プロローグ
ここセントリム大陸中央部には険しい山脈が連なり、人間たちが統治する各国の国々を隔てていた。
この大陸において人間たちは激しく争い大地を焼き払い犠牲を払い続けていた。
そんな中央の山脈から平地へと交わる場所に、人間たちに見捨てられた無人の名もなき教会がポツンと存在していた。
中は荒れ放題で廃墟と化してはいたが、寂れた教会のステンドグラスや窓辺から差し込む光がどこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
そんな教会の中央部のツル状の草木に覆われた祭壇に、たった今新しい知性を持った何者かが生まれようとしていた。
祭壇を覆うツタが神秘的な力によって導かれるように天に向かって伸び始め、揺りかごのような形状に絡み合い、そして内部に輝く光の球が集まり収束していった。
そんなツタの揺りかごの中で、光が収束してゆき少女のような形を形成していった。
その少女のような何かは、虚ろう意識の中でこの世界を徐々に知覚していた。
あたりに溢れる光・・・・
頭がぼんやりしていて、感覚がおぼつかない。
ここは、現実なのかはたまた夢の中なのか・・・・
ふわふわと浮かんでいるような心地よい感覚・・・
「ここは・・・・?」
あたりを見渡せど、そこかしこ光で覆われていて状況を把握すことはできなかった。
また、思考もまばらで自分が何者なのか考えることも気だるさが邪魔をしておぼつかなった。
しかし、そんな夢うつつな意識も不意にい聞こえる呼び声によって彼方へと消えていった。
「リリファ・・・・!」
「リリファ・・・?」
「リリファ・・・・!目覚めるのだ・・・!」
「リリファ・・・・・私の名前・・・」
私はその名前を呼ぶ方向へ吸い込まれていった。
「私の名前は・・・リリファ・・。」
「そうだリリファ。それがお前の名前だ。」
「貴方は・・?」
「私の名はキルエル。」
「キルエル様・・・・・。」
「そうだ。お前の創造主だ。」
「創造主・・・?」
「時間が無い。端的に話そう。」
「・・・はい。キルエル様。」
「私達にはやらねばならぬことがある。」
「そのためにお前を創造したのだ。」
「・・・・はい・・。」
「これをみなさい。」
「・・・・・これは・・・・?」
そうキルエルが言うと、ここでは無いどこかの情景があたりに浮かんだ。
立ち込める黒いけむり・・・焼けた大地・・・ひしめき争いあう存在達・・・
「・・・これは・・!?ひどい・・・・」
「そうだ。酷い有様だ。」
「私たちの世界をこのように蝕む人間と呼ばれる存在がいるのだ。」
「・・・・・人間・・・・・・??」
「私たちに形を似せて作った存在。」
「しかして、今では私たちの世界を蝕み続けるだけのそんなお粗末な欠陥品達だ。」
「・・・・・・・・・・・」
「お前には、この「世界」を正しい方向へと導いてもらう。」
「・・・!!!!!?そんな・・・!!!・・・」
「この欠陥品がひしめき合う世界を変える力をお前に付与した。」
「・・・・力を??」
「説明するよりも実際に力を試して見るのが良いだろう。」
「・・・・・私は・・・・・・」
「どうした?」
「・・・・・・・・いえ・・・なんでもありません。キルエル様・・・。」
「・・・・そうか。」
「まあしかし、戸惑うのも仕方のないことだ。」
「まだ、お前は自分に与えられた使命も自分の存在に対しても知覚を始めたばかりなのだから。」
「そして、その使命を果たすための力に関しても。」
「・・・・力とは?」
「力とは望むものだ。お前が望むように世界を変えていける。」
「望む力・・・・・??」
「そうだ。望むのだ。それがお前の力なのだから。」
「・・・私の望むもの・・・・・」
「リリファは、自分が望むものを思い巡らせた・・・・。」
すると、あたり一面に草が芽吹き花が咲き乱れた。
「・・・これが私の力・・・・・・」
「そうだ。お前の力だ。」
「そして、それがお前の望むものを叶えるだろう。」
「この子達が私の望みを叶えてくれる・・・」
「・・・キルエル様・・・私の望みは・・・・私の・・・」
「何もかもわかっている。私はお前の創造主なのだから。」
リリファの髪をキルエルはそっと撫でた。
「・・はい。キルエル様。」
「お前は向かわねばならない。「世界」に。」
「そして、お前が望むように世界を作り変えるのだ。」
「私が望む世界・・・・。」
「そうだ。そのためにこれから人間がひしめく国々に向かうがいい。」
「・・・・・・わかりました。」
「まだ、自分の力や地上の世界に慣れないだろうから案内役をつけてやろう。」
「はちばによここに来い。」
「ヘーイ。」
キルエルが呼ぶと、ボール1個ほどの大きさの丸っこいもさもさ耳の長いものが羽ばたきながら飛んでやって来た。
「これは、「はちばに」だ。国々の道案と今後の連絡の仲介などを任せてある。」
「おっす!ネーチャンよろしくな!」
「・・・・・・・・・よろしくお願いします。」
「まあ、そう固くならんといてや〜〜〜」
「もっと気楽に話ししたらええんやで〜〜」
「・・・・・・・・よろしく。」
「はっはっはっはっよろしくな!」
「・・・・・・・」
「一旦はこの教会付近でお前の力を試して見ると良いだろう。」
「私の話はここまでだ。お前の意識の中からじきに消えゆくだろう。」
「そんな・・・・・・・・・・。」
リリファは悲しそうに俯いたのだった。
「地上でのお前の働きに期待している。」
「・・・・・・・・はい。」
「話しは済んだか??それじゃ行くで〜〜!わしに捕まりな!」
リリファがはちばにの足を掴むとはちばには、ツルの揺りかごからリリファを連れ出し教会の外へと飛び立って行ったのだった。




