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初の討伐依頼受けちゃいました その1

「ここ……どこ?」


 目覚めたら、私の部屋じゃなかった。


『何、寝ぼけてるのさ。ここはギンの家だよ』


 コウに言われて思い出した。

 昨日はギンの家に泊まったんだった。


 昨日の疲れも全く残ってない。

 ぐっすり寝れて良かった。なんてったって今日は念願の討伐依頼を受ける日だ。


 ガチャッと扉が開く音がして入り口を見たら、ギンとマスターが入ってきた。


「おはようリリア。昨日はご飯食べずに寝ちゃうんだもん。お腹空いたんじゃない? ご飯できたから食べてギルドに行こうか」


 ギンの言葉で空腹を思い出したのか、腹の虫がぐーっと大きな音て鳴く。


「リリアちゃん。先に謝っておくけど、ごめんね」


「何がですか?」


「ギルドに行けば分かるわ」


 マスターはそれっきり何も話してくれなかった。

 ギン達の後に着いてリビングに入ると、テーブルには三人分のパンとスープがあった。

 コウは精霊で物を食べない。


 ギンとマスターは隣り合わせで座ってるから、私はギンの目の前に座る。

 手を合わせてパンを食べる。空腹がいいスパイスになったのか普通のパンだけど、とっても美味しく感じた。

 勢いよく食べてたせいか、パンが喉に詰まった。

 マスターがスープの入ったカップを渡してくれる。私は素早く受け取って流し込む。


「そんなに急いで食べなくてもパンは逃げないわよ」


 マスターはおかわりを用意してくれた。


「ありがとうございます」


『また喉につまらせないでよ』


「言われなくても分かってるよ」


「ふふっ親子みたいね」


 マスターに笑われちゃった。

 コウのせいだ。


 照れくさくなって俯きがちにスープを一口。


「美味しいですね。これ。マスターが作ったんですか?」


「そうよ。口に合ったなら良かった」



「そういえば、ギンは吸血鬼なのにパンを食べるんだね」


 ギンはパンを小さくちぎって食べてた。長くてサラサラの銀髪も相まってどこかのお嬢様の様に見える。


「吸血鬼だからって血以外で食事が出来ないって訳じゃないから。そもそも吸血鬼は血を吸わなくても生きていけるし」


「えっ!? じゃあ何で血を吸うの?」


「強くなる為かなぁ……。吸血鬼のバカみたいな回復力は、血を吸うのと一緒に生命力を吸ってるからなんだよ」


 自分でバカみたいって……。


「あとは私だけだけど、血を吸った相手の能力もコピー出来るし」


「そんなことも出来るんだ」


「これでも最強の吸血鬼だからね」



 私達はご飯を食べ終わると、早速討伐依頼を受ける為にギルドへ向かった。


 ミラを探すと、いつもの場所に座っていた……んだけど、とっても笑顔だった。

 仕事中は愛想よく見せる為に笑顔なんだけど、その笑顔とは違った感じ。


 こんな顔をしてた時が実は前に一回あった。


 勝手に魔物討伐に行ってケガしたのがバレたときだ。

 あの時は機嫌を直してもらうのに三日かかった。

 今回も何故かは分かんないけど、怒ってるらしい。


「どうやらミラちゃんの機嫌はまだ直っていないようね」


「マスターは何か知ってるんですか?」


「昨日、リリアちゃんが泊まること言ったら、ああなっちゃって……」


「さっきのギルドに行けば分かるってこれのことだったんですか!」


 怒ってるミラに話しかけるのは勇気がいるけど、話しかけなかったら依頼も受けられないから、明るめの声でミラに話しかける。


「ミラ! パーティーを組んだから、何か討伐依頼ちょうだい!」


「へえー……パーティーなんていつの間に組んだんですか?」


「昨日だよ」


「そうですか」


 ミラの言葉が刺々しい。

 これは相当怒ってるな……。


「何か怒ってる?」


「別にそんなことないです」


「やっぱ怒ってるじゃん」


「怒ってないです。そちらの彼女が?」


 ミラがギンに視線を向ける。


「シーナです。よろしく」


 ギンが偽名を伝える。ギンはとても有名で、バレると面倒なことになるから、隠すことになった。


 特徴的だった銀髪赤目も緑髪緑目に変わってる。


「リリアさんの担当しているミラです。ちなみに、シーナさんのランクは何ですか?」

「私? 私はそもそも冒険者じゃないから、ランクはないよ。でも、安心して。リリアは私が守るから」


 ミラの雰囲気が更に険悪になった気がする。


「安心してミラちゃん。シーナの実力は私が保証する」


「マスターがそこまで言うなら……」


 ミラはしぶしぶと言った感じで、1枚の依頼書を出してくれる。

 受け取って、皆に見えるように見てみる。


『依頼内容:ゴブリン討伐

 成功報酬:三千G

 ランク条件:Eランク以上

 補足:バタラー村。二体のゴブリンが、畑を荒らしているので退治してほしい』


 バタラー村だと、今の時間から向かえば今日中には戻って来れそう。


「初の討伐依頼っていうことを考えると、まあ妥当かな」


 マスターのお墨付きも貰えた。

 反対意見がないかギンと、さりげなくコウに視線を向ける。

 特にないようだから、この依頼を受けることに決めた。


「これ受ける」


 受注処理をしてもらう為に、ミラに依頼書を渡そうとしたら、ギュッと手を握ってきた。


「危険だと思ったら、すぐに引き返して。依頼なんて失敗してもいい。無事に戻ってきて」


 マスターの目の前で、しかも、受付嬢としてどうなんだって言葉だけど、凄く真剣な顔でミラは言った。

 だから茶化さないで、私も真剣に応えなきゃ。


「何が起こるかわからないし、絶対とは言えないけど、生きて戻れるよう最大限の努力はするよ」


 ミラはそれで満足したのか、手を放してくれた。

 そして、依頼書にハンコを押すと、ピカッと光って依頼書に魔法陣が浮かび上がる。

 お馴染みの受注処理だ。


「はい。完了しました。いってらっしゃいませ」


「私も、ここまでだから。頑張ってね」


 マスターも付いてくるのかと思ってたけど、付いてこないらしい。


 王都を出て、二時間程歩いた。

 ようやく目的地のバタラー村の入り口に辿り着く。


「今更だけど言っておくね。私は基本的にサポートに回るよ。リリアが危険になったら手を出すけど、それ以外は手を出さないからそのつもりでね」


 ギンがそう言うけど、元々そのつもりだったので問題ない。


 私は、一度立ち止まって深呼吸する。

 初の討伐依頼。たとえ相手がゴブリンだとしても、気を抜けば死だ。


 両手でパチッと頬を打って気合を入れ直して歩き出す。

 銀十士への第一歩だ。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


次回は4/12~4/18のうちに更新(目標)です。


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