初の討伐依頼受けちゃいました その6
私からの反撃があると思ってなかったのか隙だらけだ。
この隙に出来るだけ減らそう。
胸を貫いたままだった死体を、敵の方に投げつけると同時に走り出す。
「甘いっ! “アース・ウォール”!」
私の身長よりも大きい、2メートルくらいの土の壁が進路を阻む。
横から出てくることを予想されてるだろうし、裏をかこう。
壁にパンチをして私が通れるくらいの穴を空け、そこを通る。
「“アース・ボール”」
予想されていたのか、壁を抜けた瞬間に攻撃をされた私は避けることが出来なかった。
ゴロゴロ転がって柱にぶつかる。
“魔纏”を纏ってるおかげで痛みは全くないけど、チャンスを逃してしまった。
土の壁がボロボロ崩れる。
「この威勢のいい嬢ちゃんの相手は俺がする。お前らはサナの所へ行け」
「頼みましたぜ。ボス」
部屋に残ったのは偽村長のみ。
サナさんにはギンがついてるから問題ない。
問題はこっちだ。
まさかこんなに強い人がここに居るなんて思わなかった。
さっき殺した男達とは別格だ。
『大丈夫? 私が変わろうか?』
「大丈夫。私が倒す」
付いてきてくれてたコウが心配そうに聞いてくるけど、問題ない。
ドーピングまでしてるんだ。
これで倒せなかったら、銀十士になるなんて夢のまた夢だ。
「嬢ちゃんは凄いな。若いのに“魔纏”を使える。俺は全然才能がなくてな……同世代の連中がどんどんランクが上がってく中、俺だけは万年Dランク。やってらんねーよな!」
無詠唱の“アース・ボール”が飛んでくる。
さっきは壁を抜けていきなりで油断してたから当たっちゃったけど、真正面から来るんだったら簡単に避けられる。
「“サンドストーム”」
砂嵐が吹き荒れ、周りが何も見えなくなる。
どうしよう。闇雲に動くのは危険だって私にも分かる。
『左に避けないと危ないよ』
私には何も見えてないけど、コウの言うことを信じて左に避ける。
避けるのがちょっと遅かったのか、右腕を何かがかすった。
『視界がとっても悪い状況なのに、目だけを頼ってちゃダメだよ。他の感覚も研ぎ澄ませて』
私は目を瞑る。
目を開けていたら、目を頼っちゃいそうだったから。
『リリア、深呼吸だよ。そして集中して。今のリリアは吸血鬼に近い存在。いつもより感覚が鋭くなってるんだから、視界を塞がれても敵を見つける方法はいくらでもあるよ』
コウに言われたとおりに深呼吸。
前の土の匂いが強くなったから、右に避けてみる。
後ろでグシャって音が聞こえたから、さっき飛んできたのは“アース・ボール”だったんだろう。
それから何度も同じことの繰り返し。
“アース・ボール”が何度も来るせいで、偽村長に近づけない。
このままじゃ埒が明かない。
攻撃に出ないと。
『このまま避け続けて、魔力切れを狙うのも手だよ』
魔法の無詠唱発動は、普通に発動するよりも魔力消費が多い。
しかも、“サンドストーム”を発動しながらだ。
魔力量がどれだけあるかは知らないけど、そう待たずに魔力切れを起こすと思う。
でも……。
「そんな勝ち方しても嬉しくない」
『そうでなくっちゃね。じゃあ、リリアにいいこと教えてあげる。正直、リリアの“魔纏”は不完全だよ。身体強化魔法よりもちょっと強いレベル。“魔纏”のメリットを全然活かせてない』
「メリット?」
『“魔纏”は普通の身体強化魔法に属性魔法を重ねて纏う魔法。風を上手く使いなよ。言っておくけど、風属性は使い手によって化ける可能性がとってもある凄い属性なんだから』
私は偽村長の匂いのするところへ、ダッシュする。
前からまた“アース・ボール”が来ているけど避けない。
纏っている風で“アース・ボール”の軌道を逸らす。
コウに言われて気付いた。
今までの私はただ風を纏っていただけだった。
“サンドストーム”で視界が悪い中、偽村長が見える所まで来れた。
急いで逃げようとしているけど、もう遅い。
私の拳は偽村長の胸を貫いた。
“サンドストーム”も消えて視界が晴れる。
『お疲れ、リリア』
「苦戦しちゃったな……」
『でも、これで少しは“魔纏”の使い方も分かったんじゃない?』
「うん。これからどんどん強くなって銀十士になるんだ」
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