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冷やかされちゃいました(ミラ視点)

 マスターの後を付いていくリリアの後ろ姿が見えなくなるまで、立ち尽くしてしまう。


 昨日のリリアはとてもおかしかった。


 依頼を受ける時までは、普段と変わらなかった。ネコ探しの依頼を文句を言いながらも受けてた。

 でも、家に大泣きしながら帰ってきた。


 だから何かあったとしたら依頼中だ。


 ギンって人とマスターが関わってるのは確かだと思うけど、どう関わってるのか……。


「ミラー。今は仕事中よー」

「すみません。クレア先輩」


 考え事をしてるとクレア先輩に肩を叩かれた。

 目の前に来てたのに肩を叩かれるまで気づかなかった。

 窓口に戻ってきた私達は席に座る。


 でも、やっぱり気になっちゃって横の階段を見てしまう。


「全く……見せつけてくれるわね」

「ち、違いますよ。リリアとはそういうのじゃないです。手のかかる妹みたいな感じです」

「妹でも彼女でもどっちでもいいけど、私達は一人の冒険者に肩入れしすぎちゃいけないの。ミラはリリアちゃんと住んでるし、リリアちゃんだけしか受け持ってないから肩入れしちゃう気持ちも分かるけどね」

「うっ……すみません」


 リリアに肩入れしている自覚があるので、耳が痛い。

 クレア先輩は私の研修担当だった人だ。年も三つしか変わらない。親しみやすくて、良い先輩だ。


「リリアちゃんに討伐の依頼をまわしてないようだけど、ステータス表を見る限り、討伐系の依頼をまわさない理由が分からないわ。十五歳で“魔纏”が使えるなんてとても優秀じゃない」

「リリアは“魔纏”しか使えないんです」


 “魔纏”とは、無属性魔力で全身を覆い、その上から属性魔力(リリアの場合は風)を重ね、纏う魔法。

 攻防ともに優れた魔法だけど、大量の魔力と精密な魔力コントロールが必要な為、習得難易度がとても高い。


 “魔纏”といえば、かつて銀十士だったシルフィー・クラン様が得意としていた魔法で有名だ。彼女は、アルケディアとの戦争時に、魔力で何重にも防護コーティングされていた門を“魔纏”を纏ったパンチ一発で破壊したらしい。四百年以上も前の話なので色々尾ひれがついているかもしれないけど、とにかく、“魔纏”はそれくらい凄い魔法なのだ。


「それに使えると言ってもリリアの魔力量だともって五分程度です。魔物が増加している現状、リリアがソロで討伐系の依頼を行うのはとても危険です」


 最近、東の森に魔物が増加している。

 原因はどうやら東の森を超えた先にあるケルトの町でドラゴンが出たらしい。そのせいで、ケルト周辺に棲息していた魔物が東の森へ逃げてきたのだ。

 そのドラゴンは昨日、マスターが討伐してくれたらしいけど、逃げてきた魔物はまだ王都周辺に居る。


「冒険者のことも大事だけど、ミラの評価にも関わることだから、過保護になり過ぎないようにね」

「分かりました」


 私達、受付嬢の評価は担当している冒険者の評価で決まる。だから、討伐系の依頼を一回も受けたことないリリアの担当である私の評価はかなり低い。


 でも、構わない。

 無茶な依頼を受けて危険な目に合うのは私達じゃない。冒険者なんだ。

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