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引きこもりと侵入者

作者: ぬしま

 

「ぐぅ....ふわぁぁ....」


 声にならない唸りを上げ、起きてからもう何度もしている欠伸をする。


「うぅー」


 それから何度か呻き声を上げながら、もう一度寝ようと瞼を閉じる。

 もう四、五回以上も起きては寝るということを続けている。

 しばらく瞼を閉じていると寝すぎの頭痛と気持ち悪さが悪化してきているのがわかった。

 もう一度寝ることを諦め現在の時刻を確認しようと携帯を探す。


 今日は学校だ。


「おぇぇぇぇぇぇぇ.......」


 寝起きの気持ち悪さに唸りつつ、なんども寝返りを打ってぐちゃぐちゃになった布団をどかしながら携帯を見つける。


 16:00


 あー


 やっぱりか、と思った。


 二度寝や三度寝の際に外の明るさや気温がわかるので、ぼーっとしていながらも大まかな時刻は把握できる。

 とっくに登校時間も過ぎ、帰るのが早い帰宅部の人間たちはもう下校しているであろう時間に、今日もまた目覚めた。


 昨日はいつも見ているyoutuberの深夜配信がなかなか終わらず、配信が終わったときには目も冴えていた。結局ねるに寝られず。

 もっとも、youtuberの配信がなく、早起きできていたとしても学校に行くつもりなど最初からなかったが。

 学校がある日の朝は嫌だ。行く気もない学校へ妙に行かなければいけないという気になる。

 しばらくなぜ行けないのか脳内会議を続けたが、それにも飽きてしまったので、いつもどおりに携帯を開き、SNSを眺める。

 自分と同じ年頃の人間は、本名でツイッターをし、それに出会いの場を求めたり。インスタをつかって、いいね稼ぎをしたりという使い方が主らしい。

 私はそういった使い方はすることは無い。

 どういったゲームが発売されるだとか、βテストの応募が始まっただとかの情報や、バズってるツイートとかを確認するくらいだ。


「お、このゲームクローズドβの募集始めたんだ。リツイートしておこーっと。」


 私にはネット上でゲーム仲間が居て、その人達と私はいつも色々な新作ゲームを一緒にプレイしては、すぐに飽き、すぐに次の新しいゲームを探す。ということをしている。

 その人たちとはそこそこ長い付き合いになるが、私は年齢も性別も話しておらず、相手も直接聞いてくることはない。当然だ。


「おっこの人新しい動画あげてるー」


 無意識にニヤニヤしながら、数秒前に投稿された動画のツイートを開く。

 家族に気付かれないように配慮して押し殺すようになった笑い方で笑いながら、今日も関連動画を転々とする。

 ネットの海は広大で楽しい。毎日面白いモノで溢れ、いくら見ていても飽きないと思うくらい。

 しかし、広ければ広いほど、楽しければ楽しいほどに現実に戻った時の虚無感も大きい。

 そんな恐怖もあるが、今はただやることがないので動画を見続けて一日を消費する。

 次第に何も観るものもなくなってきて、1日を終わる。そんな毎日だ。

 結局時間だけが過ぎ、手元に残るものは何もないのだ。

 しばらく最新の動画を見ていたが、それにも飽き、いつもするオンラインゲームを起動しようとする。


「でもこの時間誰もいないしなぁ」


 ピンポーン


 ・・・


 ピンポーン


 何だ?宅配はココ最近頼んでないはずだ。

 寝ていて何度も業者の人が来ることがないように、いつも届く日付と時間は指定してその時間には起きているようにしている。

 なら宗教勧誘とかよくわかんないやつなはずなのでこのまま無視することにしよう。


 ピンポーン


 ...宗教勧誘とか営業とかだったらおかーさんいまいないですーって言えば帰ってくれるのだろうか。

 そんな事を考えたがアマゾンとピザ屋以外出たく無いので試す気は無い。

 それにしても家でダラダラニートしているときにいきなり訪問者が来ると、わけもなくドキドキしてしまう。


 特に居留守を使うときは。


「早く帰ってくれないかなぁ」


 ピンポーン


 流石にここまで鳴らすということは、普通の用事じゃないのか?

 そう思い部屋のカーテンを少し開け、家の前にいた人間を確認した。


「制服?・・・それも同じ学校・・・だよな???」


 家の前には女子の制服を着た誰かがいた。

 一瞬どこの制服だろうと思ったが、振り返って部屋のインテリアと化した自分の制服を見て確信する。


 ピンポーン


「まだ鳴らすか・・・。」


 もう何度目になるかわからないインターホンを鳴らした彼女(もしくは女装した彼)は諦める様子もなく、時々家を確認しながら待っている。


「胃が痛い・・・・うぅ。」


 ここまで無視し続けていると、さすがに申し訳無さで胃が痛くなってくる。かといって出る気もないのだが。

 早く帰ってくれと祈りながら、布団に入ってうずくまる。




 ・・・。




「お?帰ったか・・・?」


 布団をおばけのようにまといながら、カーテンの隙間から外の様子を見る。

 すると、未だに家の前で立っている少女(もしくはry)がいた。


「まだ帰ってないのか・・・ん、携帯?」


 彼女は携帯を持ち、人差し指をシュッシュと動かし、何かを探しているようだった。


「まさか家の前で自撮りとかやらないよな・・・?」


 ネットの海に漂う数々の個人情報を思い出しながら。最悪の状況を考える。

 しばらくすると何かを見つけたらしく、せわしなく動かしていた指を止めた。


「・・・いしん・・・ってる・・・ら。」


「・・・え?。」


 ところどころ小さくて聞こえなかったが、なにかを大声で言っているようだったので、もう少し聞こえるように窓を開けて耳を傾ける。


「ポプテピピックひどすぎて草。」


「は?」

「このはさんプブグ買ったんですねわら、今度一緒にやりましょうよ。」


 ・・・・・・・?

 やつは何を言っているんだ???

 何かを朗読している。そしてなぜかそれは聞き覚えがある。


 私のツイッターだ。


「この動画草。夜中の飯テロなう。大草原不可避。何これ尊い。キリトかなーやっぱわら。小学生リスキルするの楽しすぎワロタ。」


「やっやめろおおお!!!」


 叫んだ。


 窓を開けると奴はこっちを見てニヤッと笑った。

 まさか自分のゲーム用垢のつぶやきを家の前で大声で朗読されるとは思わなかった。


「とりあえず...家に入れて?」


 急いで一階に降り、玄関の鍵を開けると、目の前には悪魔がいた。


「もーいるなら早く出てよー」


「いや誰....」


「覚えてないの?小学校の時一緒だったコハルだよ!」


「こはる・・・?あーいたような。」


 曖昧だがそんなのがいたような。。。


 そもそも小学校六年くらいから不登校が始まったので思春期真っただ中の同級生なんぞ変化しすぎてわからん。

 確かこいつとは不登校になるまでモンハソやらパケモンでよく遊んだりしていたはずだ。


「背も髪ものびたねー、相変わらずかわいい!」


「そっちこそいろいろと成長しているようじゃないか。」


 三年もあればいろいろと変わる。久しぶりに会った同級生は自分より背が高くなり、体のいろんなところが成長していた。

 主に胸。ちなみに私のはいまだ変化はない。


「で、いきなり家の前で私のネット上でのつぶやきを朗読したのはのはなぜだ。殺されたいのか。」


「いやいや、あれは仕方なく。。。」


「ていうかなんであのアカウントが分かったんだ?個人情報は絶対言ってなかったはずだけど。」


「あーあれはねーゆうは小学校の時私と相互フォローしてそのあと一年で消しちゃったでしょ?」


「あーそいえば初代の奴は小学校の何人かに知らせてたことあったなー。」


「で。その初代のアカウントのIDを検索して、削除されたアカウントと会話してるアカウントのフォロワーからそれっぽいの見つけたってわけ」


 ガチだった。


「こ、こええ。」


「あ、あとそのアカウントでクラスのみんなのリアルアカウント見るのやめたほうがいいよ?おすすめのユーザー欄にゆうの表示されちゃってるから。」


「まじか・・・」


 まさか過去の自分のフォロワーから今の自分をたどって来るとは・・・しかもリアル凸まで


「まぁでもこんなに簡単に朗読作戦が成功するとは思わなかったなー。今日来なかったら明日にはもっとすごいのやろうと思ったのになー」


 ほかにも何かあるというのか・・・


「で結局この不登校児の家に来た理由はなんなん」


 まったくわからないが大体こういう状況だったら考えられることは二つくらいだろう。


 脅迫してカツアゲだ。


 そうでなくとも絶対私のアカウントを人質に何かしようとしているはずだ。漫画で見たことあるぞ。えっちなやつ。


「いやねーいろいろあるんだけどまずはゆうの部屋に入れてほしいなー」


 部屋??まさか部屋の中にある恥ずかしいものを見たり撮ったりして楽しもうとしているのでは?

 私は女だからそんな思春期の男子の部屋みたいな物はない。。。あ、同人誌。。。えろg。。


「久しぶりにゲーム部屋みたいなー。チラッ」


「い・・いやだ。」


 そういう意図があったらまずい・・・そもそも掃除しないから汚な過ぎて入れられない・・・


「ふーんじゃあクラスのみんなにあのアカウントのことばらしちゃっていいのかな?」


「ぐっ・・・」


 おー数年ぶりのゆうの部屋だー。なんか良い匂いする。ぐへへー」


 全然掃除出来なかった。


 床にあった漫画や雑誌類はまとめてベッドの下に入れられたが、床のポテチのクズとか細かいやつとかはそのままだ。ベットの下を見たときにナニかよく分からないものが居たのはキニシナイ。


「かぐなかぐな、あとそれリセッシュの匂いだぞ。」


 引きこもりの万年床は特有の臭いがある。普段は自分の匂いや部屋の匂いは自分では分かりづらいのだが、三日間くらい風呂に入らず寝て過ごすとベッタベタになった髪が猛烈な不快感を催し、髪がファサッとなったときに匂う謎の匂いに絶望する事になる。

 そして3日ぶり風呂に入り、さっぱりとした状態で部屋に戻ると自分の部屋が匂うことに気づき、全ての窓を開けリセッシュを放ってリセットする。


 まだ1日目だから助かったか....


 ごく最近のことを思い出しながら、コハルが来る前に必死でリセッシュを放ったために少し汗ばんだ額を寝巻の袖で拭う。


「で、本題はなんなんだ?プリント届けに来たんじゃないんだろ?」


 嫌がらせと脅迫の時点で、3日たつと来なくなる[休みの人にプリント届ける近所のヤツ]とか、よく分かんないけど自宅に先生が来て寝てるって言っといて、って親に言って帰ってもらうやつとか、そういった類の目的ではないのがわかっている。ひどいな私。


 プリントは塩田くんでしょ?最近までよくプリント渡すの頼まれてたけど、今日は頼まれてなかったみたいだね。


 最近まで頼まれてたのか...


「え?最近来てないよ?プリントどうしてるの?すてたの?食べちゃったの?ヤギなの?」


 まぁ貰ったところでどうするわけでもないので、先生の方から止めてくれた方が助かるのだが。

 でも本当に私のプリントはどうしていたんだろうか。


「そんなことより!何しに来たのかって聞いてるんだよ!」


「そうだった!塩田なんかの話してる場合じゃないや。実はね...学校に行きたくないんだ...。」


「は?舐めてんの?」


 煽られた。


「ご、ごめん!ち、ちがうよ!本気で行きたくないんだよ!?不登校児に皮肉言ってる訳じゃないよ!」


本人も失言だと思ったのかコハルは必死で弁解した。


「お、おぅ...」


 自分では分からなかったがちょっと怖いトーンで返してしまったらしく、少し怯えながら必死で弁明し始めているコハルにびっくりした。


「そ、それでなんで私に言おう思ったんだ?」


 コハルの怯えっぷりにびびりつつ、今度は普通を意識して問いかける。


「それなんだけどね...中学は最近友達になった子ばっかでこういうこと言いづらくて...そこで小学校のころよく遊んでたゆうに言ってみようかなって。家が近かったのもあるけど。」


「なるほど...つまり家が近いからか...」


「そーう、じゃない。普通に信用できる相手だったからだよ!小5までずっと一緒だったし!」


 たしかに、小5まで遊ぶ相手といったらハムスターのハムタロかコハルぐらいだったが、仲が良かったかと言われるとちょっと...


「ふーん。まあいいや、でなんで行きたく無くなったの?いじめられてるとか?」


「全く信じてないよねゆう。。。うーんそれが分からなくて困ってるんだよね、いじめとかは無いんだけど、なんとなく学校に行くのが憂鬱というか、息がつまるというか...」


 コハルは近くにあったウォンバットのぬいぐるみのさぶろうの鼻をいじりながら話す。鼻はやめたげて。


「なんだそれ、なんも無いならいけるんじゃないのか?」


 「私もそう思ったんだけど、行きたくなくてお腹痛くなったり今日もあさ吐き気で嗚咽がひどかったんだ。」


「腹痛に吐き気があるってことは本当になんかあるってことか...」


「うん、だから現役不登校児のゆうはどうだったのかなって。」


「人を現役のプロ選手みたいにすな。」


「うーん、私の場合は小5の時に行けなくなって、その時か....あんまり覚えてないな、...あれ?なんで学校に行けなくなったんだっけ?」


 ???


 全然思い出せない。確か何か理由があったはずだ。行けなくなった当時はとても辛かったのを覚えている。ママに怒られて、無理やり行かされそうになったから逃げ出して...


「ん?あの時私が知ってる限りだといじめとかなかったよね?確か浦田くんからかってたくらいで、ゆうは普通に遊んでた。」


「ああ、いじめとかは全くなかったよ。浦田のランドセルにゴキブリ入れたくらいだった。」


 先生も普通だったな、四年の時の体育会系な先生は怖かったけど。


「そうなると本格的に分からなくなって来るな...」


 あれ?なんで私は行けなくなったんだ?友達関係も悪くなかったし...うーん


「そいえば中学の入学式にゆうきてたよね、あのときはびっくりしたなー、すごい久しぶりだ!って思って。でも次の日来なくなっちゃったけど。」


「ああ、あのときは頑張って行ったんだよ。疲れすぎて次の日から行けなくなっちゃったけど。」


「あの日は同級生のなんで学校来ないのって質問とやたらと身長と髪の毛いじってくるやつが怖かったな。」


「ご、ごめん...」


「全然気にして無いよ、今は。」


 そいえばそんなこともあったな、あれ以来学校へ行こうとする気も無くなって、学校のことを考える時間も減って行った。


「うーん。全く分からん!」


 考えれば考えるほど特に理由という理由は見つからず。もはや無かったのではないかとすら思える。現在進行形で学校にいけない状況なので何かあるのだと思うのだが・・・


「私のことはいいや、先にコハルが行きたくない理由を考えよう。コハルはいつくらいからそうなったんだ?」


「うーん。2、3ヶ月くらい前かなぁ、2年に上がってクラス変わってから、知らない人も増えて後輩もできて...そしたらだんだん疲れてきちゃって...」


「なるほど、そう言うことか。それならちゃんと名前も付いている。五月病ってやつか。」


「ごがつびょう?」


「五月病ってのは新しい環境になった時に上手く適応出来ないとなる精神病みたいなやつだ。新入生とか新社会人とかがなりやすいやつだな。」


「でも3ヶ月前は9月だよ?九月に五月病?」


「そうじゃなくてだな...そいえば九月なら九月病ってのもあるらしいが。それより重要なのはお前が今適応することに疲れてるってことだ。」


「疲れてるのかな?私。」


「いや学校行きたくないって思うんならそうなんだろ。夏休み明けの1日目とか朝どうだったんだ?」


「あぁ、始業式の日は辛かったなあ、宿題終わってないし、夏休みだからって夜更かししちゃって生活リズムバラバラになってたし、毎日ダラダラしてたから体重増えちゃってたし、宿題終わってないし。」


「宿題はやっとけよ...」


「まぁこれで九月病なうなのははっきりした。あとはそれをどうやって解決するかだな。」


「となると何か別のことをして気分転換するとかがいいのか?趣味に集中して忘れるとか。」


「趣味かぁ、趣味って言っても私何にもしないしなあ、テレビ見て映画見て本読んで、友達と出かけて、、、でもどれも趣味って言えるほどじゃないなあ。ゆうはどうなの?」


「私か?、私は、そうだな。ゲームとか、漫画とか、アニメとか、、、?」


「偏りすぎてない....?」


「いいんだよ。趣味だから、、、でも私も正直なところ暇だから見てるのであって趣味というほどでも無いような、、、」


「なるほどー、でも本当に友達と外出たりしないの?カラオケとかも行ったことない?」


「そういう友達がいるように見えるか?お?」


「ご、ごめん・・・さすがにちょっとくらいはあるかなーと思ったんだけど・・・」


「まぁいいや、となると趣味でリフレッシュってのも難しいか・・・じゃあ新しくやってみたいこととかは?」


「え?やってみたいこと?うーん急に言われてもなぁ。正直学校忙しいしこれ以上はなぁ、そう考えるとやりたいこともないかなぁ」


「ん?やりたいこと?・・・やりたいこと・・・それだ!」


 ???


「コハルって夢はあるか?」


「これまた急に・・・小学校の頃はパティシエになりたいって言ってた。中学になってもちょっと調べたりしたなぁ。」


「それは今も本気でなりたいと思ってるか?」


「そういわれると・・・全然。今は何になりたいかすらわかんないなぁ」


「そう。それなんだ。実は私も全然なりたいものとかがない。」


「それと学校に行きたくないのに何の関係があるの?」


「それはだな。コハルはなんで学校に行くんだ?」


「え。学校に行く理由?そんなの大学に行ったり就職したりするのに必要だし、大人になったら困るからじゃないの?」


「まぁ、そうだな。学校にちゃんと通ってないと会社に入るためには不利だし、困ることもあるかもしれない。」


「でも考えてみろ。それってそれって自分のやりたいことじゃなくないか?」


「んー確かにそうだけど、ちゃんと学校に行かないとそのやりたいことに影響でるかもしれないし。」


「かもしれないってだけで実際そうなるとは限らないじゃないか、だっていい大学に行く、とかそんな理由で学校に行ってたって本当に自分のやりたいと思ったことに何には何も関係ない。」


「確かに、、優秀な人ほど行く大学とかしっかり考えててちゃんとやりたいことができる環境を選んでたりするかも、、」


「そうなんだ。学校で優秀な奴ほど、学校に行く理由があって、その先にやりたいことがあるんだ。」


「半面、私たちはどうだ?特に学校に行く理由がなくて、友達も学校にいない。むしろ苦痛にすら感じてる。」


「私は友達いるけどなあ。」


「じゃあその友達と会えるって気持ちと学校のあのめんどくささどっちのが大きい?」


「あ、めんどくさいほうが大きい。」


「はいぼっち。」


「・・・正直友達関係もめんどくさいばっかりだからそれも学校行きたく無い理由になるのかなあ。」


「多分そうだな。」


「うーんじゃあ学校に行くには学校に行く理由を探せばいいって事?いろんな部活やってみるとか、関係増やすとか、彼氏作るとか。」


「いや、それも一つの手段かもしれないが私はそうは思わないな。」


「じゃあどうすればいいの?」


「学校を休む!それに限る。」


「えぇ・・・」


「だって学校行く理由がないんじゃん。だったら行かなきゃいい話よ。行っても疲れるだけだし。」


「そ、そんなぁー」


「という事でコハルさんも一緒に引きこもりライフを楽しもうじゃないか。歓迎するよ。」


「うーん、それでも私は学校に頑張って行ってみるかな。今日ゆうに相談したお陰か結構気が楽になったし。ありがとう!」


「お、おう。それは何より。」


 それから私たちは少し昔話をして、昔のように一緒にゲームをして遊んだ。

 遊んでいる間はいろんなことを忘れられた。

 学校のこと、家族のこと、抱えている悩み、そしてこれからのこと。


「じゃあそろそろ帰るね。また遊ぼうね!」


「ああ、気が向いたらね。次は普通に連絡しろよ。」


 久し振りにがっつり遊んだ私達は、お互いの連絡先を交換した。

 多分今度は今日のように脅されることもない。はず。


 部屋に戻った私は、二人で食べ終わったポテチの袋をゴミ箱の中に入れ、日が暮れて寒い風が入ってくるようになった窓を閉める。

 窓から見えた世界は少し綺麗に思えた。


 明日は学校休もう。



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