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初の討伐依頼受けちゃいました その7

 少し休憩して家探しする。

 家の裏手に大きな蔵があった。

 そこから、色んな人の臭いがする。


「ここっぽいね」


 鍵がかかってた扉を壊す。

 中にはたくさんの小さい子供達と老人たちが入り口から離れた奥にかたまって居た。


『売るのに適してない人は拉致して、人質にしてたみたいだね』


「私は冒険者です! サナさんに頼まれて、あなた達を助けに来ました!」


 ざわざわっとはなったけど誰も私に近寄って来ない。

 信じられてないのかな……。


 1人の10歳くらいの女の子が近寄ってきた。


「マナ! 危ないから下がりなさい!」


 おじいさんが叫ぶけど、女の子は私の目の前に来た。


 マナって呼ばれてたってことは、この子がサナさんの妹。

 確かにサナさんの面影がある。

 見た感じケガとかもしてなさそうだし、元気そうでよかった。


「お姉ちゃんはどこ?」

「家で待ってるよ。一緒に帰ろっか」


 しゃがんでマナちゃんの目線に合わせて、手を差し出す。


「ちょっと待て! お前みたいな子供に紅き狼のやつらを倒せるとは思えん! 罠だ!」


 おじいさんが叫ぶと周りもそうだそうだって同調する。


『こいつら殺していい?』


 コウの目は本気だ。

 本当にやりかねない。

 コウを止めようとしたけど、大きな声で遮られる。


「馬鹿者! 恩人に向かって失礼だぞ!」

「村長……」


「すまない。皆、いつ殺されるか不安で気が立っているんだ。でも、お嬢さんのおかげでもうそんな不安になることはない。ありがとう」

「いえいえ。サナさんに頼まれただけなので。サナさんのところにマナちゃん連れていきますね」


 私はマナちゃんの手を引いて蔵を出た。


 サナさんの家が見える距離まで来ると、マナちゃんが走り出した。


 追いつくと、家の前でサナさんとマナちゃんが泣きながら抱き合ってた。

 でも、ギンが見当たらない。


「リリアさん。ありがとうございました。こうして、無事にマナが帰ってきたのはリリアさんのおかげです。シーナさんが中で待ってるから1人で来てほしいとのことです」


 1人で? 何だろう。

 コウのほうをチラッと見るけど、コウは首を横に振るだけで何も言ってくれない。


 中に入ると、少しの浮遊感の後にボフッという柔らかい感触。


「お疲れ、リリア。よく頑張って倒したね。しっかり見てたよ」

「見てた?」


 私の首元から何かが飛び出してきた。

 鳥? よく分からない物体がギンの所まで行くとボンッと音を立てて消えた。


「じゃあ、おクスリを抜こうか……。実はもう限界なんじゃない?」


 さっきから体中ズキズキ痛かった。


「今のリリアの体の中では、細胞の破壊と再生が繰り返されてる。吸血鬼に変わる為にね。でも、このままだと再生が追いつかなくなって死んじゃう」


 ギンに押し倒される。

 ようやく気付いたけど、ここは昨日、案内されたギンの部屋のベッドの上だった。


「最初はちょっと痛かったり、変な感じだけど、慣れればキモチイイらしいから安心して私に身を任せて」


 ギンは私の首筋に口を付ける。


 ミラの顔がチラついた。


「ストップ! 跡って消すこと出来る?」

「出来るけど、オススメはしないよ。毎回、穴空けることになるから痛いよ」

「それなら、首からじゃなきゃダメ?」

「そんなことないけど……何で?」

「跡を見られたくないから」

「その耳みたいに、幻覚で隠す?」

「それはちょっと……」


 嘘つくことが増えるのは嫌だ。

 普段は隠れてて見えないところ……。


「太ももは?」

「太もも? 私はいいけど、リリアは本当にいいの?」

「いいよ」


 私はスカートを少しだけ捲りあげる。


「なんかエッチだね……」

「余計なこと言わないでよ」


 言われたら段々恥ずかしくなってきた。


 ギンは私の太ももに牙を立てる。


「痛っ、ちょっと……痛いってば」


 ギンは私の文句にも反応しないで、一生懸命血を吸っていた。


 力をどんどん失っていく。

 それが、クスリが抜けたことによるものなのか、ただの貧血なのか私には分からない。


 私の体感ではもう1分は過ぎた。

 まだ吸わなきゃいけないのかな。


「ギン? まだなの?」


 返事がない。

 ギンは震えていた。


 様子がおかしいと思った私は、ギンの肩をポンポン叩く。

 それで、やっと気づいたのか顔を上げてくれたけど、ギンが泣いてて驚いた。


「大丈夫?」


 ギンはバッと私から離れて顔をゴシゴシ拭いていた。


「大丈夫大丈夫。心配しないで。何でもないから」


 立ち上がろうとしたら、クラッときた。


「ごめんね血を吸いすぎちゃったみたい。帰りは転移魔法で帰ろうか」


 さっきまで泣いてたとは思えない、いつもどおりの様子だった。


「死体回収して王都に帰ろう」


 フィンガースナップの音が聞こえたと思ったら、景色がまた変わる。サナさんの家に戻ってきたらしい。


「じゃあね、サナ。元気に暮らすんだよ」

「シーナさん、リリアさんも本当にありがとうございました」


 私達はサナさんの家を出たあと、偽村長の死体を回収して王都へ帰った。


 初めての討伐依頼。これにて無事終了だ。

討伐依頼編は完結です。

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