再会しちゃいました
依頼人から達成証明にサインを貰えた私は、少し寄り道をした後にギルドへ向かった。
私の担当であるミラの所へ行って、達成証明をミラに渡す。
「お疲れ様です。これで依頼は達成となります。そしてこちらが報酬ですので、確認してください」
ミラはニコッと数多くの男性を虜にするには十分な威力を持つ営業スマイルで、私に袋を渡してくれた。
金髪ロング。
優しそうな印象を与える垂れ目。
そしてゆったりとした制服なのに存在を主張する胸。
顔も可愛いし、虜にできる要素はいっぱい揃ってる。
……まあ、ここは男子禁制のギルドだから本当に虜にできるかは知らないけど。
私だってあと二、三年すればミラと同じくらいの胸になってるはず。
成長期だし。
私は袋の中に成功報酬の1000G入っていることを確認する。
「大丈夫。しっかり入ってた」
「そうですか。良かったです。今日はどうしますか? リリアさんの受けれそうな依頼は南区の巡回の手伝いがありますけど」
ミラは依頼書を渡してくる。
「討伐依頼は?」
「リリアさんが受けれるのは無いです」
「じゃあ今日はいいや」
そう言うとミラは凄く驚いた顔をした。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「何でそんなに驚くの?」
「だっていつもだったら討伐依頼受けさせろって、文句言うじゃないですか」
確かにいつもだったら文句を言ってた。
私の目標は銀十士だ。
銀十士になるのにランクは関係ないけど、それでもランクが高い人が選ばれやすい。
だから討伐依頼を一杯受けて早くランクを上げたいんだけど、この過保護な担当はソロじゃ危ないって受けさせてくれない。
「具合悪いですか?」
「そういう訳じゃないんだけど……」
今日はギンを探す予定だ。
そんなことを言ったら、この過保護な担当は絶対止めてくる。
良い言い訳を考えてると、ミラが立ち上がる。
どうしたのかなって思ってると、ミラはあろうことか私のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「なっ……何して」
「うーん。熱は無いかな……顔は赤いけど」
誰のせいだ。誰の。
「私、急いでるから!」
出口まで全速力で走る。
走ることに夢中で前を見ていなかった私は、人とぶつかっちゃう。
そして勢いのままその人を押し倒しちゃった。
「イタタ……すみません。大丈夫ですか?」
青髪の綺麗な女の人だった。
あれ……? この人もしかして……。
「えぇ……申し訳ないけど退いてもらえる?」
この声。やっぱりこの人。
「ちょっとリリアさん気を付けてくださいよ。そちらの方は大丈夫ですか?」
ミラが窓口から出てきて、私を立ち上がらせる。
「あれっ? マスターじゃないですか! 大丈夫ですか?」
「ミラちゃん。手を貸してくれないかな? ちょっと力が入らなくって」
ミラは女の人も立ち上がらせる。
え? ミラがマスターって呼ぶってことはこの人がユーナ? 銀十士の?
驚きが隠せなかった。
現役の銀十士に会えたことが……じゃない。
「あの……マスター。少し話があるんですけど。ギンについて」
私からギンの名前が出てくるとは思わなかったのか、マスターはビクッてなって、私のことをジロジロ見る。
「あなた、名前は?」
「リリアです」
「そう。リリアちゃんね。私はユーナよ。ここじゃなんだし、私の部屋で話しましょうか。こっちよ」
マスターは窓口の横にある階段へ向かった。
私もマスターに付いていこうとしたら、誰かに袖を掴まれた。
この状況で袖を掴んでくる人なんて一人しか思い当たらないけど。
「ギンって誰? 昨日様子がおかしかったのと関係ある?」
敬語じゃない。
仕事モードじゃないミラ。
「大丈夫。心配しないで。危ないことはしないから」
ミラに袖を離してもらってマスターの後を付いていく。
ギンと再会できても、殺されることはないと思うんだ。
私の勘違いじゃなかったら、昨日、ギンに血を吸われてたのはマスターだから。