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【(元)魔王、冒険者になる】01

(会いたい、あの人に会いたい、会いたい、会いたい······)


もお、どれだけの年月をココで過ごしただろうか?


1年?5年?10年?それとも、もっと長い年月が経ったのだろうか?


あぁ、あの人に会いたい。


会いたい。


会いたい·····。


今すぐこんな退屈な所から飛び出して、あの人の元へ向かいたい。


だがそれは、叶わぬことくらい我が一番よくしっている。


誰でもいい·····我をココから解放してくれぬものか·····。






西の山脈にある洞窟の入口に2人の人影があった。


「うわ〜ひろ〜い!」

「そうっすね!こりゃ迷子にならないか心配っすね!」


2人はある依頼書(クエスト)の為にここを訪れていた。


一人は、錆び付いたボロボロの剣を腰に刺し、木の盾を装備した軽装備の男と茶色ローブを被り、木の杖を持った金髪碧眼の少女だった。


「それにしても俺達が·····大丈夫なんすかね?」


男は浮かぬ顔で、そんな事を言う。


彼が、心配になるのも無理はない。


彼らは、冒険者になったばかりの、駆け出し冒険者なのだ。


そんな駆け出し冒険者が、受ける依頼書にしては、報酬が多額すぎる·····。


「だ〜いじょうぶ!だ〜いじょうぶ!」


そんな彼の心配とは裏腹に、少女は生色としていた。


「さあ〜いくわよ!オーーーー!!!!」

「オ、オー!」


初の依頼書に気合を入れ直す二人。


はぁ·····何も起きなきゃいいっすけど·····。


こうして2人は、洞窟内へと進んで行った。






誰かが洞窟内に入ってきたのか?


気配は·····2人、か!?


何か起こるかもしれぬ!


気配は·····探知出来てもここからじゃ様子が何もわからない。


仕方ない·····


残り僅かな魔力で、この洞窟内の魔物の目をリンクさせてもらおう。


(視覚リンク)


ん·····んん·····これは·····黒い羽に二本の鋭い脚、ブラック・バット、か?


丁度いい、これで気配のした二人を探すとしよう。







「きゃあああああ」

「うああああああ」


洞窟内に二人の絶叫が、反響する。


全力で走りながら、あるものから逃げる二人。


「な、なんなんすかあれはー!」

「知らないわよ〜!」


⦅ガサガサ、ガサガサ⦆


その二人を追うように、後方から物凄い勢いで追うものの姿があった。


体調は、五メートルを超えるだろうか?大きく膨れ上がったお腹は、気味悪く蠢めいている。身体を支える八本の足は人の腕程の大きさだ。


彼らを後方より追いかけていたのは、1匹の蜘蛛だった。


通称・ビック・スパイダー


「と、とりあえず、アソコにかくれるっす!」


大きな岩場を見つけた冒険者の一人がそう言うと、二人は岩場へと隠れた。


「マルク、あんたどうにかしてよ」

「むりっすよ!見てくださいよわっしのこのぼボロボロの剣·····ユーリこそ遠距離から魔法で何とかするっすよ!」


二人は蜘蛛に気づかれないように岩裏で、そんなやり取りをしていた。


「そもそも装備も揃えずに来るのが間違いだったんすよ!」

「しょうがないじゃない!お金無かったんだから〜!」


こんな事なら、薬草採取の依頼やらスライム討伐の依頼なんかを受けて、地道に装備を整えるべきだったと·····二人は心の底こら思うのであった。


⦅ギギィィィィ!⦆


突如洞窟内に、不気味な鳴き声?が響き渡る。


音のした方に目を向けるとそこには、先程の蜘蛛を囲うようにゴブリンが1、2、3·····20匹いた。


話してるようにも見えるが、威嚇しあってるようにも見える·····そもそも魔物に言葉というものがあるのかどうか·····。


⦅ギギ!⦆


突如1匹のゴブリンが、蜘蛛に攻撃を仕掛けた。


それと同時に1匹、2匹と次々とゴブリンは、蜘蛛に襲いかかる。


が、蜘蛛は動じる様子もなく邪魔な物を退けるかの動作で、太いその脚で襲いかかるゴブリンを横薙ぎにした。


たった一度の一撃に、20匹いたゴブリンは半分近く殺られてしまった。


その光景をみた残りのゴブリン達は、とても適わないと悟ったのか、次々に逃げてゆく。


邪魔者が居なくなったのを確認した後、蜘蛛は倒れたゴブリンの方にゆっくりと歩より、


⦅ムシャッ!⦆


蜘蛛は、倒れたゴブリンをその強靭な顎で捕食しだした。


洞窟内に肉が潰れるような、骨が砕かれるような、そんは嫌な音が響きわたる。


「な、何あれ·····た、食べてる?き、きもぢわ、オェェェ」


そんな異様な光景を、目のあたりにしてしまった金髪の少女、ユーリは真っ青になりながら·····ぶちまけた。


「や、やや、や、やめてくださいっす!わっしまでも吐きそうになりますっす!」


そう言いながらも、ユーリの背中を優しくさすってあげるマルク。


⦅バサバサ⦆


天井に二本の脚を突き立て、そんな二人の様子を眺める者がいた。










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