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謹慎受けちゃいました その1

「やっっと着いた!」


 ギンは乗合馬車から降りて、体をほぐしていた。

 私もギンにならって乗合馬車にずっと乗ってたから凝ってしまった体をほぐす。


 私達はケルトの街に来ている。

 ケルトの街は王都から乗合馬車に乗って1日くらいのところにある観光地として有名な街だ。

 この街の周辺にしか生息していないコットっていう魔物を使った料理がとても人気でわざわざコットの肉を買う為にこの街へやって来る商人もいるらしい。


 私達がケルトに来た目的は何かの依頼とかではなく、観光だ。

 だからこそギンも私も乗合馬車を使ったことがなかったから、物は試しで乗ってみたんだけど、もう乗りたくない。


「2人とも。ここに居ちゃ邪魔だからさっさと街に入るよ」


 ミラから注意を受けてしまった。

 人はまばらだとはいっても、門の前で立ち止まってたら邪魔になることは確かだから私達は歩き出す。


「身分証を」


 槍を持った全身鎧のおじさんにギルドカードを渡す。

 そういえばギンは身分証を持っているのかな。今もギンはシーナとして変装しているし、討伐依頼を受けたとき、冒険者じゃないと言っていた。身分証はギルドカードだけじゃないから大丈夫だと思うけど。


 私の心配をよそにギンはギルドカードを出していた。シーナとしての。

 門番は一通り私達のギルドカードを確認するとギルドカードを返してくれた。


「ケルトへようこそ」


 街の中に入った私は、ギンに小声で話しかける。


「そのギルドカード本物?」


「もちろん。本物だよ。門番が何も言ってこなかったでしょ」


 ギルドカードの偽造、記載内容の虚偽は重罪だ。

 ギンはシーナとしてギルドカードを作っているから虚偽にあたるんじゃないか心配だった。


「大丈夫。私のカードは特例。私が始祖だってバレるのは色々問題が起きるから、ユーナが連盟に許可を取ってるの」


 連盟っていうのはギルド連盟のことだろう。ギルドカードの発行はギルド連盟の責任だしギルド連盟が許可してるなら問題ないかな。


 泊まる宿を取れた私達は早速、露店街で食べ歩きをしていた。


「リリアのも美味しそう。一口ちょうだい。私のも一口食べていいから」


 ギンがそう言ってタレ味のコットの串焼きを差し出してきた。

 私は断然塩派だけど、タレ味も気になっていたからギンの提案に乗ることにした。


「はい」


 ギンは私の串から一欠けら肉を口に入れると、しっかり味わってるのかゆっくり噛んで食べていた。

 私も忘れずにギンからタレ味の肉を一欠けら貰う。


「うーん……塩もいいけど、やっぱりコットの串焼きはタレ一択だね」


「いや、塩だよ」


 ムムッと私とギンが睨み合う。

 全然会話に参加してこないミラにも話を降る。


「ミラは? ミラはどっちが好き?」


「……どっちでもいい」


 ミラの素っ気ない態度で会話が終わっちゃって変な空気になる。

 ミラの態度の原因は何となく分かってるんだけどどうしよう。


 私は救いを求めてコウの方を見るけど、コウはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていて、この状況を楽しんでいるのが丸わかりだった。


『頑張れ〜』


 コウの気のない励まし……というより煽りを受けてイラッとした。


「そこの別嬪なお嬢さん達、採れたてのクランの実で作ったジュースはどうだい?」


 どこからかおじさんに話しかけられた。

 声のしたほうを見れば、果物屋さんなのか色々な果物が並んでいるお店からおじさんが手招きしていた。


「いくら?」


 私はこの空気を壊す為に、少しテンション高めに言った。

 それが面白かったのかコウがプッて吹き出していた。


 後で覚えてなよ……。


「普通は200Gだけど、お嬢さん達が買ってくれるなら150Gにおまけするよ」


「買う!」


「毎度あり!」


 私はおじさんにお金を払ってジュースを3つ買う。そしてギンとミラに渡す。


「ありがとう……ってそうじゃなくて! ちょっとリリアにシーナさん! あなた達、謹慎中だってこと分かってますか?」


「謹慎って言っても、ギルドに出禁になっただけでしょ? 外出は控えろって言われてないし」


「言われなくても控えるものなんですよ! 反省の色が感じられません!」


「反省って……。だって私達、何も悪いことしてないし」


 ギンが口を尖らせる。


「シーナさんが汚した床を掃除したのは、私なんですよ!」


「それは悪かったよ。でも、それだけで1週間の謹慎はおかしくない?」


 そう。私達は今、謹慎中で“宵闇の宴”に出禁になってるのだった。


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