表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/19

初の討伐依頼受けちゃいました その2

 私達はまず村長宅に向かうことにしたんだけど、人が全然居なくて困っていた。


「何で誰も居ないんだろう」


「家の中から気配はするから、居るには居るんだろうね。ただ、外に出てないだけで」


「何で?」


「さあ……そこまでは流石に私も分からないけど」


『どうする? テキトーに家を訪ねて、村長の家のこと聞いてみる?』


 このままじゃ埒が明かないから、コウの提案に乗ってみる。


「すみませーん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど」


 近くの家をノックしてみたけど、反応がない。


「居るのは分かってんだから! 出てきなさい!」


 ギンは借金の取り立て屋みたいに、ガンガンと強くノックする。


「ちょっとギン。それはまずいよ」


「でも、無視されてると思うと腹立たない?」


『それ凄く分かる』


「そんなんじゃ怖がって出てこれないよ」


 コウとギンは結構似た者同士なんだな。


「ゴブリン討伐の依頼を受けた冒険者です。村長の家の場所を教えてほしいんですけど!」


 しばらく待つと、扉が五センチくらい開く。

 多分私と同じくらいの年の女の子が、隙間から顔を半分くらい出してくる。


「……本当に冒険者の方ですか?」


「はい。これがギルドカードです」


 私は、ギルドカードを見やすいように出す。

 ギルドカードを見て安心したのか、出てきてくれた。


「さっきはすみません。徴税に来た人たちだと勘違いしちゃって」


 よく見ると、満足にご飯を食べられてないのか、少し痩せこけてた。


「こちらです。どうぞ」


 女の人が歩き出すので、私達も付いて行く。

 さっきのことがあってギンが怖いのか、ギンが隣に行くとビクッとなったから私が間に入って、積極的に話しかけてみることにした。


「冒険者さん達が来てくれて助かりました。これでようやく税を納めることも、食事に困ることもなくなります」


「荒らされた畑はあなたのなの?」


「いえ、村で畑を共有してるんです。そうすれば一人一人の負担が減るからって村長が」


 畑仕事って大変なイメージがあるから分担するのはいいアイディアなのかもな。


「村人が外に全然居ないのは、あなた……そう言えば名前は?」


「すみません。私サナっていいます」


「サナね。私はリリア。で、もう一人がシーナ。それで、外に誰も居ないのはサナと同じで徴税から逃れる為ってことでいいの?」


 私達がパーティー活動する時、ずっとギンは偽名でいることをさっき決めたんだけど、気を抜くと間違ってギンって呼んじゃいそうだ。


「そうですね。畑がダメになっちゃうと村人全員に影響が出ちゃうので……すみません」


 畑の共有にはそう言うデメリットもあるんだな。


 サナさんはある家の前で立ち止まる。

 周りの家よりも少し立派な家だ。ここが村長の家らしい。


「村長! 王都から冒険者さんが来ましたよ!」


 サナさんが玄関から叫ぶ。

 すると、家の中からドタドタって走ってくる大きな音が聞こえて、40代くらいの男性がハァハァ息を切らしながら出てきた。

 村長って聞くとしわくちゃのおじいちゃんをイメージしてたけど、想像より若い。


「初めまして。バタラー村の村長を務めてますモグルと言います。この度は依頼を引き受けていただきありがとうございます。ささ、詳しい内容は中で話しますのでどうぞ」


「ありが」


「いや、結構だよ。私達は急いでるから。ここに来たのは、私達が来たことを知らせる為だけ。終わったらまた来る」


 村長の言葉に甘えようとしたところを、言葉の途中でギンが遮るように言った。

 どうしてだろ……。


「それなら、サナを道案内としてつけましょう」


「そうだね。それならいいよ」


「サナ。しっかりやるんだぞ」


「……はい」


 サナさんは少し不安げだった。

 戦闘の場についていくことになって不安なんだろう。

 私はサナさんの肩にポンと手を置いて励ます。


「大丈夫だよ。私達がついてるんだから」


「ありがとうございます。リリアさん。お願いします」



 村長宅を後にして私達は、村の畑にやってきた。

 畑は結構荒らされていた。でもゴブリン達は巣に帰っているのか居なかった。


「これ、ゴブリン討伐しても畑やり直すの結構時間かかっちゃうんじゃない?」


「私達の仕事はゴブリン討伐。しっかりゴブリン討伐して、村の人達が今後安全に畑作業できるようにしよう」


 ギンの言うことはもっともなので私は、ゴブリン討伐に専念しよう。


「ねえシーナ。ゴブリンってどういう所に巣を作るの?」


「洞窟とかかな」


「サナさん。ここら辺に洞窟ってある?」


「それならもう少し進んだ先の林の中にあります」


 私を先頭に、サナさん、ギンの順で林の中を歩く。

 コウには私の周りに居てもらってる。

 一応、サナさんを危険にさらさないよう私が考えて提案した。


「リリア。ストップ」


 ギンが小声で話しかけてくる。


「足元見てみて。ゴブリンの足跡だよ」


 ギンに言われて、よく見てみると確かに足跡っぽい。

 言われなかったらただの窪みだと思ってた。


「今後、冒険者を続けるつもりならこういうことにも気を配らないとね」


「分かった。教えてくれてありがとう」


「最初のうちはしょうがないよ。知識を持ってる人からどんどん吸収していこう」


「みなさん、洞窟までもうすぐです」


 洞窟を視認できる距離まで来た。

 私達は木陰に隠れて、洞窟を見てみる。

 ここから見えるだけでも、ゴブリンは五体居た。


「やっぱり二体以上居るね。どうする? 私が依頼通りの二体になるまで減らしてあげようか」


「私が全員倒すとなると勝率はどれくらい?」


「昨日見せてもらった動きが全員に対して出来るんだったら、十中八九倒せるよ」


「……ちょっと試したいことがあるから減らしてもらってもいい?」


「了解。“アース・ニードル”」


 ギンが魔法を唱える。一瞬だった。

 地面から生えた土の針がゴブリンを串刺しにしていた。


 ガアアとゴブリン達の断末魔の叫びがこだまする。

 洞窟で反響して聞こえるから、ここからじゃ見えない洞窟の中にも数体居たらしい。


 残された二体は何が起きたのか分かってないのか、凄くキョロキョロしてる。

 この隙を逃さない。


「“魔纏(まとい)”!」


 昨日、ギンから貰った課題の答え。

 イメージがフワフワしてて固まってなかったけど、さっきのギンの“アース・ニードル”で固まった。

 ギンには感謝しなきゃ。


 左腕に纏う魔力だけ、尖らせる。


「名付けて! “魔纏・(ランス)”!!」


 一体のゴブリンの胸を貫く。

 やった。上手くいった!


 ちょっと気を抜いたのがいけなかった。

 “魔纏”が消えてしまった。

 再びの“魔纏”は、魔力が足りなくて無理。

 絶好の機会にもう一体のゴブリンが襲ってくる。

 私は目を瞑って来るであろう衝撃に耐えようとした。けど、衝撃は来なかった。


『戦い中に油断して魔法を解いちゃう。そして防御行動もしないで、目を瞑るなんて一番やっちゃいけないよ』


 目を開けると、細切れになったゴブリンだった物体があった。


「コウ……」


『全く……折角、新技編み出せたの褒めようと思ったのにな。しっかりしなよ』


「ありがとう。助かった」


 私は地面に倒れ込む。


「討伐依頼達成だー」


「まだだよ。討伐証明の右耳を切り取らないと」


「もう力入らない。シーナがやってー」


「しょうがないな。今回だけだからね」


「ありがとう」


 私は座り直す。

 サナさんが駆け寄ってきた。


「お疲れ様です。リリアさん」


「ああ、ありがとう。サナさんもお疲れ様。サナさんの道案内のおかげでこんなに早く済んだよ」


「いえ……リリアさん。ごめんなさい!!」


 サナさんは、ゴブリンが持っていた棍棒を私に向かって振り下ろした。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


次回は4/19~4/25の間に更新出来たらと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ