秘められた恋心
ウンディーネは泉の水をすくいとり、フッと息を吹きかけた。
すると水は指輪に形を変えた。
「さあ、これを受けとれルシン。私との婚約の証だ」
指輪はウンディーネの手からフワフワと宙を飛び、ルシンの指にすっぽりと収まった。
「もし、私の助けが欲しい時はその指輪に口づけして私の名を呼ぶがいい」
セオドアはげんなりとした顔で
「ああ…俺の青春も終わったなぁ」とつぶやいた。
「なんだ、何か言ったか?」
「いやなんでもねぇよ!さて、用事は済んだな。俺たちは引き揚げようぜ」
セオドアはアルマの方に向き直った。
「アルマ!どうやらお互い誤解があったようだな。今までのことは謝る、すまなった。ライラを嫁に出そうとしたのは赦せないが、ことの元凶は親父のせいだ。俺の母にもあんたにも苦労させちまった。だから誓うぜ!俺は親父のようにはならない。ウンディーネだけが俺の妻だ」ウンディーネは嬉しそうにセオドアに抱きつきキスをした。
「愛しのダーリンよくぞ言ったな!それでこそ私のえらんだ男だ」
セオドアの脳裏にユーリの燃えるような瞳が浮かんだ。
ユーリすまない!どうやら約束は果たせそうもないぜ…
まだ覚えているか?あの約束を…
「ルシン!今誰か違う女のことを考えておったろう?」
な、なんつう勘の良さ!さすが女神。お見通しかよ〜
セオドアは大きくため息をついた。
「オイオイ、ヤキモチもほどほどが可愛いぜ。今誓ったばかりで浮気もないだろうが!」ウンディーネは目を細めセオドアに絡みついている。
「そうじゃな。その指輪は浮気防止も兼ねておるし…心配なかろう」
ウンディーネはボソリとそう言うと、リンの方に近付き服を破いた。
「お、おい!何しやがる」
セオドアが叫んだが、リンは微動だにせずされるがままになっていた。
「これは…ラシードの印だわ。なるほど、リンとやらあなたなかなかやるじゃないの。私は主は持たない主義なの。今までも夫以外に遣えたことはないわ」
リンはニッコリ笑った。
「ウンディーネ、僕はあなたを従えようとは思っていませんよ」
「あら、ずいぶんと欲のない精霊使いだこと。でもそこが気にいったわ。1の主は夫だけれどあなたを2の主にしてあげる。困ったことがあったら呼びなさい。暇だったら行ってあげてもいいわ」リンはクスリと笑った。
「ウンディーネ、あなたは僕をダシにしてセオドアに会いにくるつもりですね」
「あら、そ…そんなことないわよ〜。この子ったらおませさんね!」
「理由はどうあれ助かります!頼りにしてますよウンディーネ」
ウンディーネはうなずいてリンの額に人差し指を当てた。
するとリンの額には水を象った印が現れた。
「私を呼ぶことが許された証をのこしたわ。ルシンを頼んだわよリン!」
リンは深くうなずいた。
セオドアは泉のほとりでじっとしていたライラに近づいた。
「ライラ…もう大丈夫だ。ラグマダーンは生き返ったぞ。お前はもう自由だ!」
ライラはホウッと息を吐いた。
「兄様…これで良かったのですか?ユーリ様のことは…」
「言うな、ライラ!どっちにしろ結ばれる相手ではなかったさ」
「兄様…」
セオドアはリンにライラを紹介した。
「これが噂のリンだ!」
リンはモジモジと照れくさそうにしている。
「リンです。どうぞよろしく」
ライラはリンのその様子を見てなんだか可愛らしく思えた。
「兄から凄い精霊使いだと聞いています。噂にたがわずやり手ですのね。見ていて感心しました」
リンは更に居心地悪そうにソワソワしている。
テレサはそんなリンの前に立ち塞がると眉間にシワを寄せて
「リンはこの通り恥ずかしがりやですの、失礼します!」と言い放ちグイグイとリンを引っ張っていった。
「なんだよテレサ、一体どうしたんだい?」テレサはヒックヒックと泣いているではないか。
「テレサ…」
リンが途方に暮れているとテレサはリンにしがみついてきた。
「わからない…わからないの!自分の気持ちが…リン、リン側にいて」
「テレサ…」
リンは泣きじゃくるテレサの頭を優しく撫で続けた。




