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復讐者、街の異様さに気づく


ミカロジュの森まで向かっていた道中では特に問題がなかった。


世間知らずな盗賊が時々ニルク達の商団を襲おうとしていたが、それはリョウマ達が問題なく撃退していった。


そして、リョウマ達は無事にミカロジュの森の前にある街に着いたのだった。


今日は長旅の疲れを癒すために宿を取って自由行動にしていた。


そう思い、まずは皆で昼飯をと宿近くの料理屋に入ったのだが…


注文もしていないのに、どっさりと料理が届いたのだ。


「あのー、私達、まだ何も注文していないのですが」


人間のウェイターにさらりと聞くレンコ。


目の前にある数々の美味しそうな料理。


内陸の街だが、来る時に大きな河が見え、そこの川魚なのだろう。美味しそうに脂ののった白身魚を中心に山菜やスープに肉料理が置かれていた。


「当店のサービスですよ」


「いや、流石に多いというか、こんなにはいらないし、払わないよ?…メグ、涎をたらさない」


ケンが警戒して言う傍ら、目の前のご馳走にメグはジト目(おそらく本来は輝くのだろうが、基本無表情なので睨んでいるように見える)を送っていた。


「いえいえ、お代は結構ですよ?」


「いやいや、流石にただっていうのはまずいだろ。どう見ても他所のテーブルと比べてもなんかいい食材使っているし」


ケンはそういうも、当のウェイターは困ったようにしていた。


すると、ラフロシアが口を開いた。


「…ご苦労。だが、私はミカロジュの森のエルフではないからこのような

おもてなしはしなくていい」


すると、ラフロシアはいつもとは違う口調で言う。

「私を見てこのようにしたのだろうが、むしろ私の連れに迷惑だ。…出された料理は食べれるだけ食べるが残ったら箱にでも入れて持ち帰らせてくれ…」


「はい!」


「後、きっちり料金も払う」


「いえいえ、それは本当に結構で…」


「払う!断るなら今ある全財産を置いていく」


「は、はい、ではお会計は食後に持ってきます」


「分かった。じゃあ仕事に戻っていいぞ」


「はい、当店はエルフ様に来ていただいて大変光栄であります。ごゆっくりどうぞ」


そういい、ウェイターは奥へと引っ込んでいった。


「ラフ、これって一体?」


「私も久しぶり…とうか魔王国での環境に使ったせいで忘れていたのだが、ミカロジュの森のエルフはエルフ至上主義といったわよね?」


そういい、近くのサラダを食べるラフロシア。


「モグモグ…そんなエルフの国のここにも人間や獣人は住んでいて、彼らは皆エルフを崇拝しているよ…実際エルフが住んでいるのはミカロジュの森の中だけだからこうして街…ましてやお店の中まで入るなんて彼らからしたら王族が利用した並みに嬉しい事なのよ。当然、失礼がないようにこうしておもてなしをされるわけ」


「へぇー、そうなんだ」


リョウマはラフロシアの話を聞いて納得がいった。


「でも、エルフ至上主義という割には、この街の人は裕福だね…」


レンコは周りの人、そして街の様子についても思い出しながら言う。


確かに一種族を上流階級に置いているにしては、街に差別や虐待がないとリョウマや他の皆も感じていた。


「それは私達エルフは他の種族に興味がないのよ。私みたいな外の国に仕える事をしない限りミカロジュの森の中にある集落から出てこないわ」


「へぇー、でもそれってある意味ではいい共存かもしれませんね。下手に違う階級同士が接していれば差別が生まれるでしょうし」


リョウマがランドロセル王国の事を言っているのは言外に分かる。


貴族至上主義を推していたランドロセル王国は差別やそれに伴う虐待が日常で起きており、そのため治安も不安定だった。


このミカロジュの森の様にしっかりと区分するのは悪い事ではないのかもしれない。


「うーん、まぁそうね」


何かラフロシアは言いたそうにしていたが、やめた。


「もぐもぐ、はぐはぐ、むしゃむしゃ」


「メグ…美味しいのわかるけど、どうしてそうこぼさずに食べれるの?」


レンコがメグのブラックホール具合に驚く。


「なんか、最近とてもお腹がすくので…」


そういいながらも、大きめの白身魚の切り身を一口で頬張る。


「スキルのせいか?」


メグのスキルの一つである【大喰らい】のせいでは考えるリョウマ。


「どうなんでしょう?もぐもぐ。生まれてからこのスキルを持っていますが、こんな事はありませんでしたけど…」


「成長期だからとかじゃないか?」


ケンが呆気からんという。


「メグの事は置いておいて、この後はどうすんだ?ニルクとはもう分かれたんだろ?」


ニルク達の商団はしばらくこの街中心に商売をするみたいだった。


「護衛有難うございました!何か入り用がありましたら、バラン商会ノルン支部にお越しください」といい去っていった。


「この街で集落からの迎えを待つつもりよ。ミカロジュの森の中にあるエルフの集落…ニューアリアにはどうしても集落に住んでいるエルフの案内が必要なの。ミカロジュの森の外側は霧が濃くって、普通の人では迷って出れなくなるのよ。魔物も多いしね」


「ほう、エルフなら迷わないの?」


「そうね。方法がない事はないけど…ニューアリアに住むエルフに案内してもらうのが確実。まぁそんな点が余計に交流を妨げているんだけどね…」


「なんか、想像と違うわね…エルフの国って」


ケンが残念そうに言う。


「そうね、私もてっきりほんわかとした種族かラフロシアさんみたいに社交的な種族かと思っていたわ」


「ほんと、私みたいなのは稀よ…だからこの街の人たちも驚いているのよ」


そういい、リョウマは周りを見る。


確かにここへ来る途中も視線が集まっていたが、まさかラフロシアを見ていたとは。


すると、外が騒がしい事に気づくリョウマ。


このお店は外がテラスになっており、人通りが多い街の道に沿って佇んでいる。


街行く人がまるでパレードを見るかのように端へと寄っている。


「ねぇラフ。この街ではお祭りでもあるのか?」


「?そんなのは聞かないけど…」


そういい、リョウマ達は外を見る。


すると、人垣がリョウマ達のお店の前で割けた。


そして、奥から誰かが来た。


その人物を見て、真っ先に反応したのはラフロシアだった。


「!!!!」


そして、思わず外に出た。


「知り合いかな?」

「かもね、例のお迎えじゃね?」


リョウマとケンは改めてその人物を見る。


「うわ…イケメン」

「ぱくぱく」


レンコが珍しく俗的な言葉を口にする一方で、マイペースに食事を口に運ぶメグ。


確かにその人物ははイケメンだった。

そしてその耳を肌を見てその者がエルフだという事も分かる。


何を話しているかは聞こえないが、ラフロシアと知り合いなのだろう。


驚いているように見えるが、家族とかそういう類の知り合いなのだろうか


(ん?)


リョウマはそんな二人を見ていると、エルフの男が右腕を前に掲げるのを見た。


瞬時、リョウマの感覚である感情を捕えた。


それは殺気だ。


横でラフロシアが慌てて自分の植物魔法で抑えようとしているが、間に合いそうにない。


「レンコ!メグ!ケン!俺の後ろだ!!」


「「「え?」」」


すぐに反応するのは難しかった。


向かいの席いたメグを強引に引き込みケンの席に放り投げる。


そして、改めてエルフの男の方へと向かうと…リョウマの前には氷塊が迫っていた。


店の入り口を覆う程に!!!



「くっ!!」


すぐにスキル【英雄】を発動し、迎撃したリョウマ。


拳を繰り出す。


「うぉーーーー!!」


ドカッ、パリンッ!


砕けた大きな氷塊。しかし、砕けた氷塊は店内へと広がり、荒らした。


「うわ!なんだ!」


「きゃっ!!」


「きゃぁ」


ケン達も突然の攻撃に驚いた。


すぐにリョウマはその攻撃をした男へと目線を戻す。


しかし、ラフロシアはその場にいたが、男はどこにもいなかった。


すると、後ろから聞きなれない声が聞こえた。


「こんな男が魔王国の国家象徴だと?魔王国も質が落ちたな」


「なにもんだ?あんた」


「ふん、人間なんぞに名乗る程落ちぶれていない…」


「なんだと!!!!」


リョウマは目の前のエルフの態度に激怒する。

突然訳もなく攻撃、それも人によって致命傷にもなりえた攻撃。


そして、一番憤りを感じているのは…全く周囲顧みていない事だった。


「俺ら狙って攻撃したみたいだけど…ここはお前たちエルフの街のど真ん中だぞ?てめぇでてめぇの街を傷つけるとかどういう事だ!」


すると、エルフはリョウマの言いたい事に訳の分からないといった表情で答えた。


「貴様もいっただろう、ここはエルフの国だ。エルフ以外がどうなろうと興味がない。私は貴様たちに用があるのだ」


その眼はリョウマ達以外そこらへんの石ころとしか見ていないようにリョウマは感じた。


差別するような下に見るでも、当然、慈愛に満ちた暖かい目でもない。


ただ無関心。そういうの等しい目だ。


(なんだ、こいつは!!!)


そういい、スキルでいっぱつ殴ろうと思ったリョウマ。


ここまでされたんだ。一発ぐらい良いだろうとリョウマは思った。


だがそうするよりも前に氷塊で外と繋がった店内にラフロシアの衝撃の一言が届く。


「ダメ!リョウマ‼そいつは!!!————————」



そしてリョウマが殴るよりも早く…相手のエルフが拳を繰り出した。


「————————————この国の国家象徴!カーナークよ!!貴方でも…!!!」


そうラフロシアの言葉を聞いた瞬間、彼の体は空へとぶっ飛び、文字通り彼の意識は空へと飛んだ。


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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