復讐者、それぞれの役割
ステュアート家の屋敷から場所は【大会議】の障壁を壊し所から始まる。
中にいたリョウマと外からやってきたケン(後カツ)、メグ、ラフロシアが合流した。
リリアシアの発案の作戦では【大会議】の障壁にのみ強引なラフロシアの攻撃を与え、混乱の隙にリョウマ達を助けるはずだった。
繰り返す、混乱の隙にリョウマ達を助けるはずだった。
しかし、もうすでに混乱は【大会議】で起きていた。
ラフロシアは予想外の光景に目を見開く。
ラフロシアは体の至る所から炎を纏っているため、遠目からは表情が読みづらいが、自分の見えている状況に驚いた。
開けた壁の先にリョウマ、そして見た事のない白髪と赤髪の女性と何故かそちら側に立つカーナークがいたのだ。
カーナークが人間側に立つ違和感
リョウマがいた事とその表情に浮かべていた苦い顔…今は彼も驚いた表情をしていたが…
頭の中で戸惑うも、ラフロシアは自分のスキル【太陽】により彼女の周囲は徐々に溶岩となっている事に気が付いて、急いでスキルを抑えてる。
(くっ…調節に集中しなきゃ)
後ろに控えるメグに目配せをして、抑える事に意識を向ける。
メグもラフロシアの目配せに気がつき、側へと寄る。
すると、赤髪の女性、エマが声を上げて、白髪の女性、スフィアに言い放つ
「スフィア!このエルフって誰よ?!【大会議】の鉄壁の壁を壊したじゃない!」
スフィアは簡単にエマに説明した
「あのエルフはリョウマの仲間のラフロシア・ステュアートよ…というかそれぐらい察しなさいよ。…魔王国三大将軍の一人にして、国家象徴…まさか先天的スキルを持っているなんて、聞いていないわ…カーナークを取り込んで正解だったわね」
スフィアはラフロシアの纏っている炎が先天的スキルから出ているのだと推察した。
そう思い、彼女は転移紋へと一歩後ろに下がった。
(あの子、一瞬で私のスキルが先天だと見抜くなんて…冷静で博識ね)
「メグ、ケンにラフ!なんでここにいるんだ?!それにラフ!その恰好は何だ!」
自分の先生であるラフロシアの見た事のない姿にリョウマは驚いていた。
「リョウマ!助けに来たわ…本当はこの壁の破壊でとっととあなた達を助けて、そしてイグルシアへと向かうはずだったんだけど…私達から見ても予想外の事が起きているようね。後この姿は私のスキル、【太陽】よ」
「スキルに関してはそれだけかよ!」
リョウマは簡単に説明を済ませたラフロシアにつっこみを入れた。
スキルを完全に解き、リョウマの方へと走るラフロシアとメグ、そしてその後ろにケンも続く。
「リョウマ!平気か?!」
「リョウマさん、けがはないですか?」
ケンとメグが心配をする。
「あぁ、お前ら…俺は無事だよ…レンコはおそらく牢屋だが、もうじき出されるはずだ。俺達が捕まったのは誤解で、それエルフのやつらから解く事はできたんだけど…今度はこいつらが出たという訳だ」
仲間達の顔を見れて一安心するリョウマだが、すぐにエマとスフィアの方へと警戒を戻す。
「…あの人達は?」
ラフロシアはリョウマに聞いた。
「あいつらはイグルシア軍の師団長とその副団…うんでもって俺とレンコの元仲間だ」
「「!!」」
「元仲間ってあのランドロセル王国の頃の?」
メグとラフロシアは驚きのあまり声を上げれなかった。
そして、確認とばかりにケンは聞いた。
「あれは…」
さらに…ただ一人、敵である二人の内、一人に見覚えがあるメグだけは戦慄した。
体が震え始めたのを自覚する。
目の前の赤髪の女、エマから彼女は目を離せないでいた。
「エマ…」
ぼそりと相手の名前を言う。
そして、メグの姿を確認したエマはにんまりと笑いながら、いやらしく言う。
「あーら、いたわね…豚、貴方如きの事を覚えているのも腹立たしいけど…会いたかったわ」
「…!」
メグは後ろに逃げたい気持ちを抑えた。
だが、顔を下に向けるのはどうしても止められなかった。
それをリョウマはメグの頭に手をやって、諭す。
「メグ落ち着け…お前は何も悪くない。気を強く持て。あいつらとの決着は俺だけで付けたいけど…はっきり言うわ、あいつらスキルを持っているみたいでさ、今の俺にはあの三人は厳しい」
その事実にメグが真っ先に驚いた。
「そんな!メグにスキルなんてなかったはずです」
「と言っているが、リョウマ。どういう事だ?途轍もない努力をしたとか?しかし、貴方の話で彼女達がそうするのは考えづらいけど…それに彼女達は死んだのでしょう?」
リョウマの手でいう事実はあえて言わなかった。が、それを察したリョウマあえてそれを言い、自分の見解という。
「あぁ…手を下したよ、だけど、どうやらまたイグルシアが絡んでいるらしいだけど、も成功確率がめっちゃ低い同世界召喚によって連中はイグルシアで召喚されたらしいぜ」
笑えないとばかりにリョウマは笑う。
「同世界召喚だと!それを二人も召喚に成功するなんて…」
「本当だよ、それがしかもそれがあいつらだなんて、本当…この世界に神さまがいるなら、そいつはきっと俺の敵だよ…うんで持って、あいつらの召喚も俺のされた召喚と同じでさ、それぞれにスキルをゲットしたようだ。」
「いつまで話しているのかしら?」
すると、突然スフィアが攻撃をした。
真っすぐとエマの方へと黄金が飛んでくる。
しかし、それをリョウマが殴り飛ばした。
ドンッ!
「有難うございます」
メグはお礼を言う。エマの登場に驚いて、動きが鈍ったのだ。
「どうってことない、今攻撃したやつがスフィアでスキルは【黄金】で自在に体から黄金を出して操るそうだ…限度があるのか分からないし、その捜査範囲不明だ」
「カーナーク!あいつらを凍らせて」
そして、次にカーナークに指示を飛ばして、氷を床へと巡らせて攻めてきた。
「アツアーフラワー!」
今度はラフロシアが赤い瑞々しい花を地面へと投げつけて、氷を防ぎ、溶かした。
「…うんでもって、エマは人間の操作…。操れるみたいだが…触れると操れるようだ。どうやって解くのかは分からない」
「分からない事だらけじゃないか!」
ケンがツッコミを入れる。
「ちっ」
「色々と私達の情報を言われてしまったわね…まぁ、特に問題はないけど」
スフィアは平然としていた。
「ちょっと、相手増えちゃったじゃない!これってまずいんじゃない?」
エマは慌てて言う。
(そうだ…今の状況はどう考えてもあいつ等に不利だ…それとも援軍がまた来るのか?そもそもイグルシアの動向が掴めねぇ…あいつらの狙いはなんだ、そしてあいつ、スフィアはなんであぁも平然としているんだ?)
リョウマは彼女達の説明をできた事に安堵するも、スフィアの態度の一つの疑問を覚えた。
「まぁ…さっきまであいつらを倒すのはきついと思っていたが…お前らがくればなんとかなりそうだ」
「どういう事?」
「各個撃破でいこうと思う、カーナークはラフで、エマはケンとカツ、そしてメグはレンコと合流して逃げてほしい」
カーナークは先天的スキルを持ち、彼をよく知り、彼と同じ先天的スキルを持つラフロシアが適任だ。
カーナークがいないエマなら、ケンとカツのタッグでも十分に戦えるとリョウマ踏んだ。
しかし、これにすぐ異論を唱える者がいた。
「私が、エマを…エマを倒します」
それはメグだった。
リョウマはメグがリョウマの指示に従わない事に軽く戸惑いを覚える。
「しかし、お前…」
「リョウマさんはスフィアさんを討つつもりなのでしょう?」
「あぁ、そうだ」
「なら、余計に…私にエマを倒させてください」
しかし、メグはそういうも、彼女の体はまだ震えていた。
いじめっ子に立ち向かういじめられっ子。文字にすれば大変勇敢で応援をしたくなる場面だ。
しかし、その際のいじめられっ子の心の中では過去の思い出と格闘し、それつまりずっと恐怖と戦っているようなものだ。
メグは決して恐怖に鈍感ではない、むしろ恐怖に敏感故に、学園時代では彼女らに仕返しされるのを恐れ、あのような立場に落ち着いていたとリョウマは感じていた。
彼女はそういう子だ。
(変に優しいんだよな、この子は…だから俺の下につかせているんだけど…)
リョウマは先程のメグの態度ではエマを倒すのは酷だと思い、レンコの救出に向かわせようとした。
「いや…だけど、やはり今のメグには…」
「リョウマ、俺からも頼む。ここはメグにやらせてくれ」
するとケンが後ろから声をかけてきて、メグの味方をした。
「ケン…」
「えーっと、メグはあの赤髪知っているのだろ?ならもしかしたら戦闘のくせとか分かるかもだし、いくらカツがいるからって俺が操られる可能性もゼロではないし…何よりも珍しくメグが自分の意見を言っているんだ。止めないで上げよう」
そう言うとケンはそのままメグの後ろへと周り、そしていつになく真剣な顔立ちでメグの肩をたたいた。
「いたっ!」
突然の肩たたきに驚いたメグ。
珍しく目は見開いていた。
「何を?」
「震え止まったろ?」
「あっ」
確かに震えは止まった。彼になりの激励なのだろう。
「ほら、俺の方がカツに乗れば機動力あるしさ。頼むよリョウマ」
「…」
リョウマは思案した。確かにケンの言う通りにしても十分に作戦は機能する。
ただ、メグの師匠としてきつい目に合わせたくないのも彼なりの親心みたいな心情だ。
「いいわよ」
すると、前の方に立つスフィアから声がかかった。
「何言っているのよ!スフィア!一人逃がす事になるのよ」
「あなたは馬鹿なの?相手がわざわざ個別に戦闘してくれるのよ?この状況で私達にとって一番困るのはあいつら全員が襲ってくる事…そうなると私達は私達のスキルで足を引っ張る事になるわ…まぁ、貴方事壊してもいいのだけど、私は。どう?」
そういい、手のひらから黄金を生むスフィア。
「くっ…」
エマは悔しそうにして、スフィアを睨む。
が、これまでの言動でも察せるが、明らかにスフィアの方が実力的にもエマの上を行く。
「こわっ、あの白髪…顔は綺麗なのに、余裕で仲間を捨てる発言している」
「あいつはああいうやつだよ…仲間だったのが悲しいぐらいにな」
リョウマはスフィアの冷酷な発言に付け加えた。
「で、どうかしらリョウマ?あなた達の提案に乗ってもいいって言っているのよ?レンコの事なんて私達は興味ないからね…私が壊したいのは貴方なの、リョウマ」
私…彼女はそう言った。
「…」
リョウマはスフィアの了承にうなづくか考えた。
すると、そばにいるラフロシアが声をかける。
「リョウマ…気に食わないと思うけど、ここは相手の提案に乗りましょう。どう考えてもメリットしかないわ」
「…分かった、ケン…頼む、そのドアを抜ければレンコのいる牢屋にいけるはずだ、エルフの兵士はもう味方だから詳しい場所はそいつらに」
「了解!カツ!」
「ぶい」
どろんっ!
カツは元の大きさに戻って、ケンを首のあたりに乗っけた。
「いくぜ!メグ!お前は強いからあんな赤髪ぶっ飛ばせるさ!レンコと合流したらすぐに戻ってくるぜ!それまでお前ら生きてろよーーーー」
「ぶーーいーー!!」
そういうと、どんどんと地響きを響かせながらカツは全力で走って行った。
「いや!おい!レンコと逃げろって話なんだけど!!!」
ケンが作戦の一部勘違いして覚えて言って、そのままカツと共にいってしまった。
「へぇ、深層熱土竜ね…エマ、これはあの子の相手しなくてよかったわね」
「スフィア!あなた私の事少し話し過ぎ!!!」
(…なら、メグでも問題ないか?)
どうやら、カツよりもエマは弱いみたいだ。
「じゃあ、リョウマ?戦う?」
そういい、スフィアは特大の黄金を出して、天井へと攻撃した。
【黄金海流の輝き】
海流のような螺旋を描いて、天井に特大の黄金を飛ばす。
ドンッドンッドンッドンッドンッ
それにより、瓦礫が上からどんどん落ちてくる。
「なっ!」
「あの子!【大会議】を」
「きゃっ!」
「スフィア!くそっ…カーナーク、私を守りなさい!」
リョウマ達はそれぞれで落ちてくる瓦礫を避けたり、迎撃をした。
そして、五階建ての【大会議】に大穴をあけた。
天井はなくなり、障壁の薄い黄色の空が見えた。
「私達は上で戦いましょう?」
そういい、黄金でエスカレーターの様なものを造り、上へと向かうスフィア。
スフィアは後ろを振り向き、エマへと伝える。
「エマ、貴方には他の二人を任せるわ…これは団長命令よ」
「えっちょっと!私もリョウマをやらせてよ!」
彼女もリョウマに恨みがある。
その獲物を独り占めされるのは許されない。しかし、スフィアは同行する事を許可しなかった。
「…はぁ、先にあなたを殺してもいいのよ?」
そういい、黄金を針のようにして、エマの首へと向けた。
「くっ、分かったわよ」
しぶしぶ従うエマ。
「大丈夫よ、エマ…貴方にはあのバカエルフがいるじゃない。その二人を早く倒せたら、私と一緒にあの男を倒しましょ」
スフィアは微笑みながら、上へと向かったのだった。
「きーーーー!!あの女!リョウマの後はあいつよ!あいつ。とっととあの豚とエルフ倒さなきゃ!」
そうエマは思い、カーナークに命令した。
「カーナーク!あのエルフの女を倒すのよ!私に被害が及ばない範囲で倒しなさい!彼女を倒したら私の所に合流して、今度は一緒にあの女を倒すのよ」
そういうと、カーナークはラフロシアの方を見た。
「リョウマ、どうやらあなたは上へといく必要があるみたいわね」
「あぁ…」
(俺がスフィアを殺した時の再現だろうか?)
思い出される天井から突き落としたあの光景を…
「…俺は上へと行くよ、ラフ、そしてメグ、無事でな。」
「はい!」
「あぁ」
「それとメグ…辛かったらラフの方へと逃げてもいいからな…ラフもそこらへん気にしてやってくれ」
「えぇ、分かったわ」
「大丈夫です!」
「お前のスキルなら、十分にエマを倒せる。あいつのスキルに注意するんだぞ。…俺もお前の師匠としてスフィアをぶっ倒してくるよ」
そういうと、リョウマはスフィアのいる位置を見る。
不敵に笑う彼女にリョウマは改めて戦う覚悟を決める。
「よしっ行ってくる!」
そういい、【英雄】を発動して、天へと駆け上がる。
メグとラフロシアはリョウマを見届けて、そして、それぞれの敵を見る。
「やれる?メグちゃん?」
「えぇ、問題ないです。だって―――
私はリョウマさんの弟子ですから」
震えは止まった。そして乙女はかつて恐れていた相手へと挑む。
「そうね、私はあのバカを抑えるわ」
そして、もう一人の乙女も、かつての仲間を取り押さえる。
それぞれの戦いが今始まろうとしていた。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋