」その言葉に二人ともガバリッと跳ね起きた。

「なに!飯か?」

「ご飯〜お腹空いたわ〜!」

ロイはガハハと笑い

「なるほど!そうやって起こせばいいのか。さすがだなリン!」と感心しきりだ。


朝食を囲みながらロイは地図を取りだし、次の街を指し示した。

「次はここ、死者の街だ」


「死者の街〜!なんだか気味の悪い名前ね」テレサは地図をじっとみた。

「どうみてもそこを通過せぬわけにはいかないようだな。野宿するなら別だが、どうするテレサ?」

セオドアは面白そうにテレサの反応を伺っている。

「野宿は嫌よ〜!分かったわ。行けばいいんでしょ、行けば」

ロイは立ち上がり

「そうと決まれば出発だ。砂漠の旅もあと少しだ、砂漠を越せば旅も楽しくなるさ」と皆に声をかけた。

「そう願いたいわね」テレサは長い髪をまとめ、砂よけのフードを巻き付けた。


「待ってろよラグマダーン!逞しくなって俺が帰る日まで」

だんだん遠ざかるオアシスを振り返り、セオドアは感無量の気分に浸っていた。

「待ってろよウンディーネの間違いじゃないの?」

テレサが拗ねた顔でボソリと言った言葉にリンはハッとした。

もしかして…テレサ…きみ…いや、まさかね。


リンは苦笑いしてダンの長い首を撫でてやった。

風が砂漠の風景を目まぐるしく変えていく。

「風がすごくて息もつけないじゃないの苦しいわリン!なんとかならない?ラシードにどうにかするよう命令してよ」

リンは

「えっ?」と驚いた。

「僕に出来るかな?」テレサは砂が入らないよう薄く目を開けて

「やってみなくちゃわからないでしょ?お願いよ、なんとかして!」

リンは仕方なく胸の印に右手を当てた。

「出でよ、砂の精霊ラシード!」

「……あれ?やっぱりダメかな?」

ゴ…ゴゴゴゴゴ!

「キャアア!あれ、あれ何?」

それは巨大な竜巻であった。

砂煙をたてながら物凄い勢いでこちらに向かってくる。

一行は逃げようもなくその場に立ち竦んだその時、竜巻が割れてラシードが現れた。

「我が主リンよ!ラシード只今参りました」リンは思わず全身に震えが走った。

「ラ、ラシード!僕らに砂がかからないで快適な旅が出来るようはからって貰えませんか?こう風が強くては前に進めません」

ラシードは大きな翼を羽ばたかせ

「承知した!」と叫ぶと、また竜巻と共に去って行った。

「す、凄い迫力だったわね〜!あ…あら?ねぇ見てみんな!砂が、砂が私達を避けていくわ」

リン達の周りだけはまるで透明のバリヤーが張り巡らされたように完全に風が止んでいた。

「こんなことならもっと早くリンに頼めばよかったぜ!」

セオドアはすっかりはしゃいでいる。

「リンよ!まったくお前さんときたら…大した子供だ」


ロイは森で見つけた時の絶望にうちひしがれていたリンを思い出していた。

生きるってやっぱり素敵なことだと思わないか?リンよ…


リンは初めて精霊使いとして生まれたことを誇らしく思った。

僕…やっぱり精霊使いとして生まれてこれて良かった。


もっと力をつけて人の役に立てるよう頑張ろう。

「リン見て!街だわ。あれが死者の街でしょ?」

街には家が建ち並び、宿屋の看板も見える。

「どうやらそうらしいね。でもなんだかやけに静かだな」

リンは目が見えないぶん耳は人一倍敏感だ。

「どうしてかな?人の気配もあまりしないね」


ラクダの手綱を柱に結びつけると、ロイはみんなにここで少し待つよう言って宿屋の中に入って行った。

テレサはキョロキョロあたりを見回し、何かを見つけたらしく嬉しそうにピョンピョンとび跳ねている。

「ねぇセオドア!あそこに用品店があるわ。待ってる間、ちょっとだけのぞいてきていいでしょ?」

セオドアはめんどくさそうに

「ダメだ!ここで待ってろと言ったろう?」

とテレサをたしなめた。

「ちょっとだけよ。リンも一緒なら心配ないでしょ?」

リンは仕方なさそうに

「じゃあちょっとだけ見せてきますよ。すぐ戻ります」

とセオドアにことわった。

「リンが一緒ならまぁ大丈夫だろう。すぐに戻れよ!」

「ハ〜イ!」

テレサはリンを連れて用品店のドアを開けた。

店のカウンターには若い女が立っていた。

「すみません。リボンを見せてください」

テレサが声をかけたが店員らしき女は何も答えない。

「ちょっと聞いてるの?」

テレサがおんなの袖を引っ張ったとたんにその女はバッタリと倒れてしまった。

「キャアアア!一体どうしたっていうの?」身動き一つしない女に二人は恐る恐る近寄って行った。

女は倒れたまま起き上がる気配はない。

「だ、大丈夫ですか?」

リンが声をかけてもピクリとも動かなかった。

テレサは脈があるか確かめようと女の手首を掴んだ。

「キャッ何これ、人形だわ!」

テレサは不気味に転がる等身大の人形に何か異様なものを感じて急いでリンと店を出た。

慌てた様子で駆け戻ってきた二人に、セオドアは何があったのかたずねた。

「どうした?おまえら顔色悪いぞ」

テレサはブンブン首をふり

「なんでもないわ。さっきの店、誰も居なかったの。気味の悪い人形が店番してた」

「?なんだそりゃあ。まぁいいさ、もうすぐロイも戻ってくる。ウロウロしないでそこでじっとしてろ」

どうやら宿屋が見つかったらしくロイがいそいそとこちらに戻ってきた。

「さあ、こっちだ。ラクダはあっちに繋いでくれ」

一行は部屋に着くと早速荷ほどきして、テーブルに用意してあった茶で喉を潤した。

「リンのおかげで随分早く着くことができた。夕飯まで時間があるな。俺は酒場で一杯ひっかけてくるからお前らもあそんでくるといい…と言ってもここじゃあ遊ぶ場所もないか」

酒好きのロイは早く酒場に行きたくてウズウズしていたようだ。

「セオドア、こいつらにこの街のルールを教えておいてくれ」

セオドアはあくびしながら

「了解!」と手を振った。

「じゃあくれぐれも頼むぞ」

リンはロイが出ていくと早速そのルールとやらをセオドアにたずねた。

「まずはなぜここが死者の街と呼ばれているのか教えてやる。この街はな、街全体が墓場なのさ」


「墓場?」


「そうだ。この街の住人は10人にも満たないと思う。宿屋が一件、酒場…というか料理屋が一件。あとは番人が数人住んでるだけだからな」

リンは先ほどの用品店での出来事をセオドアに話した。

テレサは眉根を寄せて

「まるで人間みたいに良くできた人形だったわ。あれって一体なんなの?」

「ああ、その人形はな死んだ人間そっくりに作ってあるんだ。この先の街に生者の街がある。そこで死んだ人間は、親類がそっくりの人形を作らせてここに持ってくるのさ」

テレサは理解できないとばかりにため息を漏らした。

「そんなことしてなんになるのかしらね?」リンはなんだかその気持ちが解るような気がした。

「生きてる人達は、亡くなった人がこの街で暮らしてるって信じることで救われてるのかな…その気持ち、僕にはなんとなくわかるよ」

3人はなんだかしんみりした気分でその夜を過ごした。

ベッドに入ってからもリンな中々寝つかれないでいた。

久しぶりに死んだ父さんの顔が浮かぶよ…父さん、守ってやれなくてごめんなさい。母さんとカイは僕がきっと見つけ出してみせるから!

寝返りをうつリンを見てテレサが声をかけてきた。

「リン…眠れないの?」


「ああ、テレサすまない起こしちゃったかな?」

「ううん、いいのよ。私もなんだか眠れないの。この街のせいかしら…なんだか死んだ母さんの事を思いだしちゃって」

リンはテレサの過去について今まで触れないようにしていたが、どうやらテレサはリンに話を聞いて貰いたい様子なのを察して、思い切ってたずねてみる事にした。

「テレサのお母さんってどんな人だったの?きっと凄い美人なんだろうね。僕はテレサを見たことないけど、テレサを見た人はみんな美人だと褒めてるもんね」

テレサはクスクス笑った。

「そうよ。私は母さん似なの。国でも評判の美人だったわ。父さんはそんな母さんをお嫁さんに出来て、とっても自慢だったみたい。でも母さんがそんな美人でなければもっと長生きできたかもしれないわ」

「何があったの?」

テレサの目から涙が溢れた。

「……グスッ」


「泣いてるの?ごめん、余計なこと聞いちゃったね…」

テレサは鼻を啜りながら

「いいのよ。今日は聞いてもらいたい気分なの。母さんはね、王様に殺されたの」

リンは意外な答えに驚きを隠せなかった。

「王様にだって!?一体なぜ?」


「母さんは王宮で働いていたの。洗濯番だったんだけど…どこで見かけたのか母さんをみそめて、側室に上がるよう命令してきたわ」

「なんだって?だってその時にはもう結婚して君という娘までいたんだろう?」

テレサはコクリとうなずいた。

「ええそうよ、それなのに無理やり父からとりあげたの。母は誇り高い人だった。王宮から迎えが来る朝、家の裏の谷から飛びおりたのよ」

リンはかける言葉が見つからなかった。

「いいのよリン…同情は要らないわ。こんな世の中ですものありふれた話よ。さあ、もう寝ましょう…明日出発ですもの体を休めておかなくちゃ」

リンは複雑な心境のままテレサにおやすみの挨拶を済ませ瞳を閉じた。

テレサは話してスッキリしたのかスヤスヤと寝息を立てている。

リンもやっとウトウト睡魔がおそってきたその時、窓の方からガタッギイィーと物音が聞こえてきた。

リンは隣のベッドのセオドアのシーツをそっと引っ張った。

セオドアは既に侵入者に気付いていたらしくその手にはしっかりと剣を握りしめていた。ミシッミシッと床を踏みしめる音が近づいてくる。

リンの額から冷たい汗が噴き出してきた。

侵入者の手がリンの首筋をとらえたその瞬間、セオドアが布団をはね除け侵入者めがけて剣をふりおろした。

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