表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/115

復讐者、囚われの身になる

ミカロジュの森は国であるが、同時に国内にある大森林の名前でもある。


北欧を思わせる豊かな森や木々と、その中をひっそりと通る清流。それらが自然として整っているのも、自然を重んじる種族であるエルフがこの地に代々住んでいたからである。


自然と豊かさを司る種族である彼らは種として優れていた。外見は長い年月を過ぎようととても美しく若々しかった。又、彼らは長命であり、最大五百歳を超えるエルフもいる。

さらに、魔法の力も人間や獣人の本来持つ魔力よりも群を抜いているために、精神的にも、種族的にも明らかに他の種族より優れているエルフは、故に種族至上主義という思想になってしまうのも、ある意味では仕方ないのかもしれない。


そんなミカロジュの森の中にあるエルフ達が住む集落にして、事実上の首都であるニューアリア。そのはずれの方の生い茂る木を土台にした塔のようなお屋敷はラフロシアの家族が住んでいた。


そのお屋敷内にある食堂で、ケンとメグは朝食を食べていた。


ぱくぱくぱく


「………」


もぐもぐもぐ


「………」


むしゃむしゃむしゃ…ごっくん


「…朝食なのに、よく食べるな…確かにここの朝食美味しいけどさ…」


「瑞々しいお野菜に臭みの無い川魚…私が今まで食べていた食べ物は皆賞味…」


「ストップ…なんかそれはどこか聞き覚えのあるセリフだから、無し…てかなんで、お前が、異世界のお前がそれを言い当てられるんだよ」


そんな風に呑気に話しているが、二人は気が気でしょうがなかった。


リョウマとレンコがミカロジュの森の国会である『大会議』の連中に取り押さえられてから3日が過ぎた。


それから何の連絡もない。そもそも、ニューアリアについてから可笑しい事だらけだのだったのだ。まずは、乗ってきた馬車の中で、『大会議』ついてラフロシアから聞いた。


『大会議』


10人のエルフ達がミカロジュの森の国政を取りまとめる国会だ。

そして、10人の内の1人がラフロシアの父親であるアーセロラ氏だった。

しかし、アーセロラ氏とはお屋敷で出会えなかった。


屋敷について出迎えてくれたのはアーセロラ氏の妻で、ラフロシアの母であるリリアシアだった。


「えぇ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()…予定を確認して本当なら今日は家にいるはずだったんだけど…当分『大会議』の国会に泊まるから帰らないって二日ぐらい前に…心配したけど、念話でお話も届くし、泊まる事は数年に数回あるから特に心配していなかったわ」


さらにリリアシアの話によれば、リョウマ達の件はニューアリア内では伝えられていなかった。


実はラフロシアのジュライドに着く前に送っておいた手紙でリョウマ達の来訪の知らせを知っていたリリアシア。


そんなリリアシアから聞けた事は…『大会議』の10人のエルフ達が『大会議』が行われる建物内から出てこない事。そして、不明な理由でリョウマ達は拘束されているという事だった。


恐らく、何か大事の事件が起きて、その対処をしているのだろう。


ケンが口ずさむ。


「連日、ラフロシアさんが『大会議』に事情の説明や、二人の罪の取り下げを申し立てにいってたけど、未だに中にすら入れないみたいだからな」


「そうですね、『大会議』の周りは特殊な結界で中に入れないみたいですねし…」


メグはとどめの情報を口にする。


何をしようと八方ふさがりのこの状況。これでは自分たちに非があるのかないのかも分からない。


「あぁ、さらにだ…その『大会議』のある建物…まぁいいやもう『大会議』で…には例の転移陣があるみたいだからな…中に入れないのは俺らの目的も含めてやばい状況だ」


今日も、早朝からラフロシアは『大会議』へと赴き、中に入れさせてもらえないかと行っているが…ケンは進展がないと踏んでいた。


「心配だな…リョウマさんとレンコさん…あの二人の事だから簡単には死なないと思うけど…心配だ」


「そうですね」


すると、食堂の扉を開かれて、誰かが入ってきた。


ラフロシアだった。『大会議』からの帰りなのだろう、しかしその表情は優れていなかったので大方の事情は察したケンとメグだった。


「おかえり、ラフロシアさん。どうでしたか?」


「だめだったわ、どうしても中に入れてもらえない。未だに彼らは取り調べ中で、事の重大性のために未だにニューアリアの民には伝えていないとこの前と同じ返答だ…珍しく手が出そうだったわ」


そういいながら、食堂で待機していたメイドが出してくれたお茶を飲んで、一息をついた。


「そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。タイミングが良過ぎているわ、まるで私達がこの国に入ればこうなるように仕向けられていたみたいに…でも、ミカロジュの森がどうしてそんなことを」


「私も少し気になったのですが…どうしてリョウマさんとレンコさんだけなのでしょうか?普通ならリョウマさんと同じ魔王国の国家象徴であるラフロシアさんも捕まるはずじゃあないですか?」


「それもそうね…そもそも、霊獣の暗殺が本当なら…それに魔王国に属している私達も捕まっているはず…どうしてリョウマとレンコだけなのかしら?」


「うーん、分からないわ。リョウマ達が個人的にミカロジュの森に恨みとか?」


「それこそまさかだわ。リョウマはミカロジュの森に来た事すらないわ。この世界に来てからも彼の事は知っているわ…レンコは正直分からないけど…国を相手に恨みを買うとは思えない」


しかし、捕まっているのは二人だ。ミカロジュの森の国家象徴であるカーナークはレンコとリョウマしか取り押さえなかった。それは『大会議』の命令で捕えるのが彼ら二人だけだったとカーナークは言っていた。


そして、ラフロシア達は謹慎処分と言われていたが、実際にはある程度の行動制限があるだけの…いわば監視付きといった具合だった。

エルフであるラフロシアならニューアリアの街に出ても特にお咎めはなかったのだ。

ただし、人間であるメグとケンは外に出る事はリリアシアのすすめで遠慮していた。


やはりというか、種族主義のエルフはあまり人間がニューアリアを歩くのを良しとしない人が多いみたいだ。

リリアシアはそんなエルフとは別で、種族主義といったお堅い考えはないエルフだった。


閑話休題


つまりだ。少なくとも『大会議』リョウマとレンコに何か用事があったと考えるのが正しいとラフロシアは考えていた。


すると、リリアシアが言う。


「災難ですわね…夫が大会議に参加している以上、ラフロシアのお友達に危害を加えるはずはないんだけどね…」


「母上、それは再三言いましたでしょう、何か大会議で起きていると…しかし、どうすれば中に入れるのか」


とりあえず、中に入らないと話は進まないのだ。しかし、先程も述べたように、『大会議』の周りには特殊な結界で生半可な魔術、物理的技ではびくともしない。


手はない訳ではないがとラフロシアは思っているが、それは避けようとしていた。しかし、そんな心情を知ってか、母であるリリアシアが答えた。


「あんまり…お勧めしないけど…もうラフのお力を存分に使ってしまえばよろしいのではないですか?」


「え?」


「どういう事?」


ケンとメグはよく分からないとばかりに顔をきょとんとさせる。


「あら、あなた話していないの?」


「えぇ、特に話す必要もないと思っていましたから。しかし、それだとこのステュアート家の名に傷が…もしくは『大会議』から身分はく奪も…」


すると、リリアシアが力強い瞳で娘であるラフロシアに伝えた。


「その人はラフの大切な人なんでしょ?ねぇ?どうなの?ラフ?」


「…。はい…」


ラフロシアは恥ずかしそうにして、答えた。


本人は自覚していないが、その表情はさながら男性を想う女性の顔だった。

そして、それを見た母はさらに語尾を強めて、しかしはっきりと言った。


「なら!どんどん攻めなきゃ!彼の命が掛かっているかもしれないだから!家の事なんて気にしなくていいわ!なら、魔王国に屋敷ごと引っ越せばいい話ですしね。でしょラフ?」


「…はは…そうね…なら、遠慮しなくていいかしら」


母の力強い言葉からある決心をするラフロシア。

そして、置いてきぼりを喰らっているメグとケンは聞いた。


「あのーその手っていうのは?」


「何か名案でもあるのですか?」


「何、単純な奪還作戦だわ、でも覚悟した方がいいわ」


そして、リリアシア監修の元、ラフロシアの力を使ったある方法が提案されたのだった。

ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ