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復讐者と復讐者、語らずに語る

イグルシア帝国の奇襲から三日経ち、リョウマ達はそれぞれの休日を過ごしていた。


リョウマは庭でストレッチしたり、本を読んだりと気ままに過ごしていた。


ケンはカツと新しいスキルの特訓をしていたが、上手くいっていないみたいだ。


レンコは特訓で剣術の型を繰り返したり、エマ達と街を散策したりしていた。

手紙を魔王国に送ったりもしているようだ。

念話で話そうと思えば話せるが、話したら帰りたくなるとの事で手紙に留めているようだ。


メグとエマは…特にエマはややメグに頼りがちな所があるも…メグが気を利かせて女性陣を中心に親睦を深めていた。

この前も街に繰り出して散策していた。お金はラフロシアから借りているそうだ。


ラフロシアは久しぶりの帰郷という事で地元の古い知り合いと会ったりと忙しい。

リリアシアと一緒に足を運ぶ事も多いみたいだが毎回げっそりして帰ってくる。


「お母さま…あっちこっちにリョウマとの話して…そりぁ縁談を遠回しに断る手しては友好かもだけど、その場にいる私の身にも…」


と、小声な何か言っていたが、リョウマにには聞こえていなかった。


そんな彼らのニューアリアの拠点になっているステュアート家の屋敷。


ニューアリアの商店街から少し離れた位置にあるお屋敷。


少し離れた位置にあるのもその規模が大きいためだ。


ここへ真っ先に訪れたケンとメグだったり、その後来たリョウマ達もスフィア達との再会で驚く暇がなかったが…十分に驚くほどの規模と様式美だ。


まずは高い塀から覗ける庭園。 植物魔法が得意なラフロシアが住んでいただけに、多彩な花や木といったものがある。


そして屋敷は蔦の絡まるレンガ造りの西洋建築で出来ていた。その見た目はよくいえば文化財的な価値を持った豪邸。悪くいえば朽ち果てつつある廃墟のような様式美だ。


「ラフロシアから聞いた東洋風の屋敷も建てようかと思っているの」とリリアシアは言う。


どうやら土地は他にもあるらしい。【大会議】に参加している議員の家族みんながそうかと言えばどうやら違うらしい。何故にお金がステュアート家に集まりやすいようだ。


そんな中でスフィアはハンモックを借りて、庭園の方で寝ていた。


「zzzzzz」


寝顔だけならどこかの貴族のご令嬢を彷彿させる程に綺麗だ。

木漏れ日から照らされる白髪はそよ風で揺れている。


「うんっ…」


すると、近くに鳥が寄ってきた事で目が覚める。


冒険者時代の癖がまだ抜けないでいた。しかし、どこか安眠できた気分だ。


(久しぶりにこんなゆったりと寝たわね)


ハンモックに揺られながらスフィアは思う。


イグルシア帝国でも作戦の進行上のために、実力を認められた上で師団長を任された。

当然、豪華な私室だったりと美味しい食事と多くの特権をいただけたが、あまり寝れる良く寝れる事がなかった。


(お金もたくさんもらえたけど…今の私にとってはね…)


スキル【黄金】のために黄金を生み出せる体になったスフィア。

今も簡単に手に小鳥の形をした黄金を生み出す。


この能力のおかげでお金に困る事はないだろう。すると、不思議とこれまでにお金に対する執着がなくなった。


生きる糧となっていたがお金という基準。その基準が瓦解したのスフィアにとっても不思議な感じだった。


(…あいつを陥れたからあまり寝れなくなったような…)


リョウマを陥れたあの日。それから商人になり、軍人になりと色々と経験をさせてもらった。

今でもリョウマを陥れた事を悪いとは思わない。


しかし、良いとも思っていなかった。

生きるための最善しかなかった選択。


その選択を繰り返していたスフィアの人生。

もうこりごりとも思っていたが、それが人生だとも感じていた。

そんな心境の時に出会った男 リョウマ。


(私とは価値観の合わない人間よね、あいつは)


冒険者として共に仕事をこなしてきたが、イマイチ考え方の基準が分からなかった。


そこから生まれる不協和音。

今思えば、それがパーティの崩壊するきっかけとなった原因だ。


ランドロセル王国の徹底した身分制度による軋轢。

その事から地球のましてや平和な国で生まれ育ったリョウマの価値観に賛同しかねていた。


(だから、厳しい判断をしても私は別に罪悪感とか…嫌なかった訳ではないわね)


わからなかったんじゃない。

分かるのを大昔にやめていたからこそ、今更、目の前に出てきたリョウマ、そして彼の様な考え方に苛立ちを覚えていた。


しかし、それ以上に苛立ちを覚えていたのは…



「おまえ、こんなところで寝ていたのか」


すると、リョウマがやってきた。


「…なんでここにいるのよ」


「お前がどこにいるか聞いたらさ、ここメイドがお前がハンモック借りて庭園で寝ていると聞いたからさ、俺もハンモックで寝たくなった」


「…」


目が点になるスフィア。それでもリョウマがスフィアへと訪れる理由になっていなかったが…


(こいつ…そういえばそうだった、これだよ…こいつのこういう所が…)


パーティ時代に不器用にお茶に誘ったり、話題を持ちかけたり、と思ったら距離を置いたり…色々とよく分からない人だった。


これだ、こういう不器用な所がどこかいらっとさせていた。


異性に興味を持つ行動にも感じ取れるが、この男はそこら辺の距離感が変な所で鈍感だ。

そもそもスフィアもそしておそらくだがリョウマにも双方への恋愛感情は皆無だ。


なのに、リョウマの変な行動にいちいち意識する自分がいる。


(嫌いだ)


今もハンモックを結んでいるが、そのやり方では乗った瞬間に落ちるとスフィアは思った。

こういう時は昔からよく気が付く。


生きにくいランドロセル王国で育ったために人の行動には敏感だ。

それが相手の悪を見抜けるという長点になるからだ。

そして、それは決して相手のために使わないのも自衛の手段だ。


そんな事を思うと、すっと、無意識に自分の寝るハンモックから降りて、リョウマの分も手伝う。


「おっ?手伝ってくれるのか?」


リョウマは戸惑うように聞いてきた。

スフィアも内心、静かに戸惑っていた。しかしそれがリョウマにばれる事はなかった。


「何よ?いや?いやならやめるわよ」


「いやいや、ただ珍しいなと」


そもそも初めてではなかろうか?とリョウマもそしてスフィアは思っていた。


しばらく作業を黙々とやる。


双方に同じ事を思うが、決して言わない。

話したい程と思わない程に仲良くなく、避けたいと思う程嫌いでもない。


本当はパーティ時代にそんな事がなかったから驚いたのだが、リョウマは言わないでいた。

パーティ時代どころか、リョウマと会う前からそんな事をしないと言わないスフィア。


こうして二人は語らずにこのまま語っていくのかもしれない。


レンコとリョウマとの関係が語り合って語りつくした関係なら、スフィアのは語らずに語らせ合う関係。


この二人は、あるいは人間はこうして何も言わないで勝手に推測し、勝手に決めつける。

それによって仲が良くなる時もあれば、悪くなる時ある。


この場合はどっちなのか。それはリョウマもスフィアには分からないであった。


そのまま横でリョウマはハンモックで寝た。


気まずいが、ここで引くのもどこか負けたような気がするスフィア。


すると、リョウマの方から声がした。


「ありがとな、ハンモック」


「どうも」


すぐに返事したが、内心嬉しさが込み上げてきた。


(またこいつと一緒か)


そう思いながら、微笑みながらまた昼寝へと入る。

そして、その日の晩、スフィアは昼間も寝たにも関わらずに、またゆっくりと安眠が出来たのだった。






一方のリョウマは昼寝したせいで寝付けが悪かった。


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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