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復讐者、決定されていた邂逅

流狼の最後の一撃は放たれた。


それは人が千人入るかという程の大きなくぼみを作った。


しかし、それがラルフに届く事はなかった。


ラルフは手を前へとかざし、大地を動かした。


すると、大地がラルフ達を守る様にして壁を作る。そして、できた壁に触れる様にして、流狼の最後の攻撃を一瞬受け止めた。


「最後までうっとしい事をして」


そういうと、壁事、流狼の攻撃を空の彼方へと飛ばした。


遠くで爆発音が聞こえた。


月夜に照らされた雲を見ると、綺麗な円の空間がぽかんと開いている。


「流狼の才能は欲しかったんだけどな…」


それを見て、ラルフは一人愚痴るように言う。


「すみません、ラルフ様。私が例の事を言ったばかりに…」


「いいよ、それも一つの仕込みではあったし…さて、まだ君と戦うつもりはないんだけどね」


そうラルフはいうと、後ろを向く。


そこにはリョウマが立っていた。


「…」


「おや、てっきりこのまま俺と戦うと思っていたんだがな、存外に冷静なんだね」


「…ここで倒してもいいが、そうなるとジュライドの街が壊れるからな」


リョウマは察した。この男と戦うには街の側では狭い事を。


「助かるよ、君はまだ生きていてほしいからね」


すると、意外な事を口にするラルフ。


「どういう事だ?この前は俺を倒すとか言っていたじゃないか?」


エズカルバンの一味の時にラルフが言っていた一言。そこからラルフはリョウマを倒そうと考えていた。


「それの我々の間で君のスキルに興味があるだけで…別に命までには興味はないよ。もし、君がこのまま来てくれるなら、喜んで連れて行くよ。」


そういい、レーナに指示を出す。


そして、赤い靄が現れる。


「どう?」


「断る」


この事に関してリョウマは即答した。


「あんたら、忘れていないか?俺らの国の民を誘拐している事に、そんな事する奴らと一緒に仲良くできるわけないだろう」


まだ安否が確認されていない魔王国の誘拐された民達。

彼らの無事を確認できるまで、リョウマは彼らに対して歩み寄る事はない。


「それもそうだね、それはご最もだよ。しかし、彼らも貴重なサンプルでね。返すわけにはいかないのだよ。」


まるで、科学者かの様に言うラルフ。


「サンプルだと?人をモルモットみたいに言いやがって…」


厳しい目を向けるリョウマ。しかし、ラルフはそんな目も気にしないとばかりに表情を変えない。


むしろ、驚いたようにリョウマへと聞き返した。


「おや?君がそれを言うのか?…かのランドロセル王国、そしてかつての仲間に手を掛けた者が言う事とは思えないね?…」



そこから考え込むようにして顔を伏せたラルフ。


「そもそも、君がこうして意思疎通できるのも意外なんだよね…さてはリョウマ君…君はスキルには呑まれなかったみたいだね…」


呑まれなかった


このフレーズを聞いて、リョウマはピンときた。


「お前、スキルの意思とかに会った事があるのか?!」


リョウマは思わず聞き返した。


そして、それが失敗だとすぐに気が付く。


「おおぉ、君の口からそれを聞くとは思わなかったよ…しかし、スキルの意思か…」


少しにやけるラルフ。


「下策だね、それは漏らすべきではなかったよ」


「…くっ」


そうなのだ。明らかに相手はスキルの意思について何か知っている。その中でこちらから聞くのは相手にどの程度知っているか答えているようなものだ。


それはつまり、今の自分の実力をぶちまけている可能性があるのだ。


「そうだね、俺のスキルにも君みたいなのがいる…とだけ答えようかな。そして、ここからが重要なのだけど、俺はそいつと相談してこの計画を立ち上げたんだ。ちなみに君のスキルを狙うのも俺のスキルの意思が言ったからだよ」


「何?」


「まぁ、そういう事で、どうやらそっちのお仲間さんが来たみたいだから俺らはお暇するよ、アディオース」


そういうと、ラルフ達は赤い靄へと消えた。


「…」


リョウマはただ茫然としていた。


「リョウマ!」


「リョウマ!大丈夫!?」


レンコとラフロシアがジュライドの兵を連れてやってきた。


兵たちが大きなくぼみに唖然としている中で女性二人はリョウマに真っすぐ駆け寄った。


大きな傷がない事に二人は安心するが、リョウマの唖然とした表情を見て、声をかけるとに戸惑っていた。


そして、レンコが口を開いた。


「ごめん、リョウマ」


「え?」


リョウマは何故レンコが謝っているのか理解できなかった。


「私、力になれなかった。力的にもあの赤髪の女だけでも捕縛か殺すなりすれば…」


「それは俺が指示した事だから気にするな、本来ならあのまま流狼と大規模な戦闘になっていた事の方が可能性として高かったんだから、こうして何もなかったのが奇跡なんだよ」


本当に奇跡だとリョウマは思った。


「それだけ答えれれば大丈夫そうだな…であの男達は逃げたのか?」


「あぁ、ここで捕まえるのは無理と判断したよ。少し気になる事もあるしな」


「そうなの…残念だったわ、あいつらを逃がしたのは」


レンコは再びがっくりとした表情を出す。


「大丈夫さ、あいつらはまた俺らの前に敵として出てくるさ、それまでにまた強くならなきゃいけない。そのためにも二人ともよろしくな」


「あぁ」


「分かってる」


元気よく返事をする二人。


それを見て一安心をするリョウマ・


しかし、リョウマの頭の中には彼が最後に言った一言が頭に離れなかった。


(まぁ、今はいい…)


体がだるいのをはっきりと感じる。近くに二人がいるという事もあり、リョウマは静かに寝ようとする。


(次は全力で抑え込む)


そう心に誓い、ジュライドでの戦いは終わったのだった。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



カポーン


鹿威しの綺麗な音が鳴り響く豪邸。


日本の御屋敷を連想される造りのそこは、イグルシア帝国の首都であるエドウィンにある帝が住まう城、通称帝城


魔王城が洋風なら、帝城は和風。


膨大な敷地面積にお屋敷を建てたこの城は贅の限りを尽くしていた。


そして数ある庭の一つで、枯山水のある風情な庭に突如赤い靄が出てきた。


「ふぅー」


二人の男女が出てくる。


「おかえりなさいませ」


そこにメイド服をきたローナが現れた。


「只今、ローナ。首尾はどうなっている?」


「はい、準備はもう整っております。皆様はもうすでに帝の間におります。」


「分かった、すぐに向かうよ」


「しかし、お休みを取らずにすぐに行ってもかまわないのですか?」


ここにいるレーナとローナは何をするかはすでに知ってる。そのために出た言葉だった。


「あぁ、魔力はここに移し替えたから、十分呼べるよ」


しかし、ラルフは平気そうにいう。


すると、どこからか綺麗に光る石が出てきた。


それは転移石だった。異世界から人を召喚する時に使われる。


「流狼の全ては移せなかったけど、今回の分に必要な魔力は充電で来たよ」


「全く、ただでは転ばない男よねラルフって」


レーナが呆れながら言う。


今回の作戦はどう転んでも良かったのだ。


流狼がラルフに襲い掛かる状況になっても、次の一手のために充電したいと思っていた転移石を手に持っていったのだ。


「姉さん…」


「何?心配しても、あなたの今の立場は変えないわよ。前回の失敗であなたは当分実践は禁止のみのメイドなの」


「…」


自分の姉ながら、愛する男の隣にいるのが憎らしいと思うローナ。


「まぁまぁ、二人ともここはよろこんでよ…」


そういい、二人を落ち着かせるラルフ。


「…せっかく新しい仲間が来るんだから」


そういい、帝城の中心にある帝の間へ向かうラルフ。


その顔は楽しみでしょうがないとい表情をしていた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



場所は帝城の中心にある帝の間


そこには100人程の人数が集まっていた。


まずは先頭にある玉座の位置に座る、イグルシア帝国を統べる帝の一族。


現帝王を始め、その正妻は壇上の椅子ですでに待機していた。


側には長男、次男、長女の順も椅子に座り、これから起こる事をまじまじ見ていた。


そして、向かい合うようにして、二つのブロックに分けて起立をしていた。


片方はイグルシア帝国の大臣や大役人達…つまりは文官のグループが座り、起立をして待機していた。


そして、片方のブロックにはイグルシア帝国での軍の実力者達が起立をし、待機していた。


片方が文官なら、もう片方は軍…そして、つまりは戦いに身を置いているグループだ。


その中で先頭にいる人達に注目したい。


まず先頭列で、一際うるさく話している二人からだ。


見るからに教養のない雰囲気を出しているが、先頭に立っているため、その地位は高いのだと分かる。


「クラウマン~、任務に失敗したんだって?けひひひ、残念だったな」


「オッポ…たくっ、なんでこんなすぐに集まりがあるんだよ。俺は休みたいぜ」


彼らはイグルシア帝国が率いる八師団の団長達である。


フレディ・オッポサムは第四団長を、そしてジュライドの戦いで参列していたクラウマン・アラポールは第三団長を任されている。


彼らの身分であれば、任務から帰った日ぐらいはこういう式は免除できるぐらいに高い地位に位置している。


「あー、だめだだめだ。今回のは帝は勿論、ラガーンのじじいとあのくそラルフが全団長に命令でこの式に完全防備で参加せよ…だとよ」


そう、今彼らは完全戦闘態勢でここに来ている。


だからこそ、クラウマンもジュライドにいた時と変わらない恰好でここにいた(尚、仮面は取っている)


すると、オッポサムの横にいた男が二人に声をかける。


「うるさいぞ、貴様ら、帝の前だ。これ以上うるさくするなら、私の刀の錆にしてやろうぞ」


そういうのはサンジュウロウ・ニトベ。彼は第五団長だ。


腰に携えている刀に手を掛けていた。


「へっ、悪いがお前の刀より、俺の方が速く切れるわ」


そういい、オッポサムは自身のポケットに手をかける。


「やめておけ、おめぇら、帝の御前だ、下手な争いは己の首をしめるぞ」


そういい、仲介に入るのはカモッラ・ギャングスタン 第七団長だ。


「ラガーンのおやっさんも止めてくだせいな。血気ある若者を止めるのは年配の役目でっせ」


そういい、クラウマンの奥の端にいる人に声を掛けるカモッラ。


そこには大男が佇んでいた。帝の間というだけあって、そこは緊張感に包まれた空間となっていた。しかし、男の周り、そこだけはまるで静かな空間であるかのように落ち着いていた。


ただ一言だけ、彼はクラウマン達に言った。


「やめろ」


男はそういう、すると、オッポサム、クラウマン、そしてニトベに悪寒飛んだ。


そして、反対側の文官にもその気が当てられた。


「へい…」


「分かりました。」


「なぜ、我まで…いえ、了解です」


そして、それぞれが返事をし、静かになった。


それを見ていた大臣達、文官は思った。


この男だけは別格なのだと。


偉丈夫な大男、ラガーン・ドラゴヴルム


イグルシア帝国戦闘長官にして第一団長。そして、イグルシア帝国の国家象徴だ。


すると、帝の間の扉が開いた。


「皆さん申し訳ありません、任務がつい先程終わり、今帰ってきたところです」


そういい、入ってきたのはラルフだ。

後ろにはローナとレーナがいる。


「けけけっ、ローナのやつはまだ罰受けているのか」


オッポサムはローナの恰好を見て、ばかにする。


ローナとレーナはカモッラの隣へと向かう。


ラルフはそのまま歩き、ラガーンの隣へと行く。


「…帝を待たせるな、ラルフ」


「すみません、ラガーンさん。しかし、今回の式で必要な物が手に入ったので」


そういい、転移石を見せるラルフ。


「…戦術長官も忙しいな」


「いえいえ、ラガーンさん程では」


彼のフルネームはラルフ・イグルシア・アマクサノジョウ 


イグルシア帝国第二団長。イグルシア帝国戦術長官、そしてイグルシア帝国の国家象徴


ラガーンと同等の位置にいる男だ。


すると、帝一族の席の長女が嬉しそうに手を振る。


「…姫様が手をふっているぞ」


「えぇ、そうですね」


そういいながら、手を振り返し、玉座の方へと向かう。


「王よ、ただいま持ってまいりました」


「うむ」


そして、ラルフはラガーンの隣へと戻り、玉座の方に向けて起立をする。


「では、始めよう…」


そういい、イグルシア帝王が玉座の台の中央へと行き、演説した。


「皆を呼んだのは他でもない。我々は軍事面を強化し、己が領土を拡大していった。そして、自国民には決して悪政を施さずに、平等に扱った。」


「しかし、彼の魔王国、亡くなったランドロセル王国では異世界召喚が行われたのは皆の知るところだろう。そして、非公式ではありますが、魔王国は2回行ったという話もある」


そして一息を付いて言い切る。


「こうしている間にもしているかもしれん」


「なぜ彼らが異世界から人を呼ぶのか、それはこの大陸の覇者である我々への抑止力に他ならない。そのために今まで以上に我々は我が領土の富国のため、強くならなければいけない。そこで私はコレを用意させた」


先程、ラルフからもらった転移石を見せた。


「転移石、そして我が一族に伝わる召喚陣だ。これで異世界から強き者を呼ぼうと思う!」


歓声が沸き起こる。


彼らの耳にもリョウマの活躍、そして歴戦の異世界転移者の話は聞いている。その者達が自国の味方に付くのなら心強いという事なのだろう。


「ただ何がでるか分からない、そのために団長達に完全武装で参加する様に言っておいたのだ」


そういい、召喚の準備に取り掛かり、準備ができた。

召喚は大量の魔力を使う。そのために先頭にいる団長達が魔力を出す手はずとなっていた。


団長達が陣の端へと手を置き、魔力を出す準備をする。


「では、やれ」


そういい、団長達は魔力を流す。すると、陣の中央に置いた転移石が光り、そして辺りを眩しくする。


「くっ」「うぉ」「うわ」


何人かが驚きの声を出し、一面が白に包まれる。

そして、次第に景色が戻る。


そして、その結果はすぐに出た。


「え?ここは?」


そこには一人の女性が立っていたのだ。


「どうやら成功のようだな…良かった」


ラルフは一息をつき、召喚が無事に成功した事に安心をした。


「よしっ、では次の作戦を執り行うぞ、ラルフ!どうやら魔王国は我々に対して潜入捜査をするつもりみたいです」


そう言われ、ラルフは帝王の方へと向き、応える


「はい、そうです」


「では次はどういう手はずで貴様の頭にはなっている」


「次は…新団長を任命したいですね…後…」


そう言い、次に手はずを皆に言った。


それはその場にいた皆を驚嘆させる内容だった。


~いつもの章終わりの東屋の後書き~


ここで第三章 流浪の終点 は終わりです。

ぼちぼち伏線が回収出来てほっとしています。

次は間章を挟んで第四章を出します。

まだまだ物語は続きますよー。


又、第四章とこれからの更新についてですが、頭の中で出来てはいるものの、文章化するのに時間がかかっています(すごい下手ではありますが…)。


できるだけ早くに出したいですが、これからも不定期更新でしていきます。


見切り発車からの不定期更新でここまで続いた作品ですが、それでもここまでたくさんの方に読んで戴いています。

まだ東屋の力不足でランキング等には出れていませんが、作者はこの数字にとても感動しています。(有難うございます)


どうか引き続き「復讐の反省」の方を御贔屓にして下さい。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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