復讐者、世界について語る。
ラッシュの世界と思われる所で引き続き、リョウマの想力を会得するための特訓が行われていた。
体感時間にして7時間程。
休憩を挟んで、ようやくリョウマの想力はある程度の形になってきていた。
しかし、壁はあるもので…
「んぅぅぅぅぎぃぃぃぃぃぃ」
リョウマは大きな白い玉を空中に持ち上げていた。
大きさはリョウマと同じぐらい。ジュライドの物よりもさらに大きく発現する事が出来ていた。
「よしっ!いい調子だ!それを体内に押しこむ感じでやれ!」
「んぅぅぅぅぅ」
体に、特にお腹に力を籠める感じにする。
しかし、白い玉は全然小さくはならない。
「なんで…入らないんだーー!!」
そして、リョウマは白い玉…エネルギー玉を花園のはるか先へと向けて、放つ。
ドーン!
遠くで花びらが舞い散るのが見えて、しばらくすると、その花びらがリョウマの元まで届いた。
「うーん、これで3回も失敗…何か根本的な原因があるみたんだな」
そう、すでにリョウマはこの段階まで30回成功しているが、30回とも体の中へ取り組もうとして失敗しているのだ。
「ラッシュさんと自分の違いって何ですかね…」
「一つ…心当たりがあるんだが…」
「なんですか?」
「スキルを二つ持っている事…最悪【復讐】が妨げになっている」
「そんな…それはどうしようもありませんって…」
スキルは忘れ去られる事はない。
そもそも、スキルを消す技術があれば…こうは苦労しない。
「ない事はないんだけどさ…」
「え?」
「他人に似たスキルが移った事例はあるんだよこれが…それはスキル保持者の体の内臓を他人に移した場合だ。でも、可能性は3%だから、めったに成功しないのでやっている国なんてもういないだろうけどね」
「へー。」
そんな方法があるとは知らなかったとリョウマは思った。しかし、ここの医療は前の世界と比べるのは難しい。理由は魔法やスキルの存在だ。
一応、手術みたいな治療法もあるが、貧乏な村とか行われており、主流ではないしリスクもある。魔法やスキルでの治療が圧倒的に多い。
リョウマの知識では魔法で特定のパーツを瞬時に移動させるものは知らないので、必然的にそういう移動系のスキルが必要になるという事だ。
「でも、どうしましょう。とりあえず、レイジに相談している他ですか?」
リョウマは当然、対処についての心当たりはない…ぱっと思いついたのはレイジに聞くという事だ。
「そうだな…あいつならもしかしたらどうにかしてくれるかもな」
そして、花園にぽつんとそびえ建つ小屋へと赴くラッシュとリョウマ。
ドアをノックして反応を見る。
コンコン…
「レイジ、相談があるんだけど…」
しばらくして、レイジが出てくる。
相変わらず表情が分からない白い体だが、小屋に住んでいる当たりが人間らしさを醸し出している。
「なんだなんだ?挫折でもしたのか?」
「開口一番でそれかよ」
ラッシュがツッコミを入れる。
「いや…それがさ…」
リョウマは要件を言おうとしたのだが、レイジは察して言う。
「頼みなら聞かないぞ」
「え?」
そしてレイジは続けて言った。
「勘違いしているようだが、僕はまだ君を真の意味で認めていなんだ」
「ここまではラッシュの頼みがあったから連れてきたまでだ…ただ…」
レイジは気を使っているのか、言葉を重ねた。
「これは君の人間性を疑っているとかそういう話ではない。【復讐】の第一段階も認めたし、君の苦労や喜びはこの短い期間でも十分に伝わった…僕個人としては君の事を嫌いとは言えなくなっている」
「あ?ありがとう?」
「変な風に捉えるな。僕から見て君はこの異世界でよく頑張っている…それでもだ…僕個人で深く人間個人に肩入れするのができないんだ」
何かレイジの中で固まってしまった物があるみたいだ。
「じゃあ、聞かせてくれよ、どうすればお前の心は開かれるんだ?」
レイジは冷たい目でリョウマを見た。
それは踏み込まないでくれと言っているようにリョウマは感じた。
「…俺はおまえとパートナーだ!」
すると、リョウマは勢いで言った。
「は?」
レイジは唖然とする。それはもうのっぺらぼうな顔で分かるぐらいに。
「今はお前は俺と一心同体だ!一番近い存在だ!なんなら、俺は知らなかったけど…レイジはずっとそばでおれを見守っていたんだろう?」
「…」
「そんなレイジのために、俺はお前の信頼を得たいんだ!」
真っすぐな気持ちを言うリョウマ。人によっては気持ち悪いと言った拒否反応が出る程の清らかな申し出。しかし、そんな真っすぐになる事をリョウマはこの異世界にて学んだ。
最初から不信感で対応しても…いずれ痛い目を見るのは己だ。
レイジは天を仰いで、何か思案する。
そして言った。
「はぁ…ラッシュ」
「なんだ?」
「私の…過去の話を聞かせてあげてやれ」
「いいのか?」
ラッシュは再度確認する。
「あぁ、その内話さなければいけないと思っていた。それにここまで話しておいて、このままというのも変だろう」
レイジからは話さなければいけないという気はを感じられていたが、何故か積極的になれていないという矛盾がリョウマには感じられた。
(何かを躊躇っている?)
「ただ、ラッシュ…俺の口では説明ができない…俺らの経験を元にリョウマ伝えてやれ」
「あぁ…分かった、じゃあ、そこで話してくるから。待っていてくれ」
「あぁ、そして、リョウマ…今からラッシュが話す事で君が無理に付き合わなくてもいい。ただ、先程言った個人に肩入れできない事情を察してほしいんだ」
そういうと、レイジは中へと引っ込んでいた。
そして、しばらく歩いて、丘の上で座るラッシュ。
ラッシュは言う。
「リョウマ、今から話す事は、君になぜ想力を持ってほしいかの話に繋がるんだ」
「はい」
「どこから話せばいいのかな…これはまだ俺が生きていた頃の話だ…そして実はなんだけど【復讐】は今よりも頑固じゃなかったよ」
ラッシュは思い出したのか最初は楽しそうに話した。
「そんな、俺、【復讐】…今はレイジと呼ばれている存在には…共通の敵がいたんだ」
だが…何か憎いのだろうか、険しい顔に変わり、ラッシュは話し続けた。
「そいつは…この異世界を作った神で、スキルという概念そのものを作った…いわばこの世界の父だ」
さらにラッシュは言う。
「そして、レイジはその最初の7つのスキルの内の1人であり、その神の息子だ」
「え?」
分かるか?ラッシュは聞いてきた。
「つまりな、リョウマ…レイジは自分の父を手を掛けたんだ」
話はリョウマの想像を超えるモノへと発展するのであった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋




