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ブルトナ侵攻と敗走

-ブルトナ王都にて-

「ローウィンさま!例の花々がアシュヴァルツ国境付近ドズル川穀倉地帯で観測されました!」


哨戒部隊の隊長から緊急の連絡ブルトナ王子ローウェンの耳に飛び込んで来た。


「・・・ついに来たか!」


「いかがいたしましょう?」


「例の対策部隊を可能な限り全て動員させてくれ!指揮は俺が執る」


「よろしいのですか?」


「構わん。行くぞ!」


「はっ!」


ブルトナの王子ローウィンは今回の為に特別に編成した部隊を引き連れ自ら出陣した。


「この目で確かめねば!アシュヴァルツを陥落させ生物を弄ぶ元凶の正体を」


– ドズル川穀倉地帯 戌の刻にて-


ここは、ブルトナのドズル川穀倉地帯


豊かな水源に挟まれた平野がどこまでも続き、


穀物が沢山実りをつけていた場所だった。


今ではそれにとって変わるように神花が咲き乱れ、月夜に照らされ怪しく輝いていた。


その神花にリリファはマナを送りこんでいた。


祈るように願いを込めて。


そんな願いに答えるかのように、花は生き生きと咲き誇り生命力をその美しさの中に示していた。


「綺麗な光景だな。」


護衛の為に引き連れていたアインがリリファに声をかけて来た。


「・・・・・・・・・」


祈りを辞めリリファはアインとは目を合わせずに空を見上げていた。


「空に何かあるのか?お前はどこから生まれたんだ?」


「・・・・・・・・・」


リリファは何も答えず目を伏せた。


「ブルトナにもこの花を広げに来たんだな。」


「お前はブルトナも同じように陥落させ自分のものにするつもりなのか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


リリファは相変わらず目を伏せたままで何も答えなかった。


あたりには、川のせせらぎの音と風のそよぐ音が心地よく響いていた。


「俺には・・・もはや何もないんだ。」


「守るべき国は陥落し住人は難民になるか、おぞましい花の化け物に惨たらしく殺された。もしくは、この花の毒にやられ心を皆失った。」


「お前はこの世界でもっとも憎むべき存在のはずだ・・・なのに俺は・・・・」


「俺はお前を護りたい。」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「そやな!アイン!頼むで〜〜!バッチリ働いてくれや!」


「・・・・お前は・・・・・」


「ワイは、はちばにや!はっはっはっ!!!!!!!」


「・・・・・・まぁいい。」


リリファは眉を潜めて呟いた。


「・・・・・・・・・くる!」


あたりを見回すとポツポツと松明の炎が揺らめいているのが見えた。


「ああ、敵さんのお出ましか!」


「リリファ!あの地点とその地点や!やっちまえ!」


はちばには、空に飛び上がると松明の灯が見える地点の位置をリリファに伝えた。


リリファは、うなづき強く念じた。


シュルシュルとツタが勢いよく伸びはちばにが示した地点へと勢いよく襲いかかった。


「グワァ!!」


「ウワァアああああ!!!!!」


やはり、そこには人がいたようでうまい具合に攻撃が当たったようだった。


「リリファ!まだおるで!!!あっちとこっちも頼む!!!」


はちばにが再度、敵の気配を察知したようで位置を伝えてきた。


また、再度リリファは意識を集中させツタを敵の方向へと伸ばし始めた。


「・・・・・・・!?」


しかし、リリファは何か違和感を感じツタを伸ばすのを中断させた。


(何かの意識が干渉してくる・・・・!!?)


「どうしたんやリリファ???!止めたらあかんやろ!???」


「・・・妨害されてる!」


リリファは頭を抱えてその場にヘタりこんだ。


「なんやて!?」


(・・・この能力は?!もしや・・・!)


「ふん、ここは俺に任せろ!サポートしろ、はちばに!」


「ああん!!!?指図すんなやボケ!!!?」


「ほれ!あっちとこっちにいるやつや!いけ!アイン!!」


「ハァァァッッ!!!」


アインは素早く敵と思わしき人影の懐に飛び込むと目にも止まらぬ速さで切りかかった!


「グァッ!!!」


「いくぞッッ!!!ハァッ!!」


はちばにに示された辺りの敵と思わしき人影をアインは瞬時に圧倒していた。


「まだまだいるで!アイン!!!数10メートル先に敵影多数や!!」


「キリがないな!!」


「・・・!!あかん!!!奴ら火を撒いとる!!!!」


「なんだと!?」


リリファ達のいる地点は、敵影の風下に位置しまた、もともと穀倉地帯だった為瞬く間に炎の勢いは増し、また囲まれていた!!!


「ヒイィェ!!!!!こりゃまずいで!!!!辺りが火の海や!!!しかも囲まれとる!!?」


「リリファを連れて退避するぞ!!!急げ、はちばに!」


アインはそう言うとへたりこむリリファを担ぎ、火の手から逃れるように走り出した。


「ピューーーィ!!」


また、口笛を勢いよく吹き合図を行うと近くに待機させていた愛馬がアインの元に走り寄って来た。


リリファを馬に載せ、また自分も飛び乗り勢いよく走り抜けた!


「はいよっ!!!!はっ!!!!」


夜の平野を風のように突き抜けていく


「アイン!!まずい!その先にも敵影多数や!動きを読まれとる!!」


「突っ切るしかあるまい!行くぞ!!!」


アインは、決死の形相で突破を試みた!


馬上から敵影めがけて目にも止まらぬ速さとキレで劔を振り下ろして行く。


「ぐっ・・!がハァ!!!!!!!」


敵影を切りつけ退けたつつ、またアイン達は風のように駆け抜けた。


「また、前方数10メートル先に敵影が多数や!あの形からして指揮系統があそこにおるんやないか!!?」


「ふん!蹴散らして指揮を乱してやるか!行くぞ!!!」


「ほんまかいな!!!?無茶はあかんよ!!!!!!やめや!!!!!!!」


アイン達は勢いよくその敵影陣に向かって突っ込んだ!


今までの敵影とは違う重装備の護衛部隊のようだった。


「こいつら!!?」


その時アインはその護衛に厚く囲まれた中に、ひと際覇気を放つ見知った顔を見たのだった。


「ローウィン!? お前か!!!??」


「その声は、アイン!!!?なぜ君がそこにいる!!?一体何があったのだ!!?」


「ふん!まさか、こんな形でお前に会ってしまうとは・・・・クッソ・・・!」


アインはそう吐き捨てると、その護衛隊の横に逸れるような進路に切り替えまた、風のように立ちふさがる敵影の中をするすると駆け抜けて行った。


アイン達は、一旦はドズル川のブルトナ領からアシュヴァルツ方面へと退避して行った。



-ブルトナ ドズル川方面 臨時編成対策部隊駐屯地-


ブルトナの王子 ローウィンブルトナは頭を抱えて昨日の出来事を反芻していた。


「なぜアインが・・・・一体何が起こっているのだ?」


先日、ドズル川穀倉地帯にて接敵した際にローウィンは敵を庇うように行動するアインの姿を確かに目視したのだ。


「敵の正体は一体何なのだ?奴らが人を狂わす花とその化け物達を使役するところまでは把握ができた。」


また、頭を抱えて悩むローウィンの元に伝令が入ってきた。


「伝令です!シオト=エクリデフトさまがご到着されました!」


「ありがとう!俺の方から向かうから丁重に待つように伝えておいてくれ。」


「失礼!もう到着している。」


「来ていたか。ありがとう待っていたよ。」


「ふむ・・・」


「さて、早速だが君に伝えておくべきこと事柄がたくさんある。どこから伝えたものか・・・」


「ゆるりとどうぞ」


シオトとローウォンは椅子に腰掛け各自状況の共有に向けて準備を始めた。


「先日のことだ。ドズル川の穀倉地帯で接敵した。」


「・・・ほう・・・どうだった?」


「敵方の草木を俺の術によって動きを封じることに成功したよ」


「あと、やはり敵方は草木を触媒に使う術に秀でているらしい。」


「こちらは、風上からの火炎を使い敵方の草木を一掃することに成功した。」


「現在、ドズル川穀倉地帯を奪還し警備隊を配置し警戒体制を敷いているところだ。」


「手際がいいな。流石と言っておこう。」


「俺の方も頼まれていた「物」を用意して来たぞ。」


「おお!待っていたぞ。ありがとう。」


シオトは、駐屯地の外に待機させておいた大型の機関を指差し得意げに語り始めた。


その機関は、大型のキャタピラと防衛用の装甲、また大口径のノズルを機関頭頂部に装着していた。


「見るがいい、この光沢と精密さ、力強いキャタピラの動き、そしてこのノズルからの噴射力を・・・」


「あ、ああ・・・」


「とても、頼りになりそうではあるな。」


(機械物はどうにも苦手だ・・・・)


「驚くのはまだ早いぞ。」


「こいつに装着してある対植用の新型薬剤の驚くべき力を見てくれ。」


そう言って、シオンは持って来た薬剤の実験データと機関の稼働データ、


また運用方法などを説明し始めた。


「・・・だいたい、まあわかったよ。ありがとう。」


ローウェンは頭を抱えながらもシオトの説明に返答した。


「実際にこれらを稼働させるには我が国にはまだノウハウを持つものたちがほとんどいないのだがどうしたものか?」


「任せてくれ。我が国からこの機関に関する技術者達を多数派遣しよう。」


「ありがとう!大いに助かる。」


「それでは、こちらの特殊機甲隊の試験運用を早速おこなってみよう!」


「試験運用を早めに終わらせてアシュヴァルツ国境付近の警備隊に早速配置させて見ることにするよ。本当にありがとう。」


「困ったときは、お互い様さ。」


二人は、手を差し出し互いに硬く握りしめていた。


「そうだ・・・あと一つ気になることが昨日あった。」


「何があったのだ?」


「アインを見た。それも敵のバケモノ達と共にだ。」


「本当か?しかし、生存していたのなら良かったな。」


「しかし、様子がおかしかった。敵と行動を共にし我らに攻撃を加えて来たのだ。」


「なんだと?それでは・・・」


「わからない。・・裏切ったのか?それとも操られているのか?」


「いずれにしても気になるところではあるな。」


-ドズル川アシュヴァルツ方面の貿易都市跡にて-


リリファ達は先日の夜襲から退避しこの地にとどまっていた。


「はぁ〜〜〜!昨日はほんま、危なかったな〜〜!まあ、助かってよかったわ!」


はちばには、ほっとするような感じでため息をついた。


「・・・・昨日はありがとうアイン。」


リリファはアインにお礼の言葉を述べた。


「・・・・・!!?おう!騎士として当然のことだ。俺が必ずお前を守ってやる。」


アインは大きく動揺しているようだった。


「おうおう!!!リリファ!!!!ワイの活躍があってやろ!!!?ほとんどワイのおかげみたいなもんやで!!!」


はちばにが間に入ってきた。


「・・・ありがとう、はちばに。」


「はっはっはっは!!!!まあ!!そうやろな!!」


「ああ、そうやリリファ?昨日は何があったんや?急に塞ぎこんで力が使えんように見えたんやけど?」


「・・・・・何かの力に妨害された。」


「昨日は集中力を乱されて力をうまく操れなくなったけど。今は大丈夫。」


「フーム・・・なんやろなぁ?」


「おそらくは、ブルトナの王子の力だ。」


「なんやて?!」


「ブルトナの王家系には代々草木に干渉し実りを与えたり成長を促すといった不思議な力を宿した血筋が受け継がれているんだ。」


「先日、ブルトナ王子のローウィンを見かけた。おそらくはアイツの仕業に違いないだろう。」


「うーんなかなか厄介やな。」


「草木の習性やブルトナの土地を熟知している相当厄介な相手だな。」


「あと、俺もブルトナ王子とは戦いたくない。同盟国の仲間を討つことは騎士として許されることではない。」


「先日はリリファを護る為に仕方ないところではあったが。」


「ああん?あのなぁ・・・・!騎士さまごっこはもうしまいにしろや!」


「・・・・ふん・・・・・・」


「リリファからもなんか言ったれ!このアマちゃんによぉ・・・!!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


リリファは目を伏せた。


「ふーん・・・やれやれ・・・・!」


はちばには、腕を組み不満気にあたりを漂っていた。



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