復讐者、死す
一方、場面は戻ってミカロジュの森の首都であるニューアリアにいるリョウマ一行。
レンコ、エマ、スフィア、そしてラフロシアは共に昼食を取っていた。
昼食のお肉を一口食べてから、レンコがラフロシアに聞く。
「あれ?ケンは?」
「それとケンもいませんね」
メグも思った事を言う。
リョウマは今朝見たが、ここ最近、ケンとカツの姿が見えない。
「なんでもバロンさんに魔力を上げてもらうためにとある魔物を倒しに行っているらしいよ…4日ぐらい出ていくって昨日言ってたわ」
手元にサラダを寄せて、ドレッシングを掛けながらラフロシアはレンコに伝える。
「そうですか…」
「リョウマは?」
「あいつなら外にいたわよ。まだ修行しているから後で飯は食べるって」
スフィアがさっと言う。
「なんで、あなたにいうのよ?」
レンコは怒り気味に言う。
「あなただとしつこく誘ってくるからでしょう。執着彼女さん」
「んな?」
スフィアの挑発にレンコが切れ気味に反応する。
「二人ともやめなさい」
二人の喧嘩腰の態度にラフロシアが止める。
「うわぁ…相変わらずやっている…」
「そうですね…よく飽きもせずにやっていますね」
年下組が年上組の二人に対して呆れる。
ここ最近、皆全員が己の修行で忙しい。
というのも、イグルシア帝国で何が起こるか分からないからだ。
そのためにも己の力を底上げするに越した事はないのだろう。
「ごめんね―…エマ達があまりイグルシアの作戦知らないばかりに」
「…」
エマとスフィアが知っていたのは誘拐の目的の一部が魔王国の民だった点と、後天的スキルを発掘するための実験体のみ。
その先の作戦等からは聞けなかった。
「今思えば…寝返る可能性も視野に入れていたのね」
スフィアがラフロシアに伝える。
「いえ、いいのよ。本来の予定である潜入は変わらないみたいですし、お二人はリョウマさんのパーティにいた手練れですから純粋に仲間になったのは心強いです」
ラフロシアは笑顔で答える。
「そこの白髪はリョウマと仲悪いけどね」
レンコはスフィアをジト目で睨みつける。
「こら、レンコ」
レンコがスフィアに悪態をつく。
「私は共に行動はするけど、仲間になった覚えはないわ…共に行動する上での最低限の小行動はするけど、ピンチの時は逃げさせて貰うから」
「あいつ、リョウマが許してくれたのに!」
刀に手を掛け、レンコは椅子から飛び出す。
「まぁまぁレンコさん。落ち着いて落ち着いて…」
「はぁ、エマはこの二人の仲が心配だよ」
プリンを一口戴きながら、エマはモグモグという。
「多分…大丈夫よ」
すると、食堂の扉が大きく開かれる。
「ラフロシア!皆!大変よ!」
「どうしたのですか?お母様?」
リリアシアが血相を変えて、走りこんできた。
「今【大会議】宛てに手紙が届いたんだけど…」
リリアシアは手に持っていた封筒を開けて、中にある紙を読む。
「ついさっき、魔王国がイグルシア帝国に攻められて、乗っ取られたそうよ」
そして、その紙には赤い紋様、イグルシア帝国の正式な文だという事が伺えた。
「え」
「嘘…もう…そんな」
「ちょっともうって何よ」
エマはスフィアに問いただす。
「別におかしい事じゃないと思うわ…やたら魔王国関連に口を出すから…魔王国をいずれは攻めると思っていたの…だけど、それはもっと先で…まさかリョウマと行動を共にする事にしてわずか数日で行われるとは思わなかったのよ!」
冷静なスフィアも今回の悲報は流石に戸惑いを隠せないようだ。
「え?そんな…他の国達は」
メグはこういう国同士の戦争の場合は他国も黙っていない事を学んでいた。
「まずは超迅速に魔王が拘束された事…そしてそれにより、宣戦布告は事前におこなっていたみたいで文句のつけようがなかったみたいなのよ。連絡によると、三時間で落ちてしまったみたいなの」
リリアシアは申し訳なさそうに言う。
それつまり、ミカロジュの森もどうする事もできないという事で…
「そんな…でも魔王を始めとする魔王国の兵士なら、十分に迎撃できるはずじゃ…」
ラフロシアはリリアシアからその手紙を受け取り、確認する。そして言う。
「その時間で魔王国の最南端にある港町からレイフィールドまで万を超える軍勢が突然現れて、レイフィールドを抑えられてしまったみたい…敵の作戦勝ちだわ…他国は文句を言えない」
「そんな…」
メグは愕然とする。
彼女にとって住んでいる国が危機に陥るのは二個目だ。
そのショックは大きい。
リリアシアはさらに申し訳なさそうに言う。
「さらに…これは言伝を頼まれてしまったんだけど…ニューアリアもあなた達をかくまう事は出来ても、助けに行く事はできないわ、本当ごめんなさい」
「いえ…むしろ匿ってくれて有難うございます」
エマが丁寧に言う。
「レンコ」
スフィアがすぐにレンコに言う。
「分かっているわよ!命令するな!急いでリョウマに知らせにいくわ」
そして部屋を出て、真っすぐとリョウマの元へと駆け抜けた。
◇
一方、場所は同じステュアート家の屋敷の中庭。
リョウマはレイジと話すために瞑想状態へとなっていた。
「うんで、霊力とやらを知らないかって?」
「あぁ、バロンからある可能性があるってのは聞いているんだよ」
バロンと話した事で霊力らしき新しい力がある事は推測がついている。
その答え合わせを聞くためにレイジへと聞きに来たのだ。
「…答えない」
レイジは知らんぷりと言わんばかりにそっぽを向く。
「その態度…やっぱりあるんだな…てかそれなら俺の謎の力もお前実は気づいていたのだろう」
リョウマはレイジに対してジト目で見る。
「さぁな…、それよりも【復讐】を使わないってお前マジか」
「使わないというか…使い方を改めて考えるが正しいかな」
レイジには【復讐】を使う事をやめる事を伝えていなかったリョウマ。
「でも、おまえ、相手の力をぱくれるんだぞ?」
「それもさぁ、【復讐】ってそれだけの力なのかなと思って」
「は?」
「いや、あのジュライド戦で思ったけど【復讐】に駆られてさ…その通りの力が果たしてそのスキルの力なのかなって思うようになってさ」
スキルは個人の才能
しかし、それは個人の想いによって形が変わっていく。つまり、スキルは成長するのだ。
リョウマの【復讐】もそうだし、メグの【大喰らい】…もしかしたら他にもあるのかもしれない。
「それは俺がお前の体の中にいて…うんでもってお前が一段階成長したからで…」
「それでも【復讐】をこれまで通りに使うのはどこか納得できない、だから使わないようにするよ。…まぁでも、やばい時の切り札程度に頭の中にとどめておくよ。そうすれば【復讐】はどんどん強くなるだろうしさ…だから俺は【英雄】の力の謎もこれから発見していくよ」
「そうか…成長か…」
「うん?どうしたの?」
珍しくレイジが考え込んでいるのを見て、リョウマは心配する。
「なら、一度、死んでみるか」
「はっ?え?」
「霊力とやらについて知りたいんだろ?そして、その特訓方法も」
「あ?まぁ…うん、知りたい、めっちゃ知りたい」
戸惑いつつも、知りたい事しっかりと伝える。
「それなら…お前も一旦死んでもらわなきゃな」
こうしてリョウマはレイジからある説明を聞いた。
それは驚愕に値する内容だった。
◇
「リョウマ!」
庭に行くと、いつもの所にリョウマはいなかった。
そして側のベンチで寝そべっているを見つけた。
側の手紙には…
「え…俺はしばらく死ぬ事にした。だけど、必ず帰ってくるからって…ちょっと!!!!緊急事態なのに!」
リョウマが謎の修行に飛び立ったその日、魔王国はイグルシア帝国に乗っ取られてしまったのだった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!
東屋




