初の討伐依頼受けちゃいました その4
「善は急げ。おクスリの時間だよ」
ギンはウキウキしながらケースを渡してきた。
「1回1錠で、今までとは比べ物にならない力が手に入るよ」
ケースから1錠取り出す。
乾いた血の色みたいな赤黒い色をしていて、昨日も思ったけど、飲むのに勇気がいる色をしてる。
「本当に飲んでいいものなの? これ」
「大丈夫だよ。ユーナだって飲んでるんだし」
「さあ、さあ」ってギンが催促してくる。
私は助けを求めて周りを見るけど、コウは興味ないのかそっぽを向いてるし、サナさんは目が合ったのに急いで逸らされた。
誰も助けてくれない。
ええい、ままよ!
私は目を瞑って、一気に飲み込んだ。
ドクンッ。
心臓が大きく脈打った。
体がとっても熱い。体の内側から力がドンドン溢れだしてくる。
凄い。私が私じゃなくなる感覚……。
今の私ならギンに昨日のリベンジ出来るんじゃないかな。
「“魔纏・槍”」
クスリを飲んで魔力量も上がったことによって、きっきのとは比べ物にならないものが出来た。
これならいける。
私はギンに向かって突きを放つ。
生温かい、肉を貫いた感触があった。
「魔力量も多くなって攻撃の威力がとっても上がったね。クスリの効果が早速出てよかったよ」
何故か私の腕はギンじゃなく知らないオジサンのお腹を貫いていた。
さっきまでギンの居た位置にオジサンが現れたのだ。
ギンはというと私の隣に居た。
「うわっ誰この人?」
「私達を村長の家からずっとつけてきた奴らのうちの1人だよ。奴隷商の仲間だろうし、殺しても問題ないよ」
良かった。この国では犯罪者を殺しても罪にはならない。
うん? 奴ら?
「お前ら絶対許さねー!」
「ぶっ殺してやる!」
ワラワラと10人くらいの男が出てきた。
どうやら既に囲まれてたらしい。
「いっぱい出てきた」
「さっきからずっと居たよ。全く……注意力が足りないね」
「何か怒ってる?」
「別に……クスリを飲んだリリアが、真っ先に私を襲ってきたのが、納得できないだけだから気にしないで」
「ごめんね。ちょっとパワーアップして、昨日のリベンジできるかなって思っちゃったんだよ」
ギンは怒ってるというよりも、拗ねてるようだった。
「お詫びに私が全員倒すから」
いつもの私なら絶対に無理だけど、今の私なら出来る。
そんな確信があった。
1人。また1人。
私は奴隷商たちを次々に殺していく。
それにしても数の利があるのに1人ずつバラバラで襲いかかってくるなんて馬鹿なのかな……。戦いやすくていいけど。
そうして特に危うい場面もなく淡々と10体の胸に穴の空いた死体を作っていった。
「お疲れさま。リリア。どうだった? クスリを飲んでみて」
「凄いよ。こんなに強くなれるなんて思わなかった」
クスリを飲んでから素の身体能力も上がってる。
これだけ戦闘続きでも全然疲労感がない。
「分かってると思うけど、クスリのおかげでこんなに大勢の敵と戦えてたんだからね。クスリ抜きのリリアにそこまでの力はまだないよ」
「手厳しい……」
「冒険者は自分の実力を正確に把握してないと駄目だからね」
その通りだ。
自分の実力を見誤れば、それは死につながる。
「じゃあ、村長の家に戻ろうか」
「サナさんの妹を助けるんじゃないの?」
「だから戻るんでしょ。今回の黒幕の所に」
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