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復讐者、いじめっ子の意地

「今さっきの反応…これまでの戦いを見て感じたのだけど、やっぱりエマ…あなたはリョウマの復讐に加担していないわね」


メグはエマに対して力強く言い放つ。


エマは先程の攻撃で息が荒くなっていた。


膝に手をかけて、疲れ具合が伺えた。


が、メグからは目を放していなかった。


「…何を言っている?知っているでしょ?あの男から聞いたんじゃないの?私はあいつを殺す事で成り上がろうとしたのよ」


「えぇ、リョウマさんから聞いているわ。リョウマさんもそう疑っていなかったけど…おかいいのよ」


「可笑しいって?」


「よく考えたら可笑しいわよ。本当に成り上がるなら…どうして学園なんかに来たのよ?」


すでに冒険者になっていたエマにわざわざ学園に行くメリットは薄いとメグは感じていた。


白髪のスフィアが商人になったとは分かる。あの手の仕事は実力がないと生きていけない。


しかし、わざわざ学び舎へと行く必要はすでにコネを持っていたエマにあまり意味がない。


「何故って、学園で貴族としてやっていくために…」


苦々しく言い訳を言うエマ。そしてそれが本心ではない事は分かった。


「そもそもリョウマさんのパーティにいたのでしょ?なら、侯爵や多くの貴族と伝手があったと思う。それから離れる方ことあなたの言う成り上がりから最も遠いのではないの?」


「それは…あれよ、おっさんなんかと一緒に居てもつまらないじゃない!有望な貴族のイケメン御曹司と学園生活をね…」


「それも伝手があれば、そっちの方は手っ取り早いじゃない。ねぇ、本当の事を聞かせて」


「え?本当の事って何よ…ないわよ、そんなの…話せない」


話せない。


つまり、あるのだと言外に言っている。


ここまで不器用な子がいるのかメグは呆れた。


(…私もか)


周りを思い出せばそうだ。


リョウマも、レンコも、ラフロシアも、ケンも…どこかしらで弱味をメグに見せてくれた。


みんな不器用だ。


なんら、不思議な事などないのだ。


「いや、ある…あるのよ。それも私の推測が正しければなんだけど…あの白髪の人でしょ?」


「…!」


今度も分かりやすかった。エマの中の秘密はどうやらメグの推測通りのようだ。


詳細はまだ分からないが、全ての真相の一旦をエマは知っているのだ。


「リョウマさんは当時復讐の事で頭がいっぱいだったし、私もあなたに虐められていて、心に余裕がなかった。でも、リョウマさん達と一緒にいて分かった事があるの」


「人は残酷になれるのは相当難しいのよ…それをエマ一人でやれたなんて可笑しい。見栄に固執する弱いあなたがね、側で見て木t私の信じるエマはそんな事しない。」


「…くっ」


横を見て、メグからの視線を逸らす。


「どうして…貴方は何を根拠に…」


「根拠はあるわ…それはエマのスキルよ。そ人間の心を操作する。後天的スキルならそれを欲していたって事よね。つまり、人の心を理解したかったって事じゃないのかな?」


戦闘態勢をメグは解き、メグの視線からそらすエマをひたすら見つめて言う。


「あなた…ただ心許せる友達が欲しいんでしょ?」


「…」


エマは羞恥のあまり…顔を伏せた。


そして、両手で顔を覆う。



「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」


そして、叫んだ。


「どうして、どうして貴方なんかに分かるのよ!分かっちゃうのよ!仲間だったリョウマ達にも、家族にも、学園でも誰も分かってくれなかったのに!貴方みたいな人に気づかれんよの!!」


息遣いを荒くして、エマは苦痛に満ちた表情で言う。両手のひらは力なく顔を覆っているが、そこから涙も見える。


屈辱だった。


下と思っていた女に、自分の本心を。自分でもどうすればいいか分からない本心を隠し続けながらも不器用に残してしまった自分の心の弱い所を見透かされた。


メグはただただ冷静だった。


「…どうしてかな…ずーっと人の事見て生きてきたからだろうけど…こうしてそれを指摘したり、言えたりするのは前の私にはできなかったわ」


深呼吸をしてメグは言う。


「多分、私は周りに恵まれたのよ…エマ。あなたの心の叫びに誰も気づかれなかったように、私は周りに気遣ってくれる仲間がいた…いや、見つけた。」


思い出されるのはリョウマの元へと向かった日、そしてそう決意した日。


「気づくのを待っているのは決して悪い事ではないわ…私がそうだった。耐えた選択に後悔はない、だけど、同時に誰もあの状況を打開する手はなかったわ」


だから、求めたのだ。自分が求めた人物がいる国へと。


例え、祖国を捨ててもだ。


魔王国での生活を思い出して、メグは思い至る。


「ねぇ、エマ。そういえば言い忘れていたわ。ラウラって覚えている?」


「ラウラって、あの?」


エマとメグと同じ学園の生徒でメグと共に魔王国に来たラウラ。


ルカルドの元に弟子入りし、そしてメグに謝罪し、友達となった。


「私、今、彼女と友達なの…友達で成長するためのライバル」


「えっ…」


ラウラに近況を知り、驚くエマ。


「ラウラは私に謝ってきたわ…私はもう気にしていなかったのに…彼女はずっと気にしていたのよ。謝った時なんて、私の態度があまりに素っ気なかったみたいで戸惑っていたわ」


ふっと口元が緩む。


「だから、私は貴方に対しても怖いという気持ちはあっても、許さないという気持ちはないわ。しょうがないのよ…恨んだって、苦しんでいるのは貴方も一緒だったのよ。そして、ラウラとだって仲良くなれたもの…あなたの事だって私は友達になれる…そして、もう一回笑いたい」


「は…笑うって」


エマはメグの言った事に失笑する。


それがメグにとって難しい事だと知らずに。


「笑えないよの…あなたと会う前から…うまく…ミサカイでの育ちのせいでね」


「…そう」


そしてエマは考え込んだ。


涙を拭き、前を向く。


メグとエマの目線はまた交えた。


「えぇ…分かったわ、分かった…メグの友達になるわ」


笑顔でエマは


「じゃあ!」


「でも、私にも意地があるわ…初めて、心からやりたいと思う事を素直に行動に移すわ」


「これが私の最高の攻撃よ。純粋な私の魔力でのみでできた高エネルギー玉をイメージで…」


【大鷲の羽搏きの洪水】


大鷲の形をした水の魔法。


その威力は明らかに先ほどの攻撃を超えている。


「私と友達なるなら、受け止めなさい。さっきの手品で!…それができたら、友達になってあげるわ!どう!逃げてもいいのよ!」


逃げてもいい、戦闘の前に言った言葉だが、意味が変わっていた。


エマはメグを認めた。そして、試している。試す事を隠さずにしたのだ。


(本当、不器用ね…)


メグはそう思いながらも、心が高鳴るのを感じた。


「いいわ!ドンと来なさい!」


友の葛藤を受け止める。そんな覚悟が芽生えていた。


エマは技に魔力を溜めながら、メグに話す。


「ふん、でも、リョウマにはどうするのよ?」


リョウマはまだエマの本心を知らない。


そして、まだ恨んでいるだろうことも。


「そうね、友達になった記念で最初に一緒に謝ろうか?」


「かって?あなた…。ふんっ、ほんと気に入らない。そんな風なら最初っからしてろってのそうすれば学園で友達になれたかもしれないのに…あなたって…」


笑ってエマは言う。



「…私が望んだ事をどんどんしてくれるんだから」



すると、溜めていた魔力を十分にエマの技へと届く。


「いくわ、受け止めて見なさい!メグぅぅぅぅぅx!!!」


そして、エマの魔法がメグへと飛びかかる。


大鷲は大きく羽ばたき、メグを獲物を見る目で捕えて、鳴き声をあげるかのように高らかに攻めてくる。


そして、メグは己の本気を出す。



スキル【大喰らい】


リョウマに教えられて力を吸う事ができるスキル。


これを魔力に絞り、そして手のひらに限定する事でより多くの量を吸うという強化。


先程できた技の許容をより大きく、そして受け止めるように。


これは彼女の哀しみであり、怒りであり、願いだ。


それを受け止めようとするなら、それ相応の覚悟が必要だ。


(やります、だって私はリョウマさんの弟子、ラウラの友達、ケンやラフロシア産やレンコさんの仲間…そして、エマの新しい友達になる女だから!!!)


「うぉぉぉぉ!!!!」


メグのスキルを使って行い技の名は…


【親愛の盾】


そして、エマの魔法、メグのスキルがぶつかった瞬間に辺りは霧に包まれた。







ドンッ!!!







視界は一切見えず、そしてそのまましばらく霧は動かずに佇むのだった。


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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