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アシュヴァルツの黄昏

- 騎士の国 アシュヴァルツの外れウラファジール国境付近 にて




リリファたちがこの地に降り立ってから幾日かが過ぎたころ


異変がこの周辺で起こり初めていた・・・・。


まるで、この世のものとは思えないような今まで見たこともないような美しい花がこの地に咲き乱れていた。


また、この花が出没した頃合いとまるで同期するかのようにこの地域の周辺の住民たちの様子が変わって行った。


住人たちは皆でこの花の世話を行い、またこの花の生息域を広げるための活動を行うようになっていた。


また、それだけならばさして異変とは言い難いものではあったのだが問題として国境付近の警備業務にあたっていた者達でさえその業務を放棄してこのような活動に走ってしまっていたことだった。


そして、時を同じくしてこの国境付近の視察に訪れていた騎士団長及びその直属の騎士団と国境付近で警備にあたっていた兵士たちとの間で衝突が発生することになる。




「用心の為にこの地域を訪れて見たが・・・なんだこの有様は!?」




若きこの国の頭であるアインが目にしたものは警備を放棄し、ただただ座りこみ放心したかのように虚構を見つめる兵士たちの姿だった。




「何をしている!?」


「貴様らの職務を忘れたのか!?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


しかし、問いただしたところで彼らは何も答えなかった。


また、彼らの周囲には今まで見たこともないような美しい花が咲き乱れていた。




「これらは、一体??」


「見たこともない花だ・・・このあたり一面を覆い尽くしている・・・・・・・」


「・・しかし・・・・・このぬぐいきれない違和感は何だ・・・??」


「何か強い魔力をこの花からは感じる。こんな花は今まで見たことがない。」


何かとてつもなく危険なものなのではないだろうか?直感でアインはそう感じていた。


(また、俺はその時不意にその咲き乱れる花の中に佇む人影を視認した。)


(夕焼けの中におぼろげに映る少女のような人影)


「あれは・・・・人・・・・?なのか・・・?」




夕日を見つめながら、歌を口づさむ少女の人影がそこにあった。


「綺麗な歌だな・・・しかし聞いたこともないような歌だ。異国の歌なのだろうか?」


着ている服装もまるで見たことがない異質なものだ。


「・・・おい!お前!」


「・・・・・・!!!人間・・!?」


「・・・・・立ち去れ。」


「・・・何なんだ!?お前は異国の者なのか?この花は何だ?」


(とてつもなく強い魔力を感じる。)


(お前は何か知っているのか・・・??!)


アインは、その少女の方へ物事の真相を確かめるべくむかって行った。


「・・・・くるな!!!!」


そう少女が叫ぶと、少女の周囲からツタ狀の植物が勢いよく飛び出しアインの方角へムチのようにしなりながら襲いかかった来たのだった!!


咄嗟にアインはその攻撃をかわし返しの動作でそのツタを断ち切っていた。


しかし、ツタの数は多く第二撃目が襲いかかってきていた!


「!!!!これは!!!!????」


「植物を操っているのか!!!???」


また、あたりに目を向けると武装した自国の国境警備隊や領民に囲まれていた。




神にあだなす者よ許さんぞ。


「・・・?!何を言っている・・・・!!!?」


アインが話を終える前に、この地域の領民達は武器を振りかざし襲いかかってきた!




「やめろ・・!!何があったのだ!?領主であるこの俺を忘れたのか??!」


(・・・・この目・・・操られているのか??!!)


「お前たちを傷つけたくはないのだ!話を聞いてくれ・・・!!一体何が・・・!」


しかしアインの声も虚しく、彼らには一切声は届いていないようだった。


「まずい・・・一旦ここは引こう・・・!!」


(領民を傷つけるわけにはいかない。)


アインは体制を素早く切り替えると、彼らの攻撃を流れるように躱し視察隊に撤退の指示を出した。


「すぐさま、この地を撤退せよ!」


(まずは、体制を立て直さなければ・・・!!)


(一体何が起きているというのだ・・・??!)




- 視察隊撤退後

-様子を伺うリリファ達




「大丈夫かリリファ??」


「いまの人間は・・・・・・?」


(並々ならない精神力を感じた。)


「ああ、あれは・・・おそらくやけど身なりや引き連れてるやつらの顔ぶれからして、この国のめっちゃえらいやつやな!あいつを倒せばもうこの国を制覇したも同然やで」


(・・・・・・・・・・・・・・)


「・・・・私たちの計画を邪魔するのであれば倒さなくては・・・・」




-数日後 アシュヴァルツの王宮の一室にて


視察団の退却後、国の重役達が緊急で招集され会議が開かれていた。


重苦しい空気の中で誰もが口を噤んでいた。


そんな重役達の中でも一際若く、しかし堂々とした風格の者が一人、先陣を切るように口を開いた。




「本日、皆に集まってもらったのは他でもない。国境付近で観測された例の異変についてだ。」


「我々は早急に対策を講じなければならない。」


騎士団長:アイン=ナイトウェルは、現在の状況を打開すべく言い放った。


「しかし・・・今回の異変についてまだ未確定な点が多くとてもこのままでは動くことができません。」


「兵達は、皆あの国境付近の異変を恐れ士気も低下しております。」




不安そうに頭を抱える重役達に対してアインは返答する。


「その通りだ。それ故我々は異変を分析し対策を講じなければならない。」


「魔導の研究者も交えて国境付近を入念に調査させた。」


「調査結果を皆に見せてやってくれ」


アインに呼ばれた研究者のような風貌をした者が壇上に呼ばれ異変の調査結果を皆に伝えるべく語り出した。


「はっ・・・今回の国境付近の異変につきまして、異変の元凶たる例の花々は確実に生息範囲を広めております・・・・」


「また、生息域の拡大に応じるようにその地域の者達が軒並み乱心しているようです。」


調査結果を聞き、各員に動揺の波が広がったようだった。


「乱心とは・・・?」


「何らかの呪いが流行っているのか・・・?」


「このままでは国は・・・」


アインは流れを断ち切るべく口を開いた。


「みんな!聞いてくれ。」


「俺たちは国の皆を守るための騎士だ。」


「どんな異変が生じようとも最後まで戦わなければならない。」


「どんな物事にも解決の糸口は必ずある。」


皆がその言葉にうなづき大きく声をあげた。


「騎士団長!」


「我々は負けません!必ず国民を守り抜いて見せます!」


アインも続けてうなづく。


「そうだ!我々は必ず皆をこの手で守らねばならぬのだ!」


「俺は、この元凶の元をおそらく知っている・・・。あいつがこの国を・・・!」


「・・・!?何か心あたりがあるのですか??!」


アインは答えた。


「ああ。視察に赴いた時にこの目で見たのだ。」


「あの花々の中にいた、異質な存在を。」


「花々を操り、人々を陥れる存在を俺は知っている。底知れぬ魔の存在を。」


「それでは・・・・!?」


「ああ、俺は必ずこの手でヤツを仕留める。」


「おお・・・!!!」


「騎士団長!!」


アインは続けて答えた。


「元凶は把握している!我々がなすべくことは唯一つだ。」


「あの花々を焼き払い、そしてその元凶たる魔を滅ぼす。」


皆が強くその答えに応じた。


「はい!」


「必ず我々であの花々から皆を守ります!」


アインは続けて指示をおこなった。


「よし、それでは我々は行動しなければならない。」


「まずは、女子供を城内に避難させよ。」


「動ける者達は、騎士団を中心として例の花々に対して焼き討ちを行え。」


「乱心を起こした者たちはは如何いたしましょう・・・・・?!」


側近の者が不安そうに訪ねた。


「・・・・」


アインは、一瞬ためらうようなそぶりを見せた後、しかし落ち着き払って言い放った。


「我々は・・・我々は、この異変をどんな手段を使っても乗り越えなければならない。」


「もし、話が通じるのであれば武装解除後に早やかに審問所に出頭させよ」


「そうでないなら、排除せよ。」


「・・・・・以上だ。」


「花々を掃討後に必ず俺はあの魔を仕留める。」


「だからみんな・・・力を貸してくれ。」


「はっ!!!!!!」


皆が大きくうなづき騎士団長の言葉に応じた。


(・・・みんな・・・すまない・・・・・!)




-幾日-幾月が過ぎた頃

-騎士の国アシュヴァルツ城下門付近にて


騎士団の必死の抵抗も虚しく、リリファ達が蒔いた神花は確実にこの地に根付きはじめ生息域を拡大していた。

当初、神花の排除を試みた騎士団ではあったのだが神花を防衛するためにリリファたちが生成した花を模った異形の存在たる神獣によって大半が駆逐されていた。


また、その生息域の拡大速度は止まることを知らずついにはアシュヴァルツの城下街の大半を飲み込むまでに浸透していた。



「・・・駄目です・・・!もうこの門も長くはもちません!!じきにあの花の化け物と暴徒たちに突破されます・・・!!」


「撤退を・・・何卒撤退を・・・!!!!」


「撤退するにもどこに撤退しろというのだ・・・!?」


「守るべき者達を置いてどこに行くのだと聞いている!!」


「しかし、このままでは!!!?」


現場における統率は限界を迎えようとしていた。


指揮系統の混乱が発生し皆の士気も限界を迎えようとしていた。


「撤退は許されない!騎士の誇りを失うことは絶対に許されぬ」


騎士団は辛うじて踏みとどまれてはいるものの、もはやそれは時間の問題だった。


「みんな聞いてくれ・・!!」


騎士達の長であるアインが声をあげた。


「俺は最後まで残る。何があってもだ。」


「この手であの悪魔を仕留めるまでは、ここで逃げるわけにはいかない。」


「だが・・・・皆を俺の無理に付き合わせるわけにはいかない。」


「命令だ。各臣下共々騎士団の撤退を指揮しろ。」


「市民を擁護しながら、ブルトナ方面に退避せよ。」


「閣下は・・・・?!しかし!!?」


「俺は最後まで残るつもりだ。もちろんアイツを仕留めるために。」


「閣下!!?何卒ご再考を!!!」


「閣下はこの国を率いる身であり、もし万が一にでも何かがあれば、大規模な混乱が生じます!!」


「案ずるな!必ず生きて皆の元に戻ることを約束する。」


「俺は・・・俺はまだやり遂げねばならないことがあるのだ。」


「ならば、我々も最後までお供いたします!!」


「閣下一人を置いて撤退するなど断じてできませぬ」


「・・・・みんな・・・・・・・・・・・・!!!」


「・・・バカヤロウ・・・・!!!」


アインは大きく息を吸い込み、力強く声をあげた。


「我々は、最後まで戦い抜くことをここに宣言する。」


「必ずあの悪魔を仕留め騎士の誇りを守り抜くのだ!!」




-また、幾日、幾月が流れたアシュヴァルツのよく晴れた日にて


その日はよく晴れた日だった。


暖かな風、澄み渡る空に太陽の光が満ちていた。


「リリファ良いながめやで!こっちに来てみ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


リリファと、はちばにはアシュヴァルツ城の屋根に登りあたりを見渡していた。


城下には神々しい花々が生い茂り、


また各花の形を模ったような異形の者達が徘徊していた。


城下においては以前のような人々の賑わいや騎士団の働きは見られなくなっていた。


「いや〜〜〜ええなぁ〜〜!!!こう花々が咲き乱れて人間くさい奴らで煩かった場所が浄化されていくってのは!」


「・・・・・・・・・・・・・・」


「さて・・・それじゃあ一働きも終えたところでキルエルに連絡でもしておこか。」


「・・・・・・・・・・ええ!」


「よっしゃ、まああとその前にほれ、成果物も持ってこんとな〜!」


「リリファ頼むわ!ほら、あのクッソ生意気なにいちゃんを」


「・・・・・・・・・・・・」


リリファが精神を集中させるとあたりからツタが伸び出し、またそれらは素早くしなやかに動き回ると城の中へと伸びて行った。


そして、またしばらくして城内に弱らせて閉じ込めておいたある人物を搦め捕りリリファ達の前へ縛り上げそして眼前に吊るした。


「・・・貴様・・・・!!!!!」


ギロリとその男はリリファ達を睨みつけた。


「よお!にいちゃん!元気やったか??!」


「・・・殺す・・・!!!」


その男は、ツタに絡め取られながらもリリファ達を睨みつづけていた。


「あっはははッッ!!!!!こりゃええわ!!!!!この状況でほんまおもろいわコイツっ!!!!!!」


「・・・・許さんぞ・・・!!!!!!」


「まあ、しかしこれだけ痛めつけて神花の魔力にかざしつづけても元気があるのは、ほんま関心するわ!」


「やはり、この国の騎士団長兼、王子になるだけの根性だけはあるみたいやな」


「まあ、ええわ。とりまキルエルにこの王子様の勇士ってやつを見せてやろうか!はっはっはっは!!!!!」


はちばには、そう言うとまた頭上からツタを伸ばし天界に向かって交信を始めた。


「・・・・キタキタ・・・!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・よくやった!リリファ!はちばに!!」


「・・・!キルエル様!」


「・・・予想をはるかに上回る侵攻力であった。よくぞこの短期間でここまでの成果を出したな。」


「・・・ありがとうございます・・・!」


「わいの働きのおかげやな!感謝しろやキルエル!!!!!」


はちばにが話しをしている中アインが突然、叫びを声をあげて割り込んできた。


「貴様がこの件の元凶か・・?!!!!ふざけるな・・・!!!」


「煩い不良品めが。リリファ、それを黙らせろ。」


「・・・はい。」


リリファが強く念じるとツタはアインの胴体を締め上げ始めた。


「ぐっ・・・!!ぐぁぁっ・・・!!!!!!!!」


しばらく締めつづけたのち、アインは何も喋らなくなった。


「・・・殺すなよリリファ。まだソレには利用価値が残っている。」


「・・・・はい。」


「・・・では、お前が次に行うべきことを伝える。」


「・・・・・はい。」


「今回お前が捉えたソレは、アインシュヴァルツを統治していた頭となるパーツだ。」


「お前はソレを懐柔し他のアインシュヴァルツの人間達をソレを使って統率させろ。」


「今後他の国への侵攻を行う際に非常に重要な働きをソレはするはずだ。」


「・・・・懐柔・・・・どうすれば・・・・?」


リリファは深く首を傾げた。


「・・・お前の望むように行えばよい。」


「・・・私の望むように・・・・。私の望み・・・・・。」


「・・・私からは以上だ。」


「・・後の手はずは、はちばにに伝えてある。」


「・・・はちばにの誘導に沿って世界の浄化を進めろ。」


「・・・キルエル様・・・・・・私は・・・・」


「・・・・どうした?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・私は・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・手短に済ませろ。」


「・・・・・・なんでもありません。」


「・・・そうか。」


「・・まぁ良い。次回の働きも期待している。」


「・・・・・・ありがとうございます。」


キルエルとの交信が終わり、しばらくリリファは空をぼんやりと眺めていた。


澄み渡る空はどこまでも広くつづいていた・・・・・。



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